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【研ぎ屋の小話】価値のグラデーション

こんにちは鳥取県米子市の「包丁研ぎのお店 タルイハモノ.」です。
今回は研ぎ屋で感じるお客様の包丁に対する価値のグラデーションについて書いてみようと思います。

包丁は『値段』のレンジは幅が広いですが安いものであれば1500円くらい。そこそこ良いもの…そうですね例えばGLOBALの包丁なら8000円くらいでしょうか。

研ぎを始めた当初、研ぎの値段があまり高いと安い包丁を持っている人は依頼してこないかなと思って、今から見るとかなり安い値段でやっていました。
(研ぎの値段に対して包丁が安いと買いなおした方が経済的には合理的)
仕事を依頼いただく中でお客様の反応を見ていると包丁自体には『買った時の価格』以外の価値があるんだなと感じるようになりました。

店舗を始めるにあたって分類してみたので良ければご覧ください。

まずその中身はグラデーションがあると思いますが区切るとすると大きく4つに分かれます。

①誰かから譲り受けた包丁

おそらく依頼いただく包丁に一番価値を感じているのは『誰かから譲り受けた包丁』など包丁の替えが利かない時でしょうか。

例えば結婚や成人のお祝いにいただいた(意外かも知れませんが「魔を断つ」という意味合いで結婚式で贈られます)とか両親や祖父母が使っていた包丁などでしょうか。

包丁という道具にお客様自身のストーリーが付与されているのでその包丁はプライスレス。

今後使えるようにするためにコストは通常より高くかけても大丈夫とおもっているかと思います(もちろんだからって料金高くとかなりませんよ。通常通りです。色々不具合から費用が多くなることも多いですが)

よく商品にはストーリー付けが大事と商品企画などで聞きますがお客様自身がストーリーを付与しているので価値は特に大きいかも知れませんね。
実際うちのお店にはそういったお客様が多く、親御さんや祖父母が使っていた包丁やハサミも良く持ち込まれます。
サビや形状の変化から使えない使いづらいものもありますがそのほとんどが、本体はしっかりしているのでちゃんと直せばまだまだ使えます。
※どちらかと言うと本体より柄を付けるための中子という部分がサビてダメになっている事の方が多いですね。それも溶接して直します。

②長年愛用しているお気に入りの包丁

次に『長年愛用しているお気に入りの包丁』
これは飲食関係の方や包丁マニアな方など多いパターンでしょうか。

まず根本的に包丁自体の価格が高い
飲食のプロの現場であれば最低でも1万円程度からで10万円以上する包丁も多く見受けられます。

当然下手なことをされたらたまったものではないので『それなりの料金のお店に依頼する』ことになります。
実際、地域の方がされているところに出して使い物にならなくなった包丁がうちに回ってくることがあります。私なら自分の愛用の包丁あんなことされたら発狂しますね。

包丁自体それなりの金額だし愛用している包丁だからこそメンテナンスにもそれなりにコストをかけて信頼できる所に依頼すると言う事だと思います。

まさかの100均の包丁のご依頼もいただいたことがあります。

③切れない包丁のストレスを解消したい

これが一番オーソドックスで一番多いお客様ですね。
包丁自体は毎日使うものなので切れないとストレス満点なこと請け合いです(包丁が切れないと知らず知らず奥歯をかみしめているますが、その力は体重~300kg程度までとかなり大きな力がかかります)

もちろんシャープナーでメンテナンスもしているけどあまり効果を感じなくなってきた。そろそろちゃんと研いでもらおうと言う事でお持ちいただいていると思います。

もちろん包丁を研ぐことは誰でもできます。
ただしそれはそれなりに練習すればという話。
実際は中々日常の中で研ぐことは出来ていないでしょう。
(私も研ぎ教室を何度かしたことはありますが、続いている方はごく一握りです。砥石の費用や時間などそれなりにコストかかりますからね)
かかるコストを考えれば依頼したほうが安いし間違いない。
合理的な理由でご依頼いただいてると思っています。

④できるだけ安く切れるようにしてもらいたい

まちの研ぎ屋というとイメージされるのがスーパーなどに来ている移動式の研ぎ屋さんの方も多いかと思います。
そういうところはその日のうちに返さないといけないので5-10分程度、簡単に刃先に機械をあてて出来上がりというものが多くなります。
時間がかからない分、値段も安く500円~高くても1000円くらい。

『研ぎ屋ってそういうもの』と価値観になっている場合は「高いな~」って言われたりしますし、そもそも切れる包丁自体に価値を感じていない場合は高いと感じてご依頼いただけないこともあったりします。

いかがだったでしょうか?

ストーリーや思い入れのあるなしで同じサービスでも価値の感じ方が大きく違うと言う事が分かったことはお店を始めるにあたってすごく興味深く意義のあることだったなと思います。

ただ価値観は年齢や時間とともに変わっていくので自分自身がどんな価値を提供するのかとともにお客様の価値もどのように変化しているかを感じながらひとつひとつ丁寧に研いでいきたいと思います。

包丁研ぎのお店 タルイハモノ.

定休日 月・火 +日曜は不定休(営業カレンダー)
営業時間 13:00~18:00

住所:鳥取県米子市昭和町62-5
専用駐車場 又は近隣駐車場にお停めください
tel:090-6962-5675
instagram @tarui_hamono
▶︎包丁の無料貸し出しあります
▶お返しは郵送も可能(費用は300円)

オーナー タルイユウスケ

大阪出身 1982年生まれ
辻調理師専門学校卒 調理師15年
2012年 山陰に移住。研ぎの傍らカメラマンとして活動することも…
自社の包丁を発売するのが目標の一つ。

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