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毒親ママの駆け込み大掃除Part2

 続きます。


 赤いランプが目に留まった私は、早速掃除機本体のふたを開けて紙パックを取り出すことにした。あの忌々しきゴミと私が判断したものたちが、ぎゅっと一つに詰め込まれた袋だ。私の心は潔癖症であることを忘れ、それがどうなっているかばかりが気になっていた。
 カパッと掃除機本体の蓋を開けると、早速中からパンパンに膨らんだ紙パックが出てきた。興味本位に指でつついてみると、たんまりホコリが入った紙パック特有のふわふわとした感覚が指先を襲う。

(大量に吸ってやったことだし、まあこうなるのは当然よね。)

 私は尚もその感触を楽しみながら、ホコリが舞うことの無いよう、慎重に掃除機から紙パックを取り出した。

(中身はどうなっているのかしら。吸い込んでやったあのカードも中にあるはずだわ。)

 私は恐る恐る紙パックの中を覗くことにした。本来であれば触るのも嫌なので、いつも紙パックを交換するときは必ずゴム手袋をして、直接手で触らないようにしながら素早く交換を行う。ただ、今回はいつもの気分ではなく、ふと興味がわいてしまったのだ。
 そうしてそっと覗いた紙パックだったが、私は少し驚愕した。

(うわッ!なんてホコリなの!!)

 少し力を入れて取り外した紙パックは、外すや否やあふれんばかりのホコリが穴から飛び出しそうになっているのが見えた。かすかに見える丸まったものは、先ほど吸い取ったカードの残骸だろう。もはや小さくしたスポンジなど、奥底に消えてしまっている。

(なんて汚さなの!こんなものすぐに捨てないと!!)

 私の中に先ほどまで存在していた好奇心のようなものは一気に消え失せ、すぐにゴミ袋の中に紙パックを突っ込んだ。あまりのものに触ったゴム手袋まで一緒にゴミ袋の中に放り込み、私はそれを急いで結び、下の階に捨てに行くことにした。先ほどの部屋の散らかりを作り出していたゴミも入っているごみ袋だということもあり、エレベーターに乗っている最中も、一刻も早くこのごみ袋を捨てたいという衝動に駆られるだけで、一緒に捨てられるこれまで颯太が大切にしていた物の存在など、私の頭の中には一ミリたりとも浮かぶことはなかった。
 あまりの衝撃に、家に戻ってきても私の心はイライラとも違う不思議な感覚に陥っていた。いつもの散らかしている颯太の部屋を見たときとはまた違うようで、似ている感覚に襲われていた。ただ、一つ私の心の中で確定していることはある。

(徹底的に掃除機で吸ってやる。あんな汚い紙パックになっているなんて思ってもみなかったわ。今度はしっかりとホコリだけじゃないいろいろなものを吸い取って、中身を覗けるくらいの汚さにとどめておかないとね。)

 とにかくこの時私は、今日一日で掃除機の紙パックをもう一度いっぱいにすることを決心した。

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