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『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』を観た(2019/12/11)

不意にネットで見かけた広告に、白く、横にくぼみのある円筒の写真が載っていた。
どう見てもつまみたくなるそのくぼみは、ヤクルトの容器以外の何モノでもなかった。
以前テレビ番組でチラッと見かけた話では、そのくぼみによって飲み辛さ=小さい容器でも感じられる飲みごたえを作り出している。と言っていたような記憶がある。
私は幼少期、そうデザインされているとも知らずにヤクルトの蓋を敢えて小さく開けて、更に飲み辛さを演出する事が好きだった。

でかでかとヤクルトの模型と思しき写真を載せていたのは『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』の広告だった。

普段見慣れすぎててあまり考える事も無いけれど、大手企業や商品のロゴは何故記憶に残るのか。
そんなものが造れる天才デザイナーの脳内は一体どうなっているんだろうか。魔法でも使っているのか? "めったに見られないデザイナー達の原画"を観てみたくなり、私は展覧会に足を運んだ。



『㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画』
は日本デザインコミッティーという団体の現メンバー26名の仕事ぶりや、あらゆるデザイン誕生までの工程やメモが展示の大部分であった。
私が想定していた商品のデザインだけでなく、建築物や家具もあり、照明デザイナーという職業を私はこの日初めて知った。


会場内は圧倒的な情報量。

1つの作品を作り出す迄のサンプル、ラフスケッチ、デザイナーによってメモの書き方は違えど最良の一手を目指している事は同じ。紙に手書きからPCの作業、時代は違えど道のりが険しいという事は同じ。

観ていて面白かったのが、同じ建築家という括りであってもアイデアの書留方が全く違ったところ。
性格の違いなのか、きっちりとスケジュール帳に丁寧に書き留めている方もいれば、溢れ出るイメージに文字を書き留める手が追いついていない方もいて、この文字の感じに合わせて展示されているメモ用紙もスピード感ある置き方だった。その人柄迄も想像してしまう展示スタイルだ。


去年国立新美術館で開催された『こいのぼりなう! 』で知った須藤玲子さんのテキスタイル試作も面白かった。


その他にも、松屋銀座内にあるデザインギャラリーで1953年から年間約10回開催される展覧会(現時点で760回開催)用のDMも展示されていたが、こちらのデザインもその時代毎に洗練されたシンプルかつとても素敵なものだった。時代によって移り変わる松屋銀座のロゴも見もの。
もし仮に、物販で歴代DM集が販売されていたならば絶対に買っていたと思う。


"めったに見られないデザイナー達の原画"は、天才デザイナー達の脳内を覗き込んだというよりも、脳内だけでこねくり回してパッと一つの最良のデザインが生まれるのではなく、天才という言葉では片付けてはならない程の膨大な試行錯誤の数々と、やはりその膨大な試行錯誤を根気よくやってのけるからこそ天才なのだという事を教えてくれた気がした。

予想外に長居をしてしまい、もっと余裕のある日に来てもっと長居すれば良かったと後悔した。


会場:21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2
期間:2019/11/22〜2020/3/8
料金:一般1200円
※一部を除き写真撮影可

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