キリン缶酎ハイ、生産能力3割増、ビール工場にライン新設、需要シフトに対応。


【缶チューハイの増産。 生産効率化 】
 キリンビールは缶酎ハイを増産する。約75億円を投じて宮城県の工場に生産ラインを2022年2月に新設し、全社の生産能力を3割高める。ビール系以外のアルコール商品の需要の伸びに対応する。ピークより市場が3割縮小するビール系飲料の人材や一部施設を活用し、生産の効率を高める。
 キリンはビールを造る仙台工場(仙台市)の建屋内に酎ハイの主要ブランド「氷結」や「キリン・ザ・ストロング」などの生産ラインを新設する。能力は年間約14万キロリットルを見込む。商品を包装する建屋を拡張し、缶ビールの梱包作業の近くで酎ハイも包装できるようにする。工程が違うビールの生産ラインの転用はできないが、箱詰めや倉庫への移送といった作業の内容はほぼ同じでビール工場の作業員を共有できる。
【市場規模が大きくなってきている】
 酎ハイやハイボールなどは、嗜好の多様化でビールや焼酎といった従来の酒類から消費者のシフトが進む。同社によるとこうした非ビール系アルコール飲料の市場規模(19年)は2億2900万ケース(1ケースは250ミリリットル24本換算)と、5年間で7割増えた。
 20年10月以降、26年まで酒税改正が3段階である。ほぼ同じ価格帯の第三のビールが値上がりし、酒税変更の影響を受けない酎ハイなどの商品の割安感が高まる。キリンはこれらの市場が、26年には19年比で4割広がるとみている。
 その半面、国内のビール系飲料市場は縮小が鮮明だ。ピークだった1994年の5億7300万ケース(1ケースは633ミリリットル20本換算)に比べ、19年は3割減った。サントリービールを除く大手3社は、過剰な生産能力の解消へ工場閉鎖に踏み切った。新型コロナウイルスの影響で外食向け需要も振るわない。
 ビール以外の商品の増産は他社にも広がる。アサヒビールは福島工場(福島県本宮市)で缶酎ハイの生産ラインを新設したほか、博多工場(福岡市)で31億円を投じて21年をめどにノンアルコールのビール飲料の生産設備を導入する。サッポロビールは仙台工場(宮城県名取市)で、グループのポッカサッポロが手がけるカップ入りスープの生産を始めた。

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