蝶と夢

蝶が舞っている

ように見えたのは
レースのカーテンにあたった
朝の光のせい

カーテンがゆれる
開けた窓から
海まで降りてゆく風が
私の部屋を通ってゆく

目を覚ました布団の中で
ぼうっと
窓の外を見ている

夢を見ていた
どんな夢かは
思い出せない

思い出せないけれど
夢を見ていたことだけは
覚えている

「すずめ〜、起きた〜」

間の抜けた
いつもの声が
階下から届く

「おきた〜」

布団の中から
間の抜けた声で応える

目を開けて
窓の外を見ている

山から海まで降りてゆく風が
レースのカーテンをゆらし
カーテンがゆれるたびに
朝の光が部屋の中でゆれる

蝶はもう舞っていない

私は布団から起き上がり
制服に着替える

そして
いつもの朝がはじまる

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