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キロンの傷はどのように疼き作用してくるか

ご自身のキロンの傷について、シェアしてくださっている貴重な記事がありますのでご紹介します。キロンの傷は生々しく、痛々しいものです。そして、それを認めた時(傷があるままでいい、そのままでいいと手放した時)、個人のトラウマの範疇やほの暗い陰鬱さを超えて、普遍的な傷へと変わります。同じ傷を持つ人の灯台・希望になれるのです。

こちらの記事を書かれた啓子さんは「1ハウス(アセンダント付近)に冥王星と天王星がある=上昇星」のですね。アセンダントに近ければ近いほど、その天体はチャート全体に影響を与えるほどのインパクトを持ちます。そして、キロンは天王星と緩いオポジションとのことですね。(これは世代的なものでみんなが持っていますが、影響力は大です)ということは、啓子さんのキロン(魂に刻印された深い傷・意識変容のポイントとなる傷)は天王星+冥王星からの強い力を受けて発露していくーーということがわかります。



なぜ、冥王星からの影響を受けると言えるのか?ですが、これはそれぞれの解釈に委ねられる部分が大きいとは思いますので、ひとつの解釈としてお受け取りください。コンジャンクションはアスペクトではないーーという説があります。アスペクトとは天体同士の響きあい・ハーモニーであり、各々の天体のエッセンスは保持されたままで、お互いに響きあいを生み出していくのですが、コンジャンクションの場合、響きあうというよりも結合しようとします。啓子さんのケースですと、冥王星と天王星が溶け合ってひとつになり、ひと塊のエネルギーとなって作用するということです。(ステリウムの天体たちはそうなります)



というのも、アスペクトのオーブというのは曖昧さを含む原理のひとつで、オーブをどのくらい取るかは占星術師の経験値や勘が活かされる部分だと思います。私の感覚ですと、同じサインかつ同じハウス内にいる天体は多かれ少なかれこの傾向があります。(またはトランジットにもよりますが)オーブが10度以上、あるいはそれ以上離れていても、ひと塊のエネルギーとしての性質を帯びてしまうのです。天体同士の境界がなくなるような感じです。




土星以降の星は、私たちが自分で意識することが難しい天体になります。太陽や月、金星や火星などは、十分に自分で捉えることができますが、遠い天体になればなるほど、潜在意識の奥深くにあるため意識化が難しくなります。それなのに、土星以降の天体がアングルにある場合、その天体はとりわけ強く発露しようとします。生命力が有り余ってウズウズとした子どものように、この物質世界により強く生まれ出よう、思いきり自分を表現しようとするのです。



その時、天体の力とはすべて自分の中にあるものなのに、自分のものとして認められないというジレンマが生じます。自分で意識化できないゆえ、その天体が発露することを抑えようとすればするほど(傷と体験を否定すればするほど)、他者や出来事を通じて、自らの冥王星や天王星の荒々しさ・強烈さ・鮮烈さを体験することになるのです。キロンやリリスなども同じですね。



アセンダントの前後5度以内(ないしは7度でもOK)にある天体=上昇星の特徴のひとつが、生きるとはこういうもの、この世に生まれ出るとはこういうものーーというその方の人生のひな形・生のモデリングを表しているということです。冥王星と天王星が上昇星である場合、出産時にお母様(またはご本人様も)が死ぬかもしれないというような体験をしている、何らかの極限的体験を経ている、あるいは、出産時・出産の前後にそのような精神状態に陥っていたと考えられます。



お腹の中の赤ちゃんはお母さんの体験していることや感情を同じように味わっています。そのため、生きるとは激しいものだ、荒々しいエネルギーに触れてこそ、私は生きていると感じるのだーーそのような無意識のモデルを持つようになります。そうなると、それらの天体に触発されるキロンの疼き方は、稲妻に打たれるくらいの劇的に激しいものになってきます。7ハウスにキロンがあるため、主にパートナーを通じてそれが発露され、体験するということになるのです。ご本人様の考察のとおり、これはまさに7ハウス・魚座のキロンだと思います。



天王星だけではなく、冥王星の影響も受けたキロンであるからこそ、ご自身で明確に自覚ができる(できやすい)のだと思います。通常はなかなか自覚と告白が難しいものであり、キロンの傷についてのシェアは少ないですので、本当に貴重なものだと思います。啓子さん、ありがとうございます。



すべての天体は私たち自身の内側にある「意識」です。先に「そのような物語・痛み・傷」を持っているからこそ、その体験を引き寄せるのです。でも、これは残酷な真実ですので、どうか皆様、すべて自分が悪いなんて考えないでくださいね。すべての体験に良い悪いはないです。私たちの潜在意識(魂)は色々な経験をしたいんです。その経験を通じて自分自身を知りたいのです。だから、自分が悪いなんて決して思わず(そんな必要はないです)、天体はすべて内側の意識であり、現実世界においてはその投影(プロジェクション)として作用してくるという事実だけを認識してくださいね。




さて、前置きが長くなりましたが、本題に入ります。キロンの傷はそれによって疎外感や自分が異端児であるという感覚を生じさせます。または、永遠に抱き続ける静かな深い孤独です。みんなは普通にそれを楽しんでいるのに、私はその普通ができないーーという悲しみや屈辱です。自分が集団の中の厄介者・はみ出し者のようにも感じるでしょう。



啓子さんはこのように表現されています。
「実際、パートナーという響きには憧れますし仲睦まじいカップルを見たら羨ましいなぁとは思うのですが、どこか自分には無理なんじゃないかと映ります。自分は、果たして、こんな人たちみたいにお互いを労りあって生きるということができたか?と思うとやはり胸の疼きを感じます。」



そうなんです。そのように感じるのです・・・かなり前のことですが、俳優・Aさんが45歳(天王星半回帰=キロンが強く浮上してくる年齢域)で、自ら命を絶たれました。Aさんが心を病んでいった大元の原因は腸の病気にあったそうです。腸に問題を抱えているため、頻繁にトイレに行かなくてはならない。だから、受けたい仕事も条件が整わないと断らざるを得ない。(ロケではすぐにトイレに行けるとは限りません)



自分が主役なら、頻繁に休憩も取れるのかもしれません。少なくとも言い出しやすいでしょう。しかし、脇役でいて、撮影を止めてしまうのは憚られますし、みんなが普通にできることができない自分に深い疎外感と苦しみを募らせていったのではないかと思われます。役者の仕事が大好きなのに、自分ではどうにもならないことで諦めざるを得ない。それも排泄というデリケートな問題であって人に言いたくもない・・・恥、屈辱、孤独、絶望。



これはまさにキロン的傷であると思います。Aさんの出生時刻は分かりませんが、水瓶座キロンが牡牛座太陽とスクエア、蠍座月ともスクエアです。キロンが太陽にアスペクトしている場合、自分自身であり続けることに困難さと痛みが生じてきます。月にアスペクトしている場合、痛々しいまでに他者の感情に敏感で、情動の脆弱さを持ちます。このような状況下で、Aさんの幼気な暗い哀しみは留まることなくその痛みを増していったのではないかと感じます。このように肉体の傷として現れる場合、Aさんのキロンは1ハウスか6ハウスに在った可能性が高いだろうと思います。



また、別の例ですが、祖父と実父が殺人犯であったため、社会から疎外されて生きてきた男性の傷も、実にキロン的です。犯罪者家族というのは、その人権が冷酷なまでに無視されるという現実が存在しているのですね。彼は10代の時から公園で暮らしたり、地域社会から抹殺されるような残酷な扱いを受けてきたそうです。成人してからも「殺人犯の息子」という密告が入り、何度も職場を変えることなります。



その疎外感と異端児感は想像を絶するものがあります。人生の早い段階で家族を失い天涯孤独の彼は、みんなが持っている家庭、帰る家、拠り所、帰属する集団の一切を持たずに存在することの壮絶さと孤独感と共に生きてきました。付き纏う漆黒の闇・・・多くの場合、キロンの傷はこのような性質を帯びて発露してくると思います。ただ、その激しさには強弱があるだけです。



でも、それがあってもいいのです。この傷も私の勲章であり私の親友ーーそう思えた時、私たちは自我の成長を果たしています。天王星の領域に手が届いた瞬間です。ほの暗い自分のトラウマが普遍性を得た瞬間です。もがれた片方の翼を取り戻した瞬間です。その時、傷は傷であって、傷ではありません。愛おしい自分の一部です。そして、それは誰かの勇気と癒しと希望として世界を照らしていくのです。


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