見出し画像

旅行の価値

日曜日の朝、私はいつも通り4時半に起きて前日書き上げたnoteを投稿した。

歯磨きをした後、洗濯機を回しながら台所を片付けた。いつもならnoteの執筆に充てる時間だが、その朝私はつらつらと考え事をしていた。

今日、遠出をするべきか否か…


出張ばかりしている私のことを知っている方からすると意外に思われるかもしれないが、私は今まで、あまり旅行に価値を見出してこなかった。国内、海外合わせても学生時代にいった旅行は片手で数えられるほどだし、フランス生活を始めるまでは訪れた国の数も限られていた。こんなに移動するようになったのはçanomaをローンチして以降のことだ。

背景は「コトよりモノ」という私の趣味趣向だ。「モノよりコト」が叫ばれる昨今において、私はモノにより重きを置いている。それはモノの消費そのものではなく、モノと共に過ごす時間、つまり「モノを通したコト消費」に価値があるように感じているからだ。それについては以前書いた下記の記事の前半部分を参考にしていただきたい。


旅行に価値を見出してこなかったもうひとつの背景は、旅行に対する私の偏見もあったように思う。よくある観光名所に行き、観光客向けの飲食店で食事をし、写真を撮ってSNSにアップすることになんの意味があるのだろう、と考えていたのだ。もちろん、私がイメージしていた旅行のあり方が一面的なものでしかないというのは言うまでもないことだ。

付け加えると、家族旅行の習慣がなかったことも、私自身を旅行から遠ざけていた一因であるかもしれない。記憶にある家族旅行は両親の実家に帰ることくらいだった。そんなわけで、そもそも「旅行に行く」という発想が決定的に欠落していたと思う。


今月は比較的出張が少なく終わりそうだ(といいつつ、急遽長めの出張が入ったりするのだが…)。昨日土曜日に睡眠と会食は詰め込んで、今日日曜は念のため終日空けておいた。

この1週間ほど、新幹線移動を伴う距離の場所で行われるクラフトフェアに行くか、ずっと迷っていた。好きな作家さんがそこに出展する。普段なかなか会える人ではないし、行けない距離ではない。さて、どうしよう。

周辺で訪れたい場所を探してみる。いくつか気になる場所を見つける。あれこれ繋げると、丸一日必要となる旅程になりそうだ。もし行くことにすれば、充実の日曜になることだろう。

ただその上でもなお、私は悩んでいた。せっかくの日曜日、のんびり過ごす選択肢も、あるよ…?きみ、普段忙しいでしょ…?行くとなると、朝、早いよ…?寝たい、でしょ…?私の中の小悪魔が、耳元で囁く。


台所がある程度片付いた5時半過ぎ、私は思い立って7時半の新幹線を予約した。やっぱり、行こう。そう決意した。


あちこち出張するようになってわかった移動することの価値は、観光名所に行くことでも、SNSに写真を投稿することでもなく、その場に行かないと出会えない「人」と「香り」にある。ただそれは、そこに行ってみない限りにおいて、出会えるかどうかすらわからない。「得るもの何もなし」の出張も、今まで何度か経験してきた。

だからこそ私は旅をするのだろう。予め得られるものがわかっていることに取り組むのはつまらない。この不確実な波ばかりの大海原を、ただぼんやり漂っているのではなく、私は上手にサーフィンしたい。


目的地に向かう新幹線の中でこの記事を書いている。もう少しで降車駅。そこで私を待っている、あるいは待っていない人と香りに、私は胸を躍らせながら降りる準備をそろそろしようと思う。


「進行方向右手には少々雲がかかっておりますが富士山が見えます。短い間ですがお楽しみください」

車内アナウンスが入った。進行方向左手に座っていた私は、席を立ち、デッキまで赴いて富士山を眺めることにした。すでに進行方向に対して後ろに流れてしまったその姿は、いつもより幾分小さく、そして立体的に見えた。

美しかった。


【çanoma公式web】

【çanoma Instagram】
@canoma_parfum

#サノマ
#香水
#フレグランス
#ニッチフレグランス
#canoma
#canoma_parfum
#パリ
#フランス


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?