天田祐介(Amada Yusuke)

小説を書いています。

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マガジン

  • 星の降る街(後編)

    小説「星の降る街」の後編です。前編は無料で公開していますので、そちらから読んでいただけると嬉しいです。 https://note.com/yusuke_amada/m/ma7dff7a9a482

  • 巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼

    スペインの世界遺産サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼について、実際に巡礼をした立場から事前準備についてシェアします。 ブエン・カミーノ(良い巡礼を)

  • 星の降る街(前編・無料公開)

    長編小説「星の降る街」の前編を無料公開しています。

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(小説)星の降る街 1

 飛行機は何度か雷を受け機体を大きく揺らしながらパリのシャルル・ド・ゴール空港に着陸した。機内からターミナルに繋がる渡り廊下が劣化しているのか、内側に激しい雨が滲み込んでいた。窓の外を見ると午後三時とは思えないほど暗い。  乗客の波に押されるように入国審査へと向かった。先頭の方で何かトラブルがあったのか人が多過ぎるのか、EU内国籍のゲートは順調に流れていたが、それ以外の何か所は全くといっていいほど進まなかった。普段なら怒り心頭に発して、心の中で毒づくところだが、無感情のまま立

    • (コラム)同調圧力

       28年前のある日。  バンコクはいつも暑いが、その日は格別であった。確か湿度は80%近くあり気温は39度だった気がする。数日来、仕事は全くうまくいかず、気分転換に当時、世界の掃きだめと言われていたカオサンという街を徘徊していた。  ニュースでも過去にないほどの暑さだとアナウンスされている日だ、熱中症予防のため何度か露店のフルーツを食べていたら、やはり一人で歩いていた大柄の黒人に声をかけられた。 「日本人だろ? 野茂が投げているぞ」  なかば強引にMLBの中継している

      • デビューしたころ「優しい人ばかりの作品ですね」と言われたことがある。この人は苦労や修羅場を体験せずに齢を重ねたな、と確信した。十分なほど人の醜さに翻弄されている人は多いはず。私はもうこりごりだ。癒しの世界の入ろうとする人に届く作品を書き、生きる力を共有する、そんな作家でありたい。

        • 先輩作家で、盟友の芝豪(しば・ごう)さんの作品が公開された。「北匈奴の軌跡 草原の疾風」https://note.com/go_shiba_novels/n/n0eb2c5fec77b 是非、チェックしてみて欲しい。

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        (小説)星の降る街 1

        • (コラム)同調圧力

        • デビューしたころ「優しい人ばかりの作品ですね」と言われたことがある。この人は苦労や修羅場を体験せずに齢を重ねたな、と確信した。十分なほど人の醜さに翻弄されている人は多いはず。私はもうこりごりだ。癒しの世界の入ろうとする人に届く作品を書き、生きる力を共有する、そんな作家でありたい。

        • 先輩作家で、盟友の芝豪(しば・ごう)さんの作品が公開された。「北匈奴の軌跡 草原の疾風」https://note.com/go_shiba_novels/n/n0eb2c5fec77b 是非、チェックしてみて欲しい。

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        • 星の降る街(後編)
          15本
          ¥850
        • 巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼
          5本
        • 星の降る街(前編・無料公開)
          14本

        記事

          先輩作家で、盟友の芝豪(しば・ごう)さんの作品がまもなくnoteが公開される。 匈奴の盛衰の物語で興味深い。資料が少なく、幻とまではいかないにせよ、中国、東アジアの古代ファンにもなじみは薄いが、実はこんな感じであって欲しい と思うようなところも随所にあり、公開が楽しみだ。

          先輩作家で、盟友の芝豪(しば・ごう)さんの作品がまもなくnoteが公開される。 匈奴の盛衰の物語で興味深い。資料が少なく、幻とまではいかないにせよ、中国、東アジアの古代ファンにもなじみは薄いが、実はこんな感じであって欲しい と思うようなところも随所にあり、公開が楽しみだ。

          (小説)「星の降る街」あらすじ

           失態を犯して会社を辞め、離婚して憔悴していた本谷雅春に第二の故郷、宮城県石巻の幼馴染らが救いの手を差し伸べる。その中には、かつて結婚まで考えていた初恋の相手、有里もいた。旧交を温めているうちに、中学生の頃の恩師の計らいで、お互いにバツイチなのだからと再婚を持ちかけられる。  話はどんどん進んでいくが、不幸なことに時を同じくして雅春に癌が発見される。死を覚悟して別れようとするが、逆に有里の強い意志もあり、新たな絆で結ばれようとしていた。そんな矢先、東日本大震災が起き、有里は行

          (小説)「星の降る街」あらすじ

          花粉に黄砂がぶつかると、大きい花粉に入り込み、膨れ上がって爆発するそうだ。さらに小さくなって肺の奥底まで届いて危険らしい。新しい知識を得るとワクワクするものだが、持病のある私には、嬉しくない情報だ。

          花粉に黄砂がぶつかると、大きい花粉に入り込み、膨れ上がって爆発するそうだ。さらに小さくなって肺の奥底まで届いて危険らしい。新しい知識を得るとワクワクするものだが、持病のある私には、嬉しくない情報だ。

          小説「星の降る街」あとがき

          星の降る街(後編)は有料マガジンでまとめてご購入いただく方がお得です。ご注意ください。

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          小説「星の降る街」あとがき

          (コラム)作家・芝豪さんについて

           なんと柔らかで、整った文体だろうか。一読で理解させてしまう無駄のない文章。外連味のない、とはよく聞くが、形に接したのは芝豪さんのデビュー作、「士魂の海」(学研M文庫、改題、銀之助活殺剣、風花の仇)だった。1994年のことだった。  以来、作家と編集者として交流を深め、いつのころか、刎頸の交わりを得た。作品はどれも真綿が燭光を幾筋も得ているように優しく、繊細かつ底知れない強さを持っている。同じ書き手として生涯をかけてもその影すら踏めないと思う。  作品は多岐にわたっている。

          (コラム)作家・芝豪さんについて

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 5

          巡礼準備あれこれ⑤  巡礼の準備を復習しよう。 〇小説や写真集、ガイド本で知識を高め、気持ちを高めよう。 〇具体的に日程が決まったら、サンティアゴ友の会で巡礼手帳(クレデンシャル)を求めよう。 〇予算を整理しよう。昨今航空運賃はじめ、値段がよく変わるので注意。とくに為替は意識しておこう。(なお、巡礼時とはいえ、物騒な話をよく聞くので、なるべくクレジットカードを使い現金は計算して持っておきたい。ちなみに円からユーロに交換するのは日本やパリでした方がいい。巡礼路は交換率が悪い)

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 5

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 4

          巡礼準備あれこれ④ 予算など  全行程を一カ月かけて歩くとなると気になるのは予算だろう。為替の変動によって多少は変わるので、出発前によくチェックして欲しい。  まず日本のフランスまでの航空運賃、着いた時に泊まる、パリの一泊分のホテル代。パリからバイヨンヌまでのTGV代、到達地サンティアゴ・デ・コンポステーラからパリまでの航空運賃。ここまでは代理店によって違うだろうからよく調べて欲しい。概算だと25から30万円くらいか。パリで一泊としたので、すでに長旅なことと、パリに午後に

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 4

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 3

          巡礼準備あれこれ③  準備は基本的には普通の海外旅行と思えばいい。パスポートやクレジットカード、旅行保険、持ち物チェック。  しかし、巡礼なので、もう一つ。  巡礼手帳(クレデンシャル)だ。現地でも買えるが、日本カミーノ・デ・サンティアゴ友の会で求めるものがいい。大抵の国の人は現地で求めるが、日本の物はデザイン性にも優れているので現地でうらやましがられ、話のきっかけが出来る。なお、巡礼手帳がないとアルベルゲには宿泊できない。忘れない様にしよう。東京以外にお住いの方は会のホ

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 3

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 2

          巡礼準備あれこれ②  これを読んでくれている人で巡礼の意味を考えて行くことを躊躇している人や、行こうと思っているけど、気分が盛り上がっていない、という人は何冊か関連する本を読んだらいいかもしれない。  お勧めは、それは当然のように明記するけど、このサイトにある。(笑) 「星の降る街」(天田祐介)  で次に、 「星の巡礼」(パウロ・コエーリョ、角川文庫)  その他にもたくさんあるが、自分で探してみて欲しい。そこからが巡礼だから。ちなみに写真集とか街道沿いの有名教会などはよほ

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 2

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 1

          巡礼準備あれこれ①  スペイン、サンティアゴ巡礼に興味を持った人のために少し準備することをお知らせしたいが、優れたガイド本、分かりやすいwebサイトは多く存在する。この稿ではあくまでも現地を歩いた一人の経験から書いていこう。  巡礼は言わずもがな、信徒が想いを乗せて自らを見つめ、あるいは教義に探求するための行為かもしれない。しかし、現代にいたっては宗教的な意味合いがなくても、ただ興味ある、スピリチュアルな体験をしたい、などの理由でも歓迎されているし、レジャー感覚でどうぞ、

          巡礼の手引き:スペイン サンティアゴ巡礼 1

          (コラム)物書きの過渡期

           物語の世界において、今の時代はあらゆるジャンルで過渡期を迎えている気がする。  今はどうか、その昔、教室の前や後ろに貼ってあった年表に戦国時代と江戸時代が縦線で区切られず斜めの線だったと思うがまさに我々は斜めの中で生きている。  世の中の大きなことを捉えて言っているのではなく、たとえば小説、物語の世界。  単純に言ってしまうと、日本においては長く、「感情優先」は中間小説。「意志」は理念小説、「感覚」が純文学などと言われ、融合したものが「純文系中間小説」などと呼ばれていた。大

          (コラム)物書きの過渡期

          (コラム)表情筋は語る

           WBCの試合の中で見せた大谷翔平の顔のなんと魅力的なことか。大笑、微笑、真剣、怒り、鼓舞、その都度癒される。これがスターなんだろう。このまま歳を重ねて欲しいと親のような気持ちになる。 と思うと同時に、過去に見た醜い顔も浮かび萎えたこと数度。  もう35年前、ある新聞社に入社、研修の最終日だったか、講師から、驚く指示が出されたことを今も鮮明に覚えている。全30巻の百科事典が全員に配られた。 「今からその本の間違いを探して。事実の間違いでも誤字脱字で構わない、一つ探し出したら帰

          (コラム)表情筋は語る