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特別研修ゼミナール!受講レポート

こんにちは。横浜ではたらく社労士、いわたです。先週の金・土曜日の終日、今週の土曜日の午前中にかけて3日間、特別研修のゼミナールが開催されました。非常に学びの多い研修でしたので、こちらも忘れないうちに振り返りしておきます!ゼミナール最終日の午後に実施された試験については別エントリーにてレポートします。ちなみにグループ研修のレポートは以下からご覧いただけます!

講師は弁護士、座席はスクール形式

前回までのグループ研修では特定社労士資格を持つグループリーダーが、8名~9名ごとのグループにつきお一人付いて下さいましたが、ゼミナールでは講師は弁護士の先生が教室内の約80名をお一人でご担当されるというスタイルになります。

座席はスクール形式になりますが、グループごとに場所が指定されています。グループ内での座席指定はなく自由です。(=先着順)

ちなみに原則ほぼ全員が同じ回数だけ発言するようになっているので、どこに着席してもあまり関係はありません。

講師の弁護士の先生は、我々の会場では1日目が「企業側」の弁護士、2日目は「労働者側」の弁護士の先生にご登壇頂きました。(おそらく所属グループごとに順番が異なる)

ゼミナールでは何をするのか

「グループ研修・ゼミナール教材」の検討課題の設例1、設例2および検討課題、倫理とテキストに掲載されている課題を小問を含めてすべて取り扱ってくれます。(私はてっきり設例1・2と倫理だけだと思っていたので、検討課題の復習ができておらず、ちょっと当日焦りました。)

予習としては、グループ研修で既に各グループとしての意見を各小問ごとにまとめていれば特に改めて実施することはありません。ただ、グループ研修からゼミナールまで日付が結構空いていたので、グループの意見をしっかりと思い出しておいた方がスムーズです。

各設問ごとに弁護士の先生から大まかな論点が提示された後に、小問ごとに受講生に対してテンポよく質問が投げかけられていきます。イメージとしては、以下みたいな粒度の質問をどんどん受講生が回答していく感じです。

「小問1については、どういう結論になりますか?それはなぜですか?」
「●●という観点からは、他に考慮すべき事項はありませんか?」
「●●が労働時間だと主張するためには、どういう事実が必要ですか?」
「労働契約法●条との関係性で見たときには、どう考えますか?」
「本件を検討する上で見ておかないといけない判例は何ですか?」

弁護士の先生に何を聞かれるのだろうと戦々恐々としていましたが、上記のような感じでグループ演習でしっかり議論していれば特に答えに窮するような意地悪な質問はありませんでした。あと割とテンポよく進んでいて、誰が何を回答したか等、他の受講生の記憶にとどまる余地もないので、「回答できなかったら恥ずかしい」みたいな心配も無用です。

ちなみに受講生用のマイクがどんどん回っていくのですが、コロナ感染予防としてマイク消毒用のウェットティッシュが配布されます。来年も配られるのかはわかりませんが、もし使わずに記念に残しておきたい!という方はご自身で消毒用のティッシュを持参しましょう。


グループのあっせん申請書・答弁書のレビュー

グループ研修で作成したグループごとのあっせん申請書と答弁書については、同じ教室にいるグループの分だけは冊子としてまとめられていて、ゼミナール研修の初日に配布されます。他のグループのまとめ方等も見れて参考になります。
設例の小問の検討・解説が終わった後にはグループごとの申請書・答弁書を弁護士の先生がレビューしてくれます。多くはなかったですが、「なぜこういう起案にしたのですか?」とグループの代表者に対して質問をされている場面もありました。
ただ細かい点をレビューしたり突っ込まれることはなくて、イメージとしては全体的な講評と各グループごとに気になった点を弁護士の先生から解説を受けるイメージです。

学び①:法律要件⇒法律効果

法学部卒の方なら基礎中の基礎かも知れませんが、そうでない社労士だと基礎法学については試験科目にもなっていないので、ここが以外と弱点かもと思いました。二日目の先生(労働側)が講義の最初に、「法律要件」と「法律効果」について整理してくださいました。
法律には「法律要件」と「法律効果」があり、各条文を読む際にはどこが法律要件でどこが法律効果かを見極めなければならない。
たとえば、労働契約法第19条であれば、Aという法律要件が揃って初めて、Bという法律効果が発生するということ。


(A:法律要件)
・労働者側からも申し込み
・同条1号または2号(反復更新、更新期待)への該当
・更新を拒絶する客観的・合理的理由を欠き、社会通根上相当と認められない
(B:法律効果)
・従前と同一の労働条件で労働者からの更新申し込みを承諾したものとみなす

おそらく特定研修の中ではこの感覚で条文を見ているかどうかが、もっとも重要な要素になってくるかと感じました。たとえば、労働者側の代理人として有期雇用の雇い止め無効を主張する際には、上記の法律要件を満たす「生の事実(要件事実)」を見つけてきて、~という法律要件(A)が揃うので、会社が更新申し込みを承諾したものとみなされ(B:法律効果)、雇止めが無効だと論理を組み立てていく形になります。

学び②:判例解釈は原則⇒例外の順番で

判例を参照するときに大事な感覚だなと思ったのですが、まずはそもそも「原則」としてどうなのか?と問いを立てることが重要だと学びました。労使関係というのは特殊な関係で、私人間の取引の根拠となる「民法上の原則」で処理すると立場の弱い労働者がかわいそうという前提で、労働者保護のための「修正」が例外的判断として追加されていきます。判例にはその例外が意外と厚く積み重なっていたりします。

たとえば「休職・復職」の論点でいえば、
原則:「従前の職務を通常通り行える程度の健康状態まで復帰すること」
です。雇用契約は、労務提供の対価として賃金を請求する契約ですから、当然契約上定めている役務が提供できるかどうかが、まずは大原則。

しかしながら、人事異動でジョブローテーションを繰り返す日本の場合だと、たまたま体力が必要な部署に配置されたときに疾病になった場合だと、そうじゃない人と比べて復職難易度が上がってしまうのは不公平。そこで「片山組事件」の判例として出てくる

例外:「職務限定特約がない場合」には、配置転換も検討せよ。という保護的な対応が出てくるわけです。その上で、更に例外の例外として、「職務が限定されている場合であっても、信義則上、他の部署への配置転換も考慮しよう」という更なる保護措置が出てくる。判例だとこの例外部分にばかり目についてしまうのですが、まずは大原則を押さえることが重要というのは研修でのよい学びでした。

学び③:倫理上の対応は極めて慎重に

3日目最終日の午前中には3時間かけて社労士の倫理に関する小問解説が行われます。倫理を検討する上では、
①自身が受任しようとしている業務が「社労士法」上のどの業務に該当するのか(特に事務代理なのか、紛争解決手続代理業務なのかは意識)
②特に紛争解決手続代理業務に該当していく場合には、社労士法22条との「
業務を行いえない事件」との該当性をしっかり見ていくことになります。

しかしながら「じゃあ社労士法22条に抵触していないから、受任していいのか?」ということにはならず、更には「職務の公正な執行」「品位保持」「守秘義務」という他に社労士法で定められている観点を踏まえて、実際に受任すべきかどうかを検討していくことになります。

基本的には、事件の依頼人、代理人である自分、事件の相手方の3者全体を見たときに、利益相反になりそうとか、依頼人のために全力を尽くしているとは言えなさそうとか、過去に仕入れた秘密情報を使って有利に進めようとしているとか、そういう疑義が出るものは受任してはいけませんよ、という極めてコンサバティブに倫理上の受任可否は判断すべき、というのが学びでした。

まとめ:開業者はなるべく早めに受講をオススメ

私は「開業初年度に受けておいた方がいいよ」と先輩方から言われて、今年受講したのですが、もし開業社労士として業務に従事するのであれば、間違いなく早めに受講しておいた方がよい研修だと感じました。もちろん、紛争解決手続代理業務は受任しない方針という先生もいらっしゃるかもしれませんが、この研修は事後的な紛争解決だけでなく、「どうすれば労使紛争に至る前にその原因を解決できるのか」を知るためにも非常に役立つ研修です。そもそもあっせんで請求されうるような事項を、企業側がきちんと整備し、真摯に対応していれば労使紛争は未然に防げます。そういう意味では、勤務社労士として企業で人事対応されていらっしゃる方にも本当にオススメです。私も事業会社の人事をやっていたころに受けていれば、もっといろいろ対応できたなーとも思ったりしました。

もちろん、研修受講に要する負担は時間的にも内容的にもかなり重たいですが、私自身、今回の研修を経て社労士としての視野が数段階変わる感覚を持ちました。また何よりも同じ社労士として活躍されている他の受講生としっかり深い議論ができる機会はなかなかありませんので、素晴らしい刺激になりました。


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