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2年ぶりの「子猫が来た!」

早くもあれから2年近くが経とうとしている。あれヽヽというのは、我が家に保護猫の兄弟アズキとモミジがやってきた時のこと。

それは保護猫の譲渡会経由の成り行きだった。

その前、今から7年前には眼も開いていない赤ちゃん猫の姉妹ミューとモカを保護していた。だから、我が家では4匹の猫たちが暮らしている。

で、表題と見出し画像にあるとおり、現在さらに2匹の子猫を保護している。つまり現時点では6匹の猫たちが我が家にいるというわけ。ヒトよりも猫が多いなんて、いつの間にか立派な猫屋敷になってしまったものだ。

ことの顛末は、およそ1ヶ月前。

入浴中の次男からインターホンでリビングに通話があった。「なんか猫の鳴き声がする」と。すかさず4匹の猫たちの所在を確認した。

「番号はじめっ!」
「にゃー」「にゃー」「にゃー」「にゃー!」
という具合にはいかないけれど、みんなそれぞれの定位置でくつろいでいるのを確認。それでもまだ浴室では外から猫の声が聴こえるという。次男坊がお風呂から上がった後、家の周囲をぐるりと一周探してみた。

「あっ、猫!」
塀をこえて出ていく野良猫。子猫を連れていたのかどうかは確認できない。

ところがその後も子猫の声が聞こえる。しかし声はすれども姿は見えず。

ふたたび外の様子を見にいくと、なんとエアコンの室外機の下に子猫1匹を発見!すかさず保護した。さっき塀を越えていったのは母猫だろうか。

保護してすぐに洗われる子猫A

野良猫はだいたい複数の子を出産し、連れ立って行動する。だからこの子1匹だけというのは考えにくい。はぐれてしまったのだろうか。7年前に軒先で保護したミューとモカも、親猫に置き去りにされていたんだった。保護した後、すぐ近所で親猫ときょうだい3匹が見つかった。

子猫Aを保護してから1週間後、また夕方に子猫の鳴き声がした。こんどは窓を開けていたからすぐにわかった。別の子猫を連れて、あの時に塀を越えて逃げていった母猫がやってきた。妻と次男坊が咄嗟に外に出て、子猫を保護した。

左:母猫と思しき成猫、右:保護された子猫B

その際に妻は指を咬まれて流血。念のため病院へ。子猫とはいえ野良猫に咬まれたので狂犬病ワクチンが必要ではないかと思ったけれど、医師は必要ないと言う。ここ10年ほど国内では発症例がほとんどないので、そしてそもそも犬ではないからという理由で、ワクチンは破傷風だけになった。それに狂犬病ワクチンは動物病院にしかないとも。それって本当なのだろうか?

わたしがアフリカや中東に渡航した際には、野生生物との接触の可能性を鑑みて狂犬病の予防注射を受けていた。だから今回のこの温度差にはずいぶん驚かされた。わたしの時から時間も経っているし、海外渡航とは状況が違うのかもしれない。けれど国内の認識に甘さを感じ、その防疫態勢にはちょっと疑問を感じてしまった。

閑話休題、子猫たちの声が聞こえるのか、その後しばらくは連日母猫が通ってきた。塀の上あるいは我が家の敷地内で鳴いている。我が子を返してほしいと言っているのかもしれない。

このあたりにはけっこう野良猫がいて、餌付けしている家庭もあり、ちょっとしたトラブルの話も聞く。市が支援する地域猫活動もある。

地域猫活動というのは、野良猫を捕獲して不妊・断種手術を施してリリースする活動。そうして繁殖しない猫たちを地域の猫として世話しようというわけだ。完全に駆除するのではなく、ヒトと共存することで地域での問題を軽減する方策。賛否の意見はあるけれど、地域社会の最適解として定着している妥協策だ。

妻が保護猫団体と動物病院と連絡をとり、母猫の捕獲を試みることになった。

この様子ではまだまだ子猫が生まれ、さらに1年もしないうちに次の世代も生まれるだろうから。そして連日来ている母猫も不妊手術を受ければ来なくなるだろうとの予測もあったから。

動物病院からのその理由を聞いて、ちょっと複雑な心持ちがしたのは事実。妻も葛藤はあったはずだけど、2年前に地域猫活動に賛同する署名をして保護猫を譲り受けた経緯もある。保護した子猫たちを野良に返すわけにもゆかないし、ここは母猫とも地域猫として付き合うしかないのではないか。

そうして捕獲用の檻を借りてきて軒先に設置してみた。保護施設の話だと産後の母猫は警戒心が強いからすぐにはかからないかもしれないということだったからダメもとで。

・・・ところが設置からものの数十分でガチャンという音が。拍子抜けするぐらいに簡単に捕獲できてしまった。母猫はよく見ると確かに子猫たちに似てるかも。

捕獲された母猫さん

夜だったけれど保護施設に電話。親猫はその日のうちに手術されることになった。そして翌日には引き取り&リリース。

我が家のミュー&モカ姉妹は泊まりがけ入院での手術だったから、このスピーディさには驚いた。ペットではなく野良という差もあるだろう。ヒト社会と同じように存在しているネコ社会の格差。これもまた喉に刺さった魚の小骨みたいに心の片隅に引っかかっている。

さて、保護した子猫たち。ただでさえなかなか仲良くなれない我が家の4匹にくわえて、果たしてうまく行くのか。とくに先住猫のミューとモカにはこれ以上ストレスをかけたくはない。

そういうわけで、里親を探すことにした。子猫のきょうだい2匹セットでの飼育が条件。わたしも妻もそれぞれの職場で、子供たちは学校で希望者を募ってみたけど、なかなか色良い返事は返ってこない。

わたしの同僚からは2名、反応があった。1名は外国出身者のため長期間留守にすることがあるのがネック。もう1名は他の小動物(モモンガ)を飼育しているのが心配。モモンガさんのほうは実家でも関心を示してくれたそうなのだけど、遠方なのと、2匹セットでの飼育は難しいとのことで、どちらも譲渡には至らなかった。

そうして時間が過ぎ、子猫たちの猫エイズ検査もワクチン接種も終了した。要件を満たしたので保護猫団体の譲渡会に参加させてもらえることになった。

この週末、子猫たちは妻によってゴマとミソと名付けられ、会場の動物病院へ向かった。

譲渡会用に急遽描いた子猫たちのスケッチ。余白部分に名前や性別、月齢、ワクチン接種状況などを記載した。譲渡会に出た妻によれば、このイラストも好評だったとか。ありがたい。

譲渡会に赴いた妻の話によると、ほかにもたくさんの保護猫が集まっていたらしい。同じくらい、生後2ヶ月ほどの子猫はもちろん、もっと月齢・年齢のいった猫たちもいて、それぞれに里親希望者がいたようだ。

ゴマとミソには4組ほど希望者があったらしい。保護団体が里親の適正を審査する。次の譲渡会が2週間後にあるので、それまで待って里親の選定があるかもしれない。ベストな里親が決まってほしいと思う。

子猫たちの母猫に話を戻す。捕獲して不妊手術を施したあと、酷い目にあったのだからもう我が家には寄りつかないものかと思っていた。しかしそれでも変わらず我が家に姿を現した。

保護団体のかたは、母猫はお乳が張ったりといった生理的な反応で思い出してやってくるかもしれないけれども、術後はそれもすぐに忘れて来なくなるものだと話していた。だからもう来ないものかと思っていた。そんな矢先に、その母猫の姿を見られたのは意外だった。しかも複数回。

あるとき、その母猫と一緒にもう一匹、別の猫が来ていた。

それはこの界隈でのボス猫かと思われるオス猫だった。人懐っこい性格で、物おじせずヒトに向かってなにか話しかける。そのオス猫はこれまでもしょっちゅう姿を見せていた。このオス猫、我が家ではなぜかマメと呼ばれていて(これも妻による命名)、イッパイアッテナではないけれど、近所でいろんな名前で呼ばれているようだった。

我が家の玄関先に現れたマメ氏

マメには餌付けしていたつもりではないのだけど、ときどき余っているキャットフードを与えていた。だからなのか、たまにフラッと我が家に現れることはあった。通勤途中に見かけることもしばしばあった。その行動範囲はかなり広く、その風貌からも界隈のボスなのは明らかだった。

そのマメが子猫たちの母猫といっしょに現れたのだ。

もしや子猫たちの父親なのか?きっとそうなのだろう。「この家は美味しいご飯をくれるから安心できる」そんな会話があったのかもなんて妄想してしまう。

子猫2匹を保護してからもなおやってくる母猫。いったん捕獲されて不妊手術までされたにもかかわらず、直後に夫婦同伴で現れる母猫。偶然かもしれないけれど、何らかのメッセージを伝えたかったのでは、なんて考えてしまう。

近所には野良猫に餌付けしている家がある。ほかに空き家になっている家屋が2軒ほどあって、そこをねぐらにしている野良たちもいる。野良猫に罪はない。餌をくれるところに行き、空き家を塒にするのは彼らの生存戦略だ。

いっぽうの地域猫。人間社会の都合による猫社会への干渉は、じつはヒトのエゴでしかない。上に書いたように、これはわれわれヒトが繁殖力の強い猫と共存するための妥協策だ。

縁あって我が家で飼っている猫たちは、野良猫・地域猫とは別の存在だ。いっぽうマメと保護した子猫たちの母猫は野良猫・地域猫。猫だからというだけで情をかけてしまいがちだけれど、ペットとして家族に迎えた猫たちに対する責任として、きっぱり線引きする必要があるのではないか。

我が家で話し合い、余っているキャットフードを野良猫に与えるのをやめようということになった。野良猫たちは彼らなりに生きるすべを確立しているのだ。

子猫たちを里子に出すまで、まだ少しある。もちろん譲渡会で里親が決まる保証はないので、どうなるのかわからない。子猫たちはおもに妻が世話をしていて、わたしは意図的に距離をとっている。もらわれるまで、せめてもうちょっと子猫たちのスケッチでも描いておこうか・・・と思っている。

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