パインの話

先日、スーパーで濃いオレンジ色に完熟した台湾パインが山積みになっていた。甘い香りがあたりに広がり、とても美味しそうだったので、1個買い、剥いて切ってジップロックで半分は冷凍、半分は冷蔵で少しずつ食べている。完熟パインは柔らかく果汁もたっぷりで、ピリピリすることもなくとても甘い。

昔は缶詰のシロップ漬けのパインしか馴染みがなかったが、生のパインを買って食べるようになったのは、あるとき南国の離島で、熟してから収穫される美味しいパインを食べてからだ。
島の宿で剥き方も教わった。頭と尻を落として樽形の状態にして、タテに4つか6つくらいに割る。外側の皮を削ぎ落としたら、メロンやスイカのように三角の一口サイズに切り分けていく。その間に甘い香りが広がって、汁も滴って、誰に咎められるでもないがこっそりとニ切れ三切れつまみ食いし、すべてが上等だとしみじみしながら、切り落とした葉っぱと底、削ぎ落としたいがいがした皮を捨てる。
ここまでが必要なワンセットルーチンで、あとは、そのままでも凍らせて食べるもよし、アイスティーやサワー等に入れるもよし、ヨーグルトやナタデココに合わせるもよし、菓子や料理に使うもよし、ジュースにするもよし、好きにするのがよい。(葉っぱは植えれば観葉植物として楽しむこともできるらしい。)

南の島では、東北の産直や無人販売所にりんごがあるのと同じくらいのとうぜんさで、産直や無人販売所にパインがあった。ダイビングで毎年来るという客も、宿近くの無人販売でパインをたくさん買い込んで帰って配るのだという。種類もサイズもいくつかあり、一個100円から200円くらいというのも、なんだかとてもりんごっぽくて、そうか、パインは地元で言うところのりんごのようなものなのかと勝手に腑に落ちた。そうすると場合によってはパインはりんごと訳すことができるのかもしれないな、などと思った。

パインの美味しさに取り憑かれた私は、その後、南の島から北国にはるばるやってきたパインを見ると、買ってしまうようになった。できれば青いものでなく、赤く染まった完熟のものを買いたい。それにはなかなか出会うことはできないが、旬の時期にはたまにイベント的な仕入れにより出会うことができる。それらは運搬費用などが加算されてまぁ高いのだが、もれなく美味しい。

私が一番好きな果物は桃であったはずなのに、その実、近年では桃よりも食べている気がする。桃には買うことの畏れ多さと躊躇いがあるのに、パインを買うときには高くても思い切りがよく買えてしまう。これは不思議だ。旅先での買い物の気分かもしれない。はるばる、今だけ、特別、の魔法。

今度スーパーに行ったときにまた売っていたら、やっぱりまた買おうかという気でいる。きっと、今だけ、特別、たくさんあるのだろうから。

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