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闇に浮く、海月に想ふ。

途方もない不安に衝突したとき、電気を消して無音の中アロマを炊いて浴槽に溜めたお湯にただひたすら浸かるのが好きだ。

心地よい水圧とちゃぷっと響く水の音、じわじわと身体の芯から温めてくれるお風呂はまるで心臓を洗いたてのタオルで包んでくれているような感覚に陥らせてくれる。

心なしか軽くなった身体を上下左右に揺らし、このまま無重力の世界、真っ暗な宇宙の彼方へ飛んでいけたらいいのに、と。

いつかの水族館で見た海月を想い出す。

派手なイルカのショーも愛らしいペンギンも勇ましいサメも優しい表情のエイにも見向きもせず、引き込まれるように魅入った海月。

ただ水の上をプカプカと浮かび、流れに逆らおうともせず、流されるまま器用に身体をくねり優雅に舞う。

なんの不満もなさそうな、なんにも考えてなさそうな、そんな海月をとても羨ましく思えた。

なんにも考えず、気の向くままに水中を踊る海月に。透き通っていて、隠すものなどなにもなくて、不安なんて全くなくて。

海月には脳も心臓もないらしい。脊髄神経で動き、その動きのひとつによって栄養を循環させてるようだ。なんて効率的で無駄のない造りをしてるのだろう。

「考えて動け」なんて通用しない。
「体が勝手に動く」ことしかない。

本能のまま、赴くままに、生きている。

生まれ変わったら海月になりたい。

それは我儘かもしれないし思考することに対する逃げかもしれない。単に私が考えすぎる体質だからそう思ってしまうだけなのかもしれない。

けれども考えてしまう人間だからこそ考える機能の備わっていない海月に憧れを抱いたっていいよね。

1日くらい、代わってくれてもいいのに。

#海月 #エッセイ

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