往復書簡:情

アニータへ

先日、サンダルの隙間からさわりと触れた秋風が、思いのほか冷たくて、「履くべき靴」を今日もまた間違えてしまったのかしら、とやるせない思いが込み上げてきました。それはまるで自分の人生に対する態度そのもののような気がして、なんだかとても怖くなり、しかし歩き出してしまった以上、裸足になることも出来ないという不安に駆られました。そしてどうしてもあなたに手紙を書かなければ、と思い立ちこうして筆を執ることにしました。

あなたに伝えたいこと、最近の私、そして「履くべき靴」の誤った選択…。ずっと色々考えていたのに、こうしていざ手紙を書こうとすると、ぱったりと言葉が消えてしまい、ただただ情けなくなります。
何一つはっきりせず、全てが曖昧。醜くドロドロしていて、吐き気のする塊は、絶対誰にも見せられまいと思っていましたが、どうやらやっぱりあなたにだけは、思いの内を全てさらけ出さなければいけないようです。

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最近の私といえば、自分のことが大嫌いで、やることなすこと上手く転ばず、不完全な自分を許すことも出来ない悶々とした日々にうんざりしていました。何もかも「完璧」に仕上げられないのならば、いっそ全てを終わらせてしまいたい、というくだらない被害妄想ばかりが渦を巻き、かと言って終わらせるだけの「勇気」も無いまま、無気力に時間の中を漂うしかできない自分がひどく惨めに感じられるのでした。

多くの人にとって「大事なこと」が、私には大事に感じられず、そしてもっと厄介なことに、そんな自分の感性について、全く後悔など無いということです。
私以外のみんなが「正しく」生きているように見え、心の内では蔑みながらも、私だって正しくありたいのに、という矛盾した感情に、ざぶんと襲われてはなかなか帰ってこれないのでした。

馬鹿で意地悪な他人を心底憎んでいましたし、察しと要領の悪い段取りにイライラしていました。自分のエネルギーの方向性を定めることが出来ず、「勝手に描いた」他者への期待がガラガラと壊れるたび、自分は傷つけられたのだ!裏切られたのだ!と、いつまでもいつまでも子供のように喚き散らす有り様。みっともなくて涙も出ませんね。

自分がこの世で一番不幸で哀れな存在だ、とうっかり信じてしまうようなとき、視野は狭まり、見るもの全てを攻撃したくなります。
空回りやタイミングの悪さは、誰にでもあるような自然の摂理だと分かっていても、私はそんな人間の弱さと醜さだけで出来上がったような自分に、何よりも腹が立ち、馬鹿で意地悪なのは他の誰でもなく、まさにこの自分じゃないか、と心に太く重い釘を打ち込むのでした。

憂鬱な月曜日が始まる前に、私の記事を読んで「あ、水曜日くらいまでなら、なんとか息出来る気がしてきた」と思っていただけたら満足です。サポートしていただいたら、大満足です。(笑)