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遠近レンズでメタとミクロの視点を得る?!〜メガネ遍歴追記編

前回のメガネ遍歴で、はじめてTheoのメガネを買った経緯を書いた。それは名古屋市名東区のおしゃれなメガネ店でのこと。そのお店の入口には木製扉があり、Blue Noteのロゴを模した看板があった。

2年ほど前、またTheoのメガネを買った。グリーンのTheoからさらに6年。所用で名古屋に赴いた際、やはりおなじBlue Note印のメガネ店を訪ねて注文したのだ(なお、このメガネ店については、別途くわしく書くのでお楽しみに)。

拙note「メガネ遍歴〜アイ・ラヴ・Theo」より

思わせぶりに書いていた「別途くわしく書く」のが、このエントリ。

◆◇◆

わたしが住んでいたのは名古屋市千種区の猫洞通。妻は大の猫好き。偶然とはいえ、この住所に住んでいたことには不思議な縁を感じる。猫のつく地名は全国的にも珍しい。

その猫洞通は、カフェや雑貨店、ベーカリー、ジュエリー工房などいろんな店舗がならんでいた。ちなみにそのジュエリー工房はケイウノさんの1号店。立ち寄ったことはなかったけれど、通勤途中にチラッとなかの様子に目をやったりしていた。ゆくゆく宝石関係の仕事に就くことがわかっていれば、あのときお邪魔したのだけど。

その猫洞通は、ときどきお店の入れ替わりがあった。2007年、わたしが住んでいたマンションの向かいで、あらたな店舗の工事がはじまった。

「今度はどんなお店ができるのかな」
なんて夫婦で楽しみにしていた。その工事中の店舗に取り付けられた木製の扉には見覚えがあった。

「あの扉・・・あのメガネ屋さんのとよく似ているねぇ」

そのとおり、まさにあのBlue Note印のメガネ店が隣の名東区から移転してきたのだった。これにはほんとうに驚いた。

そのBlue Note印のお店は”メガネのマキ”さん。目の前に引っ越して来てくれたおかげで、わたしも頻繁にお邪魔するようになった。実際に仕事の邪魔をしていたと思う。オーナーのマキさんとは、メガネのことはもちろん、音楽についても深い話をさせていただくようになった。

とくに、わたしが熱烈なファンであるトム・ウェイツ。マキさんは1973年のデビューアルバムから聴かれている大先輩。いま、ありがたいことに、わたしが描いたトムの肖像画を店内に飾ってくださっている。

わたしが名古屋を離れてモンゴルに移り住んでからも、帰国の際には立ち寄った。下のリンクは、そんな一時帰国の際に店内で描かせてもらったクロッキー。

このクロッキーに描いた道具類からも、マキさんの職人ぶりがうかがえる。実際、メガネの微調整後のフィット感などは、さすがプロだといつも感心している。

わたしが東京に移ったいまでも、名古屋に赴くことがあれば時間を見つけてメガネのマキさんを訪ねている。前回書いたとおり、Theoの遠近両用メガネを注文したのもそんな機会だった。

前回くわしくは書かなかったので、もうすこしこの遠近両用メガネのことを。

製品名はLuna Piena。満月を意味するイタリア語らしい。ネーミングの意図はわからない。遠近両方をカバーすることから、ニーズを”満たす”といったニュアンスなのかな。

以前にメガネのマキさんから送ってもらったカタログより、Luna Pienaのラインナップ全8色。

テンプル(ツル)のヒンジ部分にスプリングがある。装着時にちょっとひろげて、それから手を離す。バネのちからでやさしくこめかみを挟んでくれる。当たりがソフトで、じつに良い。

テンプルがレンズの真ん中を”貫通”しているフレーム部分の金属は横に平たい。この形状が、手で持つのにちょうど良い。レンズとレンズの間が出っぱっているので、レンズを下にしてしまっても、レンズが床に触れてしまうことがない。機能的にも優れたデザインだ。

左)テンプルをつまんだところ。扁平なので持ちやすい。
右)レンズを下にしても、中央の出っぱりがあるのでレンズが傷まない。

外から見ると、レンズの仕切り(貫通するフレーム)が邪魔なようにみえる。ところが眼のすぐ近くだと不思議と気にならないものだ。むしろ、メインのメガネ(上側のレンズ)の下側にも視野がひろがったような、ちょっと得した感覚。

このメガネをかけていると、
 「どう見えているの?」
 「邪魔じゃないの?」
などと、よく訊かれる。

その気持ちはわかる。わたしも自分がつかう前はそう思っていたから。

百聞は一見に如かず、もとい百見は一使用に如かず。快適すぎて手放せなくなってしまった。

この製品の何代か前の世代のものは、以前からマキさんが作業時につけられていた。もちろんTheoだった。

上下にレンズがわかれたように見える、レンズを縦に並べたデザインは旧モデルもおなじ。上に書いたように、わたしも真ん中の仕切りが邪魔にならないかと不思議だった。つかいやすいという話だったので、わたしも老眼がはじまったら試してみようかな、とふんわり考えていた。

その後そのメガネは廃番になり、丸いアウトラインの後継モデルが出た。たしかbi-cycleという製品名で、なるほど自転車の車輪みたいだと感心した。Theoらしい遊びゴコロがニクイ。しかしながら、わたしの顔にはその丸いフレームはあまり似合わなかった。

まだ遠近両用が不要だったわたしには、縁がなかったのだな。と、なかば諦めていたところ、Theoの四角い遠近両用モデルが復活した。わたしが買ったLuna Pienaだ。

40歳を超えると、身近なところで老眼の話題が出てくる。自覚はないけれど、そう遠くない未来に自分も必要になる。

2018年の夏にマキさんを訪ねた際、遠近両用の相談をした。視力検査は、定番の熱気球の画像を見る屈折力の測定。ぼやけた熱気球に焦点を合わせていくと
 「ついてくるねぇ」
とマキさん。老眼鏡はまだ必要ないとの判断だった。

そういうわけで、そのときは遠近両用メガネはつくらずじまい。

わたしの仕事は宝石の鑑別。いつも暗いなかで顕微鏡を覗いている。仕事がら、眼がいつも疲れる。

2年前に名古屋へ赴いた際、いつもどおりメガネのマキさんを訪ねた。
 「さいきん眼精疲労がつらくて」
とこぼしていたら、あらためて視力検査をすることになった。

どうやら老眼が出てきてメガネの度数が合わなくなってきているとのこと。仕事のせいだけではなかった。

そういうわけで、ついにわたしも念願の遠近両用デビュー。前回のnoteで書いたように、度数を決めてLuna Pienaをオーダーした。

2本目のLuna Pienaといっしょに届いたものがある。大判のメガネ拭き。たまにこうしたサプライズがあるのがうれしい。

カラ拭きするとプラスチック・レンズのコーティングがはげてしまう。だから汚れは中性洗剤のあと水で流してティッシュで拭きとるように、とマキさんからメールがあった。この大判メガネ拭きはどう使おうか。

Theoウェブサイト(下記リンク)のオンラインカタログ(?)をみると、メガネ拭きのケースにある「Shape Your Upstream」と書かれたページがあった。

Theoのカタログのスクリーンショット。

タングラムのピースのならびはメガネ拭きのものと違っているけど、7つの要素を組み合わせるコンセプトは変わらない。魚の形になっているのも変わらない。

「上流を形作る(Shape Your Upstream)」のだから、魚の向かう先が上流なのか。サケの遡上みたいだな。

7つの要素は、「驚き(surprise)」「霊感(inspire)」「表現(express)」「遊び(play)」「傑出(stand out)」「創造(create)」そして「愛(love)」。

これらはTheoの製品コンセプトでもあるという。先頭に「驚き」があって泳ぎを推進する尾ビレが「愛」というところが、Theoらしい。

これらの要素は、だれでもどこかに持っているヒトに必須の要素。日常生活、社会生活に追われているとおろそかになってしまうものもある。いまいちど、ヒトに必須の要素(=源流)を見直そう、つくり直そうということなのかもしれない。

そうしたときに、Theoはすでにこれらをコンセプトに製品づくりをしていますよ、ということか。あいかわらず上手いな。

◆◇◆

ここまでnoteを書いていたら、マキさんから修理が終わったとの連絡があった。noteの公開は翌朝にしようかなと寝かせておいたら、その翌朝にメガネが届いた。だからここからは加筆部分。

工場での再塗装は一色になってしまうとのことだったので再塗装は断念。純正のタッチアップカラーもないとのこと。
そのかわりマキさんが暗めの色で目立つ部分を補修してくださった。感謝。

通常は下地処理が必須とのこと。脱脂処理のあとプライマー処理というものをするらしい。しかし脱脂処理をすると、処理部分が余計に広がってしまう。そのため、部分脱脂にしてくれたということだった。

あくまで一時的な処置なので時間の問題とも。メーカーにも問い合わせてくださって、「中性洗剤でこまめに洗ってください」とのアドバイスだった。

新品のブルーのほうは、中性洗剤で洗うようにしてみよう。

Luna Pienaは、上下でことなる度数のレンズを入れるタイプの遠近両用メガネだ。

 「どう見えるの?」
と訊かれると、わたしはよく
 「現在と未来が見える」
とか
 「売値と卸値が見える」
とか
 「建前と本音が見える」
なんて冗談を言っている。

冗談はさておいて、遠近両用メガネは、遠近の”遠”のほうで全体像をメタに捉えて、”近”のほうで細部をミクロに観察するような、そんな感じがしている。

このメガネは、Theoの”Shape Your Upstream”のキャンペーン前からある製品だ。だけど、なんだか7つの要素それぞれと魚の形全体を見るのに通じてるなぁなんて思える。

多忙さに追われて心の余裕を見失ってしまいがちな毎日。仕事も趣味も日常生活も、ちょっと余裕を持って眺めてみたら、つまりTheoの7要素を意識したら、案外楽しく見えてくるのかもしれない。

修理からもどったLuna Piena1号(左下)とあらたに買った2号(右上)をならべて記念撮影。


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