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来年の手帳

11月になった。今年も余すところ2ヶ月。書店や文具店には、来年のカレンダーが並びはじめている。ぼちぼち翌年の準備にとりかかろうか、と思う時期だ。

デジタル化が進んで、なにかと便利になった昨今。今年のコロナ禍で、さらにデジタル化が進んだ。報道では、脱ハンコやファクス廃止といった話題も耳にする。利便性だけではなかなか普及しない。やはり、必要に迫られたり強制されたりしてこそ、技術が進み普及してゆくのか。

最新技術にはアーリーアダプターでありたい反面、気に入ったものについては、頑なに古きを守りたい。わたしの場合、スケジュールを管理する手帳はそんなもののひとつ。オンラインの会議や打ち合わせが増えて、スケジュールがメールから自動でカレンダーアプリに登録されるようになった。それでも、変わらず手書きの手帳を使い続けている。

40年にわたる習慣のせい?自分の手を動かして書かないと、記憶に残りづらいような気がする。同じ使うのなら、気分よく使える、素敵な手帳が良い。ページを入れ替えるシステム手帳というものもあるけれど、どうせなら毎年買い換えて、気分も変えられた方が良い。

そんなわたしがもう10年以上、使い続けているのが、ペーパーブランクス社の手帳。ヨーロッパの古書の、重厚な装丁を模したカバーデザイン。他にも、歴史上の著名人の筆跡をあしらったデザイン、現代作家による斬新なデザインや、東洋的なデザインもある。サイズもミニ、スリム、ミディ、マキシ、ウルトラと選択肢が豊富だ。下の写真は、手元にあったものを適当に並べたもの。ほかに、しまいこんでしまった古いものも多数ある。上段中央の箱入りのものは10年日記。その右どなりはiPad miniのケースで、右下のはペンケース。

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ペーパーブランクスの手帳は、毎年少しずつデザインのラインナップが変わるのも魅力だ。1年限定仕様のダイアリーとは別に、ノート類も常に新製品が出ているようだけど、主にラインナップを確認するのは翌年のダイアリーが出るこの時期だ。来年はどれにしよう、とあれこれ悩むのが、また楽しい。

これまで使ってきて、わたしが使い勝手が良いと感じたのが、スリムという縦長のサイズ。かつては日本国内向けにもあったのだけど、いつからか無くなってしまった。それで、ミニやミディのサイズを使った年もある。それぞれにメリットがあって、支持されていることがわかる。しかし、わたしにとっては、縦長のスリムサイズがベストだった。最近は、海外市場で販売されているスリムサイズを、ネットで購入して使っている。

ところで毎年、わたしはこの時期に米国に出張している。一昨年、ちょうど翌年の手帳を買ったところで渡航した。ロスアンジェルスの空港で、スリムサイズが売られているのを見つけた。昨年は、空港での購入を期待して、手帳を買わずに出張に出かけた。ところが、昨年利用したサンディエゴの空港には、ペーパーブランクスの手帳は売られていなかった。そして、今年。このコロナ禍で、出張自体がなくなってしまった。やむなく、また海外からスリムサイズを購入した。

そのことをTwitterでつぶやいたら、ペーパーブランクスの公式アカウントさんから、以下のような返信をいただいた。

つぶやいてみるものである。ありがたいことに、2022年の手帳は、英語版スリムサイズを国内販売してくださるようだ。海外からの購入だと、送料が馬鹿にならないので、とても嬉しい。販売は英語版とのことだから、日本語版が復活するのはまだ先になるかもしれない。

来年用に買った手帳のデザインは、Golden Trefoil。金の三つ葉。このデザインの説明は、以下のとおり(公式サイトの同デザイン製品の説明より)。こういった知識が得られるのも、このシリーズの好きなところだ。

本装丁は、ジョヴァンニ・ポンターノ(Giovanni Pontano、1426–1503)の『Opera Omnia』が収められていた16世紀のフランスの造本にインスピレーションを得て生まれました。ポンターノはイタリア中部出身の詩人で人文主義者であり、裸一貫の状態から身を起こし、ナポリのアラゴン王アルフォンソ5世が信頼を寄せる友人、そしてよき相談相手となりました。その著作は、結婚生活と子育ての喜びを表現していることで知られます。

Opera Omniaというのは、「全集」ぐらいの意味か。このジョヴァンニ・ポンターノについては全く知らなかったのだけど、ナポリの詩人だったとのこと。裸一貫から身を起こしたらしいので、あやかりたい人物だ。中世ヨーロッパの紋章には三つ葉のクローバーがしばしば登場する。三つ葉がキリスト教の「三位一体」に通じるためだ。ところが、装丁のデザインを見ても、どこがクローバーなのかはっきりしない。中世の紋章には王冠のフチなどにクローバーの意匠があるので、きっと同様に見える金色の飾りの一部が三つ葉なのだろう。

スリムサイズの手帳は、一週間が見開きのレイアウトになっている。簡単な予定を書き込む以外は、余白ができる。わたしはそこに、その日に見たものを記すことにしている。書店のポップ、他人のお洒落な持ち物、綺麗な夕陽、仕事で見た高品質な宝石やジュエリーなど。忙しい日常のなかで、ちょっとだけでも心が動いたものを記しておくと、意外と忘れないものだ。デジタルだと、どんどん流されて行ってしまって、何も残らないような気がする。

ペーパーブランクスでは、手帳のほかにも、iPadのカバーやペンケースなどが売られている。いろいろとデザインを揃えたくなるので、いつの間にかペーパーブランクス製品が増えてきた。

ちょっと暗く写ってしまった下の写真にあるのは、アールヌーヴォー調のデスクランプの側に、10年日記とペンケース、そしてiPad mini。そのiPad miniが入っているのは、これまたペーパーブランクスのeXchange。実はこのeXchange、使い倒してボロボロになったので、新調して二代目だ。タブレット用のケースまで昔の装丁風なので、デスクまわりに不思議と統一感が保てていて、気に入っている。

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わたしは宝石の鑑別をするのが仕事なので、完全なリモートワークは不可能だ。しかし今後、少しずつリモートワークが増えるかもしれない。その時に、少しでも好きなデザインに囲まれて仕事ができるのなら、とても嬉しいし、きっと効率があがる。ペーパーブランクスの製品を購入することは、そのための準備みたいだなぁと考えている。

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