年度始め

去年と今年で、緊急事態宣言に対する感覚にはだいぶ違いがある。去年のいま時期のnoteを読み返したら、この世の終わりのような気分が充満していたが、今はずっと落ち着いている。これが精神的な免疫ということなのか、慣れなのか。今回は全国の宣言ではないということもあるが、もうすでに昨年の議論である程度対応を決めておいているということも大きい。

宣言下のところでは遠隔の大学もあるが、勤め先では変わらず対面授業を続ける。とはいえ元通りというわけではない。対面をするということは、クラスターの心配をし続けるということでもある。平時の気楽さはもうない。体温を計測する。消毒をする。換気をする。座席の間隔をあける。追跡可能な体制を整える。パーテーションを設ける。マスクは絶対。物理的には疎に、連絡は密に。行動制限もある。今年も同じ。

昨年度遠隔の際に急ごしらえで整えたLMSを今年も使えるように整備したので、もし次遠隔に切り替わったとしても比較的早く切り替えられるはずだ。大丈夫なんてことはないが、こうなったらこうする、という選択肢があるだけでも安心感が違う。

たとえるなら、山道が土砂崩れを起こしてしまって、しかし引き返せないものだからなんとか通るために急遽まっさらな笹藪をこいで行った、というのが去年だとすれば、今年はまた同じところで土砂崩れが起きても去年少し藪を刈ったり踏み慣らしたところを辿れば行ける、という感じ。

まぁ、この状態で山開きをするならそこに木道を整備していつでもどちらの道も安心安全にして選べるようにしておけ、というのが世間的な要望かもしれないが(ハイブリッド型)、影響調査も安全確認も済んでいない臨時的な藪のルートにすぐさま木道を敷くなんてことはできないものだろう。整備には時間も人手もお金もかかるので、崩れる確率の高いところは本格的に藪ルートも新しい道として検討整備し始めているだろうけれども、さほど崩れるおそれのないところでは、使える人は使って道が藪に戻らない程度に慣らしておく、くらいがいいところだ。勤め先もまさしくそんな感じ。

今年度異動した先は、前のところよりもずっと人が少ないので、情報伝達も状況把握も対応も行き渡るのが早くて非常に動きやすい。物理的に離れているため、前のところの情報が届きにくいという難点はあるが、逆にこちらで単独で動いて完結できる幅も大きい。
これが都市部の万単位の学生を抱える大学だったら、ほんとうに大変だろうと思う。ほとんど自治体レベルで人がいる(集まる)ということだが、そうなると情報を全員に行き渡らせて対応を統一するところでまず難航しそうだ。

今年もなんとか始まった。新任の先生も着任したし、入学式もオリエンテーションも履修登録も終わった。一通り科目は開講され授業も一巡した。
一つ一つが終わっていく。毎日の予定が線を引かれて着実に消えていく。これほど安心感のあることはない。

一つ一つが終わることで時間というのは進み刻まれていくのかもしれない。去年の、何も始まらず何も終わらない4月が永遠にも思えたのは、それなら道理であることだ。

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