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地球の始まりと共に説明しなければならない

不思議な夢をみた。


私は私の家のベッドの中で、女の子と一緒いる。相手が誰かはわからない。

いざ「その時」がきて、私は箱から避妊具の入った包みをひとつ取り出す。中から避妊具を出すと、それは半世紀以上前に製造されたものであるかのように朽ち果てていた。もちろん、これでは使い物にならない。

箱の中からもうひとつ取り出して中身を確認してみるも、こちらも同じ。最後のひとつに一縷の望みを託すも、これもやはり朽ち果てていた。

私はそこで、彼女との性交渉を諦める。


「なぜ香水の道に進んだか」と尋ねられた際、私はいつも「どこから話し出すべきか」について考えてしまう。私が下した決定というのは、その決定を下した時点での私によるものであり、つまりはその時までに私を構成するのに寄与した全てのものによっていると言える。そのように考えると、宇宙の誕生までは遡る必要がなくても、地球の誕生あたりから話を始めるべきなのかもしれない。水ができ、地上に植物が生え、水中に動物が登場し、それが地上に上がり、恐竜が生まれ、滅び、人類が生まれ、今のところまだ滅びてはいないが、愛し合ったり殺し合ったりしながらなんとかその数を増やしていることが、私の「香水の道に進む」という決定に、「全く影響を与えていない」と、どうしていえるだろうか。

このように考えた時に、ある行動や感情の正当性や理由を、その瞬間や少し前の事象だけで判断することはナンセンスだといえる。マグマに覆われた地表やティラノサウルスの縄張り争い抜きに議論をすることはできないのだ。

だから私は、私の感情の正当性を主張することを放棄するし、皆様においても私がその感情を抱いたことの妥当性を判断しないでいただきたい。もしそれでもそれをすることを望むのであれば、地球の誕生から順序を追って説明してほしい。


冒頭の夢は、ここ最近の恋愛に対して非常に消極的である私の心情をよく表しているように思う。

少し前に、こんなことがあった。

ある女性とメッセージのやりとりをしていた。友人からの紹介された人で、一度その友人も含めて何人かで会ったことがある。

それは「紹介」という性質上、当然ながら、多かれ少なかれ背景は「恋愛」という舞台装飾がなされていた。

ただ、魅力的だとは感じていたものの、私は結局のところその人のことがまだよくわからず、一度ふたりで会うことを提案し、相手もそれを受け入れた。

その女性のスケジュールが読めないこともあり、私たちは少し先の「この週のどこかで会おう」というざっくりとした約束を取り付けた。

当該週の火曜日あたりだったと思う。その人から連絡がきた。

「今私、旅に出てるの」

その時はこのメッセージの意味がよくわからなかったが、その後の2、3のやり取りで、私は彼女が私に会うつもりのないことを悟った。その少しのやり取りの中に、彼女は「ごめん」の一言も、会うつもりのないことへの明言もなかった。

私は私が道端に捨てられて足で捻り消されたタバコの吸い殻になったような気分になった。こんなにもひどく侮辱されたことはないように感じた。

私はその場で彼女の連絡先を消去した。


この出来事以降、私は、「恋愛をしてもどうせまた私がタバコの吸い殻になってしまうだけだから」と考えるようになった。そう考えるようになってから、すでにいくつかの季節が過ぎ去った。

それでも一時期はその記憶を払拭しようと試みた。それがうまくいかなかったのは、あるところまで行くとどうしても「タバコの吸い殻」になった自分を見てしまうからだった。冒頭の夢のように、朽ち果てた避妊具を前に、それ以上は前に進めなくなってしまうのだ。


私はこの文章で、当該女性を責めるつもりも、私の感情の是非を問うつもりもない。彼女の「今旅に出てるの」というメッセージだって、もしかしたらカンブリア紀か白亜紀あたりにその“正当な”理由があるかもしれないし、客観的に見たら私の恋愛に対してのこの消極的なスタンスだって「たったそれだけのことで嫌気がさしちゃうの?」と思われるかもしれないが、そう私が感じてしまう理由が、きっとカナダのバージェス頁岩の中からひょっこり発見されるのだ。それに、そもそも私の感情に至っては、それが「生まれるべきかどうか」という次元の話ではなく、「生まれてしまった」ものだから致し方ない。


私はこれを書くことで、もしかしたらその朽ち果てた避妊具の呪縛から私が救われるのではないか、と思っている。その可能性は限りなく低いが、いつまでも朽ち果てた避妊具を前に絶望するべきではないことは、私とてなんとなく理解している。何かできることがあるのであればとりあえずやってみよう、と思って書いてみた文章がこれだ。

書いてはみたが、今のところ私が救われる兆しはない。引き続き、恋愛によってタバコの吸い殻になる自分を見ないようにするため、それを避ける日々が続くだろう。ただ、いつの日か、もしかしたらそれは思いの外先の話になってしまうかもしれないが、私は私自身を、恋愛というニュアンスの人間関係の中に再び見つける日がくるかもしれない。


その時私は、どんな夢を見るのだろうか。

もし私に夢を選ぶ権利があるならば、その夢の中で私は、ゾウの背中に乗って、誰にも邪魔されずにゆっくりと、草原を散歩していたい。そこには隠喩も暗示もなく、ただあたたかさと心地よさのみが存在していてほしい。



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