見出し画像

いかなごのくぎ煮

 夏のかき氷、秋の秋刀魚、冬のみかんのように、春がくるといかなごのくぎ煮が無性に食べたくなるのは、やはり年に1回しか食べられない旬のものだからだろうか。わたしはいかなごの釘煮がとても好きだ。ちょっと甘辛い味が適度に白いご飯を進ませる、まさにこの時期限定の「白ご飯のお供」だと思う。

思い返せば、なんだかんだで毎年春は白ご飯のそばにいかなごのくぎ煮があった。兵庫県出身の祖母が毎年いかなごを炊いていて、いつも家に送ってくれていたのだ。
「美味しいね」
家族でそう言いながら、毎年食べた。
祖母の炊いたいかなごのくぎ煮は大好評で、いつもあっという間になくなった。

そのうち祖母が歳をとり、いかなごのくぎ煮を作らなくなってからは、母がスーパーで買うようになった。スーパーのいかなごの釘煮も確かに美味しいのだけど…、なんか違うと思った。ちょっと辛さが勝って甘さが負けてるな…と子どもながらに思った。母は他のスーパーでも買ってきたけど、どこも同じような味だった。食卓に毎年並ぶうちに舌が慣れたのか、スーパーのものでももう特に何も感じなくなったが、今でもやっぱり祖母が作ったいかなごが一番だったなあと思う。絶妙なあの甘辛さは家庭でしか出せない味なのかもしれない。今思うと特別だったあの味を懐かしく思う。本当に美味しかったんだよなあ。

今年も食卓に並ぶ日はもう近いだろう。さあ今年もお弁当に入れるぞ。白いご飯食べるぞ。今年もいかなごのくぎ煮に会える日が待ち遠しい。

※ヘッダーの画像は「みんなのフォトギャラリー」からお借りしました。ありがとうございます。

#いかなご #春 #3月 #日記 #日常

ありがとうございます。文章書きつづけます。