ゆたうた

12月生まれ AB型

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塩イワシにスダチを添えて

「銚子のイワシが美味しいよ」 魚屋で声をかけられた 型は小さいけど脂のノリが最高だよ 息子ぐらいの年齢の店員さんに勧められて 三匹購入した さてどう食べよう 小さな魚は すぐに温かくなってしまうので 刺身にするのが難しい 野菜室にスダチが入っていたので マリネっぽくしてみようか ボウルに 親の仇のように塩を投入 氷と水を入れて 濃い塩水を作る 小さなイワシを 慎重に手開きしていく 若い店員さんの言う通り すごい脂だ 手開きして皮を剥いた 小羽イワシを塩水に

    • 神の声を聞いた

      『今日いいことがあったら お主の前に姿を現そう』 声はそう言った 『あなたは?』 と問うと 『私は神 早起きの神だ』 (『早起きの神』ってなんやねんっ!) って思いながら目が覚めた 今朝見た夢のハナシ なので今日は何かいいことが起きないか ワクワクしている だって神様の姿って見てみたいじゃん たとえそれが『早起きの神様』であっても って仕事場のミキちゃんに ランチの時に話したら ケラケラと笑った 「で、いいことあったの?」 って聞くから 家を出たトコ

      • あなたの誘惑に勝てる気がしない

        冬の朝 あなたの誘惑に勝てる気がしない まどろみのベット 目覚めなければいけないと 頭ではわかっている しかし この寒さ ベットから起き上がる 勇気が湧かない 掛け布団のぬくもりが 勇気を砕く あなたの誘惑に勝てる気がしない

        • 冬のたのしみ

          背筋をピンと 伸ばした 冬の空気と すれ違った 橋の上で 今 背中を丸めて歩く 人々の中にあり 空気だけが ピンと背筋を伸ばしている 特に夜 冬の空気は まっすぐに 起立している まばたく星たちの瞳に 背筋を伸ばし 空を見上げて 語りかける 冬の空気 口を出た その言葉は 湯気となり すぐにとけてしまうが 飽きもせず 星星と 語り合う そんな姿を 冬になるたび 想像して たのしむ

        塩イワシにスダチを添えて

        マガジン

        • さかなを食べよう
          18本
        • 木の話草の話
          21本
        • スキなハナシ
          8本

        記事

          昼間の冬の陽

          昼 冬の陽射しが ゆっくりと街に降ってくる 街路樹の 黄金色のイチョウの葉の上に 植え込みの 灯台躑躅の赤い葉の上に 道路に吹き溜まった 桜の落ち葉の上に 冬の日光が ゆっくりと降ってくる ゆっくりと降ってくる 光の中にいると 時間までもが ゆっくりと過ぎてゆくように 錯覚してしまう 冬の陽の光の中 過ぎてゆく この時間はうたかた

          昼間の冬の陽

          昔から旅をしていたんだ

          はるかはるか昔に ボクは生まれた 当時は国と国の境界線が とてもゆるくて 人びとは歩いて 世界中を旅した ボクも世界中を 旅した 砂漠を越え 山脈を越え 海を渡り いろんな国の人びとに 声をかけられた 最初は何て言われてるのか わからなかったけど その国の言葉を覚えるのに そんな時間はかからなかったさ その国の人びとが ボクを愛してくれたからね 愛があれば 言葉の壁なんて 軽々と越えられるんだって その時わかったよ いろんな国に行ったさ 今で言えば イタリア

          昔から旅をしていたんだ

          あれの呼び方と自分の守り方

          あれつけてよ もう上着を脱ぎはじめた 彼に言う あれ? あれってなに? とぼけた感じでいう わかってるくせに コンドーム 尖った感じに聞こえる ゴム 少しマイルドな感じ 避妊具 問題外 スキン 語感が冷たい感じ フレンチレター 彼に通じるか? 一瞬考えて ゴムつけてよ って言う つけないほうが気持ちよくない? 言うと思った こどもができたらどうするの? ふたりで育てよう はぁ?アホなの? もういい! って立ち上がる ウソウソウソ!つける

          あれの呼び方と自分の守り方

          夜猫

          酔いどれ 夜猫 夜道を 横切る 夜の 横丁 宵っ張り 夜猫 他所行き 夜着の 様子 よよと 横切る 夜の街 夜猫 どこゆく 余を置いて

          蝶と夢

          蝶が舞っている ように見えたのは レースのカーテンにあたった 朝の光のせい カーテンがゆれる 開けた窓から 海まで降りてゆく風が 私の部屋を通ってゆく 目を覚ました布団の中で ぼうっと 窓の外を見ている 夢を見ていた どんな夢かは 思い出せない 思い出せないけれど 夢を見ていたことだけは 覚えている 「すずめ〜、起きた〜」 間の抜けた いつもの声が 階下から届く 「おきた〜」 布団の中から 間の抜けた声で応える 目を開けて 窓の外を見ている 山から海まで

          箱の中身

          箱は何のためにある? しまっておくため? 閉じ込めておくため? 数年前 東京に出張した時の話 駅前に ポツンと 箱が置いてあった よく見ると 箱ではなく 奇妙な建物だった それはブロックを積み重ね コンクリートを塗りたくっただけの 塊に見えた 小さな窓がポツポツとあるが 扉らしい扉がなかった 扉が最初からなかったわけではなく 扉があったと思われるところは ブロックが積まれ コンクリートで塗り固められていた 最初は雑居ビルとして 建てられたのだろうが 扉を塞いで 大きなコ

          箱の中身

          アリとキリギリス

          「夏に散々バイオリンを弾いていたんだから 冬になったら踊っていればいいじゃないか」 アリはそう言って家の扉を閉めました キリギリスは アリの家の扉を しばらく見つめていました 北風が キリギリスの背中の後ろを 通り過ぎていきます キリギリスは 高い空を見上げます そこにはもう あの入道雲の姿はありません キリギリスは その場に崩れ落ちました キリギリスの目には もう空は 見ることができませんでした すると アリの家の扉が開いて アリが五、六匹出てきました 「

          アリとキリギリス

          庭先の油田

          そんなことはわかっている 原石を磨けば 全てが宝石になるわけではないし 果たして 自分の中に 原石が存在しているかどうかさえ わからない つまりは そうだ 才能がないのだ ちょっと 庭先を掘っただけで 石油が溢れて出るような 才能の人もいる (少なくとも 自分にはそう見える) 自分の庭にも 金鉱脈か何かがあって 掘りさえすれば 金塊が埋まっていると思っていた しかし いざ掘ってみたら 何も出てきやしない もう随分と 掘り進めてきたつもりだが 金のキの字も出て

          庭先の油田

          夜空に登場した月の色をみて思うこと

          何かに似てるな 昇ってきた月の色を見て 頭の中で 色々な画像を検索した hitした画像は ハウスみかん この時期ならば極早生だ 極早生のハウスみかんの月のぼる 下手な句が ぽっと出てくるほど オヤジになってしまった 暦の上ではもう秋だが 宵の口の空気はまだ熱く じっとりと重い 帰り道 夜空に登場した ハウスみかんを眺めながら 何か思い出しそうな 雰囲気になったが 残念 あの月の色に関する思い出は 頭の中に保存されておらず ちょっと気まずくなったので 鼻歌で月の歌を

          夜空に登場した月の色をみて思うこと

          坂の上に住む

          坂の上に住んでいる 物心ついた頃 住んでいたのは 坂の上の団地だった 小学生の頃 引越したのは 坂の上のマンションだった 高校の頃 もう一度引っ越しをする それも坂の上の平家建てだった 大学生になって 一人暮らしを始めたのは 坂の上のアパートで 就職をして 引越した社宅も 坂の上にあった それぞれの家から 見下ろす風景は 今では心の原風景になっている そして 結婚して 住み始めたのは 坂の上の一軒家 つくづく 坂に縁のある人生だ

          坂の上に住む

          バンザイ

          雨の降った翌日 庭の草木が みんなバンザイしてる 地面に染み込んだ 雨水を一気に吸い込んだ草木が 昇ってきた朝日に バンザイしている バンザイ バンザイ バンザイ 万歳三唱 手をいっぱいに広げて 生まれたばかりの朝を 喜んでいる

          バンザイ

          空蝉

          からっぽがいいと思った なんにもない からっぽの がらんどう そんな 人生が いいと思った 雨に打たれれば ただただ濡れて 風に吹かれれば ころころと転がってゆく そんな 人生が いいと思った 人間だから そんなふうには 生きられない 朝起きて 食事をとる TVのニュースを 横目に見て まゆをひそめる 人間だから 社会とのつながりを持って 生きていかなければならない くるしい 仙人は 霞を食べて 生きている という話を聞いて うらやましいと 思ったものだ