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ウエスタン北山珈琲店

2020年3月19日。ウエスタン北山珈琲店に行ってきた。珈琲好きとして前から気にはなっていたが、お店の噂(マスターが怖い、ルールが厳しいなどなど)や場所がやや行きづらいこともあって何となく行けないまま..

職場が近くなったこともあり、誕生日だからという言い訳も利用してついに来訪。お昼休みに開店時間ちょうどに到着。

お店の扉には「事務、読書、商談、その他待ち合わせ等、珈琲を味わう事以外でのご入店はおことわり致します。30分を過ぎての滞在もお断りいたします」という貼り紙が..

これは緊張する.. 何となくお店の前で5分ほど待って心を鎮めてからドアを開ける。ドアの前には「珈琲が主役の店です」の立看板。ゴクっ..

開いてますか?とマスターに声をかけると、店構えのイメージから掛け離れた柔和な顔で、優しく「看板の注意はお読みいただけましたか?」と。
「はい」と答えると、「どうぞどうぞわざわざお越しいただきありがとうございます」と丁寧な挨拶。勝手に無口で強面のマスターを想像してたけど、優しい声と笑顔。どことなく加藤一二三さんみたいな印象。

ほっとして席に座る。薄暗い店内には焙煎機やコーヒーの麻袋が所狭しと点在している。コーヒー好きには心地よい空間。

メニューはストレートからブレンドまでいろいろあったが、下調べしていた「雅セット」を。
ホットの雅ブレンドと、雫というアイスの液体?(後で詳しく)のセット。なんと3,700円。
高いと思うかどうかはあなた次第。
とはいえ、妻にバレたら頭をしばかれる値段笑

注文後は携帯も読書も禁止なので、店内を見渡したり、考えごとをしたりする。クラシックが流れる静かな店内。最近、こんな時間はないから貴重。iPhoneをいじらない時間。
店内にはいくつかコーヒー色に染まり変色した張り紙がある。
・半可通、俄か鑑定士はかたくお断りいまします。通ぶってメモ書きなどせず..(以下読めず)
・珈琲の味のみでご贔屓いただければ幸いです
など。

これだけ見ると、何て怖いんだろうと震えるけど、ルールが明確にあるので、ルールを守っている限りは自由でいられるんだなあとか考えていた。カフェに限らず世の中はそうなのかもしれない。何の逆鱗に触れたかもわからないうちに怒り出す親父さんとかそういう店もあるし(それはそれで嫌いじゃないけど)

今日の午前中に仕事で4月からの昇進が唐突に言い渡されたので喜びを噛みしめるというか、今まで辛かったこととかを走馬灯のように思いだしていた。またなんか良いことあったらここに来ようかな。

10分ほど待って珈琲が出てきた。雅ブレンド。
ミルクと砂糖。それとコーヒークリームの横に削った氷が(後々思うとクリームが固まらないために冷やしてあったのか)

「前半はブラックで、お好みで後半は砂糖を加えた甘い珈琲をお楽しみください」とテーブルに書いてある。美味しいコーヒーは必ずしもブラックじゃなくていいということかな。

雅ブレンドをいただく。深煎りのネルドリップで濃厚な液体。言ってしまうと濃すぎるんだけど、まろやかさと重さがあるけど、嫌な味がほとんどしない。奥に感じるほのかな甘さ(味覚ではなく錯覚に近いとコーヒーの科学で読んだような)舌に残る余韻が心地よい。苦すぎて痺れたりが全くない。ごちゃごちゃ書いたが、ふつうに美味しい。素人なりにもコーヒーの抽出を趣味にしているが、このコーヒーと同じ味を抽出しろと言われて僕にはできない。単純に濃いコーヒーは淹れられるけど、「濃すぎてなお美味い」は本当に難しい。爆音だけど心地よいバンドがそんなに存在しないように。

残り半分は、おすすめどおりに砂糖を入れて飲んでみる。苦さの角が取れて飲みやすくなる。確かに砂糖入れても美味しい。さらに残り半分になったところでクリームを。かき混ぜずに浮かべて飲んでという注釈を守りながら飲む。砂糖やクリームの甘さでベースのコーヒーが美味しいが際立つ。

飲み終えたところで、取手のない小さなカップに入ったコーヒー色の薄い液体がでてくる。
「お口直しにどうぞ」と。
雅ブレンドの濃厚な余韻を楽しみたいから水を飲まないでおこうと思っていたけど、これなら余韻を邪魔しない。コーヒーを楽しむためのマスターの丁寧な心遣い。

そして「雫」が登場。小さな小さなカクテルグラス🍸のようなもの(15ccぐらいかな)で提供される。冷たい液体。少量の濃厚な珈琲の上に、クリームを浮かべられている。いわゆる琥珀の女王のデミタス版みないな感じ。
これが普通に美味しい。めちゃくちゃ甘いんだけどエスプレッソのようなコーヒーを凝縮した美味み。冷たくて少量というバランスで成り立っている気がする。

飲み終わって時計を見て25分ぐらい。残りの時間は余韻を楽しむ。たしかに安くはないけど、とても贅沢なコーヒー体験だった。
コーヒーは本当にいろいろあって、これからもその多様性を楽しみたいなあと改めて思った。

お会計をすると、マスターがまた柔らかい笑顔で深々とお辞儀をしてくれた。

かっこいいなあ。全てのルールは美味しいコーヒーを飲むためのものなんだろうなあ。マスターとお客さんが協力してはじめて一杯のコーヒーがでてくる。まさに珈琲が主役のお店でした。

#コーヒー #ウエスタン北山珈琲店





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