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大久保ありさんの個展『パンに石を入れた17の理由』を観た(2020/01/24)

人生で初めて石の入ったパンを食べた。

最初から「石の入ったパン試食してみませんか?」と勧められていたし、私も軽い気持ちであぁ、はーいって感じでそれに応じたけれど、本気で石が入っているとは思っていなかった。

包装紙に書かれた成分表示は、従来の食品では見る事のない内容だった。

石にもご丁寧に(国産)と書かれている。

石の入ったパンを勧めた女性は、「石を食べてしまわない様に先に石を取り除いて食べた方が良いですよ」とも助言していた。
なんとも不思議な話だ。
危険なら最初から入れるなよ、とツッコミを入れたくなる。
しかし注意深く食べずとも、石は直径2〜3cm程が一粒なので取り除きやすく、魚の骨より良心的とも言える。
掴んでみると、レンジで温められて、ほんのりぬくもりを感じる石。
妙な可愛さも感じる。
石を除いても歯応えのあるパン。
ここで『歯応えのある』と言ってしまうと異物混入を疑われてしまうけれど、ちゃんとしたパンだった。
そもそも石は従来異物なんだけれど、普段パンを食べる時よりもパンをゆっくり味わっていた気もした。

奇妙な話、確かに元々食べるって、危険も伴う行為だよな。と無理やり納得させている自分がいた。


そもそも私が石の入ったパンを食べた理由、大久保ありさんの個展『パンに石を入れた17の理由』は、石の入ったパンを作った市郎左衛門なる人物の半生を紐解き、何故そんなものを作ったのかの経緯を紹介するものだった。
全て作者の創作した話だけれど、パンだけポンと本物が現れると、妙な説得力が生まれる。

パンに石を入れた理由にはミネラルが豊富だとか、母の病気が原因だとか、塩味がするだの占いだの、結局単なる嫌がらせというのも否めないとも書かれていたけれど、市郎左衛門の半生を考えると、まあ仕方ないかなぁ。とも思えてくる。全て架空の話だけれど。


食べ残した石は専用のスペースに置いていくシステムだった。

積み上げる人もいれば極端に隅に置いている人もいて、あたかも石を置いている人自身が作品の一部を演じている様であった。

面白い経験だった。



会場:3331 Arts Chiyoda
期間:2020/1/5〜2020/1/26
料金:無料

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