見出し画像

国旗解説ふりかえり

あれから1ヶ月半が経った。あれとは、オリンピックの入場行進にあわせた旗マニア有志による解説配信。この国旗解説イベントの詳細は、その直前に投稿した「オリンピックは旗マニアの祭典でもある」と題したnoteのとおり。

オリンピック開会式での入場行進はおよそ2時間の長さだった。その前後のセレモニーなどをふくめた放送時間は倍ちかく。解説者5人+司会の構成だったとはいえ、それだけの時間しゃべり続けてかなり消耗した。

以下、そのときの録画がノーカットのままYouTubeで公開されている。可能であれば、NHKの放送録画(見逃し配信)を横にならべて同時に再生するのがオススメ。

ライブ配信中の最大同時接続者数は125名、4時間ののべ視聴者数は675名だった。たいへんありがたいことに、ライブ中のYouTubeにコメントを入れてくださったかたも、Twitterなどでふれてくださったかたもいた。そして、わたしに個人的に感想を聞かせてくれた知人や友人も。

自画自賛になるかもしれないけれど、マニアックな催しにしては、結構な盛りあがりだったと思う。「ああ、これを話せばよかった!」とあとから思うところは多々あったものの、おおきな失敗や失言もなく終えられてホッとしている。そして、寄せられた感想やコメントがポジティブで思いやりのあるものばかりだったことは、とっても嬉しく、おおきな励みになった(みなさんアリガトウ!)。

解説担当者5名それぞれに約40の国と地域が割り振られた。はじめに機械的に割り振って、思い入れのある国など各担当者の希望におうじて調整をした。わたしが希望して担当させてもらったのは、ケニアモンゴル。どちらもかつて住んでいた国だ。思い入れはもちろんある。あとは機械的な割り振りのままだったけど、シリアなど、わりと頻繁に渡航した国も担当できたのは嬉しかった。

各国どのぐらいの選手団なのか、正確な順番はどうなのか、すべての情報が公開されていたわけではないし、行進の人数をしぼるなどの憶測報道もあって、準備は手探り状態。そんな状況だったので、原稿は用意しなかった。ただ、担当する国旗についてのキーワードのみを書いたものを手もとに置いて、あとはテレビ中継を観ながら適当に話した。

入場行進は思いのほかハイペースで進んでいったので、心づもりをしていたネタの半分も話せなかったような印象だ。わたしの担当では、図鑑をみればわかる情報だけでなく、もっとトリビア的なことや、わたし自身の経験を話したかった。しかし、そんな話をしようとした矢先に次の国に切り替わったりして、思わせぶりなまま終わってしまった国もすくなくない。

YouTubeの配信録画を観てふりかえると、思わせぶりなまま途切れてしまいがちな解説ではあっても、全体としてまとまりのある印象になっている。これは、司会の山田さんがテンポよく自然に次の担当者に引き継いでくださったおかげだ。つくづくモデレーターの手腕の重要さを思い知った。

あと、オリンピック開会式の祝祭的な雰囲気も良かったのかもしれない。いわば、寛大なスポーツマンシップに満たされた空間。国旗解説というマニアックな催しも、そんなオリンピック精神にまもられた競技のひとつだったような気がしてくる。

前に長時間話し続けたのはいつだろう。仕事で最近やっているウェビナーはせいぜい1時間。某大手ジュエラーさんでおこなった社員研修では、1日のうち午前午後それぞれ2時間半で合計5時間というのがあった。けれどあまりにハードだったので、その後は別日程に分散させてもらった。

以前、愛知県内にある大学の非常勤講師をしていたのを思い出した。そのうちの何年かは一週間の集中講義形式。連日、午前午後とノンストップで講義をしていた。おそらく、わたしが話しつづけた経験ではこれが過去最長だろう。講義準備や試験、採点などもくわえると、かなりの重労働だ。いまはもう同じようにできるような気がしない。

講義や講演は自分のペースでできるけれど、国旗解説はチームワーク。司会の采配に注意しつつ、放送されるライブ映像を観ながら臨機応変に対応しなければならなかった。ほかの解説担当者のときは黙っていても、目も耳もずっと集中しっぱなし。さらに、関係者間でのやりとりはひそかにFacebookのメッセンジャーをつかっていた。そんなだったので、終了後はどっと疲れた。

じつは、わたしはスポーツが得意ではない。むしろ苦手。もともとの運動神経が足りていないから、さらに運動不足になり、スポーツに対してのデフレスパイラルが起きている。そして、わたしは団体競技がとくに苦手だ。それは子供のころの”強制参加なのに負けたら連帯責任”という理不尽きわまりない経験から来ている。

そんなだから、チームワークとしておこなう国旗解説がうまくいかなかったら・・・という心配がなかったといえばウソになる。”有志”とはいえ”日本旗章学協会”という団体名を出す以上、組織のイメージダウンになるようなマネはとてもできない。責任感をもって本番に臨めるのは良いことだけど、心配がストレスになるのは負の側面だ。

ネガティブな話はよそう。

入場行進のあとのセレモニー。まったりと話しつづけていた雑談のなかで、たしか「格闘技のようだった」という感想があった。不思議な達成感があったのは事実。そうか、スポーツの団体種目をチームでやりとげたあとの感覚だったのかもしれない。

先に書いたとおり、わたしは団体競技に苦手意識があった。こうして楽しんで達成感を得られるだけなら、無駄に苦手意識をもたなくてもよかったはずだ。最近の学校教育では、わたしが子供の頃よりもずっと個性が認められるようになっているようだから、理不尽な思いから苦手意識をもってしまう子が減っているのなら嬉しいのだけど。

雑談では、来年の冬季オリンピック(北京大会)でも国旗解説をやろうという話がでた。ほんとうに実現するのか、やるとしたらどういうやり方にするのかは、またこれから検討することになると思う。

今回は、国旗についての基本情報を紹介することが主目的だった。「国旗を知るのっておもしろいな」と興味を持った視聴者にとっては、おなじ内容だと物足りなく感じられるかもしれない。わたしたち解説する側にとっても、もうちょっと深掘りした内容を話しあうことができれば、もっとモチベーションがあがる。

リアルタイムのやりとりにも可能性がある。インタラクティブなやりとりが可能なのはネットのライブ配信ならではだ。

今回はブラジルチームの入場を心待ちにされていたかたのコメントがあった。わたしたちもブラジルチームがどのような形で入ってくるのかが気になった。ブラジルは担当ではなかったけど、もし大選手団で時間が長かったら、担当者をはなれて話が発展するかも・・・なんてことをすこし考えていた。実際は拍子抜けするほど短かかったけど。

入場行進にあわせた国旗解説は、それはそれとしてやるだろう。別枠で旗のデザインはもちろん、プロトコール、国章、歴史的な旗、情勢、言語、文化とさまざまことを深掘りして話せたりすると楽しいだろうし、あらたな気づきがあるんじゃないかと思う。

次回どうなるのか、決まったらまたnoteで告知することにしよう。

今回の国旗解説で、わたしが担当したのは以下の国ぐに。せっかくなので、旗の絵文字と、簡単な一文を書いておく。入場順。

🇮🇪グリーンはケルト民族の色
🇦🇪構成首長国はそれぞれ赤と白のシンプルな旗
🇦🇲旧約聖書のエピソードに由来
🇮🇷じつは小さな文字がいっぱい
🇺🇿中世の天文学に由来するデザイン
🇬🇧複数の旗が合体してできた旗
🇸🇿白黒の盾は、黒人と白人の共存
🇦🇹血生臭いエピソードに由来
🇬🇾旗章学者によるデザイン
🇨🇲かつては星がふたつ
🇬🇼星は首都の位置
🇬🇹国鳥ケツァールは自由のシンボル
🇭🇷国をつくってきた地域の紋章がいっぱい
🇰🇪マサイの盾がとってもアフリカン
🇸🇦文字がメインの唯一の国旗
🇸🇱コンビニじゃないよ
🇸🇾かつて別の国家連合でつかわれた旗
🇪🇸大航海時代らしい旗
🇸🇨珍しい放射状のデザイン
🇻🇨カリブ海の宝石
🇹🇩ヨーロッパにそっくりさんがいる
🇹🇻9つの星は国を構成する島々
🇩🇴元はハイチ国旗に白十字
🇳🇬公募で決まった旗
🇳🇿国旗を変える動きがあったけど変わらなかった
🇧🇲イギリスの商船旗がもと
🇭🇺かつての大帝国を構成していた時代からのデザイン
🇵🇭戦時には上下反転
🇵🇷実は紋章がとても伝統的
🇧🇫中央の星は革命とともに資源の金を象徴
🇦🇸横を向いた米国のシンボル
🇻🇪今世紀になってから星が増えた
🇵🇱歴史に翻弄された国
🇭🇳グループ再結成の願いが込められた旗
🇲🇱かつて中央に人型
🇸🇸星の角度にバリエーションあり
🇲🇿国旗が変わりそうなのになかなか変わらない
🇲🇳宇宙をあらわすソヨンボ
🇱🇹アフリカ的な配色だけどヨーロッパ
🇱🇺オランダよりもうすい青
🇱🇧古代の造船木材にちなむ

これらの国と地域の旗が気になったかたは、以下の入場行進部分だけの抜粋バージョン(2時間弱)もご覧あれ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?