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音に関する悩み

香りを作るというこの仕事は嗅覚によってなされるところが大きいが故に、ここ最近は、嗅覚を研ぎ澄ますにあたって嗅覚以外も含めた身体感覚をいかに鋭敏な状態に保つかに大変興味がある。禁酒や運動もそれが主たる目的だ。

そうすると、当然の帰結として以前は気にならなかったものが気になりだす。最近はどうにもニンニクが苦手になった。食べている際はまだ平気なのだが、食後に身体に残る臭いが特に気持ち悪く感じる。

加えて、前から苦手だったものはさらに苦手になった。その中のひとつが「大きな声」だ。


昔から大きな声が苦手だった。

声が大きい人はそれだけで避けてしまいたくなるし、居酒屋の威勢のいい店員は疎ましく感じられる。特に誰かと話している時なんかは、近くに声が大きい人がいると、どうしても会話に集中できなくなってしまう。意識が途切れたような感じになるのだ。

この傾向は昔からあったが、ここ最近特にひどい。隣の酔っ払いが大声で話している飲食店では、思考がまとまらず、うまく言葉が出てこなくなる。電波が悪い場所での動画再生のように、頻繁に一時停止してしまうのだ。

「大きな音」もそれなりに苦手だが、それ以上に「大きな声」がダメなようだ。意味があるから余計に意識に侵入しやすいのだろうか。あるいは、自分が発している声と変な“共鳴”してしまうのかもしれない。


これのせいでポップアップ中に困ることが2つできた。

1つは、小さな店内で店主が他の客と大きな声で喋っていると、自分の説明に集中できなくなってしまう、ということ。私は店主ひとりで経営しているような店でのポップアップを頻繁に行うが、そういった場所は往々にして小さな閉鎖空間である。私が香りの説明をお客さんにしている時に、店主が違うお客さんに対応している声が聞こえると、途端に集中が途切れてしまうのだ。もちろん、それは店主が悪いわけではなく、私の音への感度の問題でしかない。

もう1つは、私がお客さんに説明している途中で言葉を挟まれると、思考が止まってしまう、ということ。香りの説明をしていると、お客さんがそれを遮る形で何らかの反応を示すということがよくある。ただでさえそうされることが苦手だったのが、今ではそれによって「あれ、今どこまで説明したっけ…?」と、セリフが飛んでしまったような状態になる。こちらも同様に、お客さんが悪いわけではなく、私の敏感さによるものである。


感度を上げることでこのような弊害が生まれている一方で、よりよい香りを作るために必要な身体感覚であるとすると、これらの問題を訓練等により克服することは本末転倒であるように思料する。私はこれらの問題と今後うまく付き合っていかねばならない。

ちょっとした意識の変化でどうにかなるものなのか、あるいは私が説明に集中しきれてないから発生する問題なのか、そのあたりはよくわからないが、何らかの解決策が見つからないものか、と考えている。

ので、このnoteを読んでいる店主さん、私がポップアップで店頭に立つ時は、私が他のお客さんと話している時、ほんの少しだけでいいので声のボリュームを落としてくれるとありがたいです。このnoteを読んでいるお客さん、私が説明している時は、ちょっとだけ我慢して、遮らずに聞いてくれると嬉しいです。


それにしても、ホールから大声でキッチンにオーダーを飛ばすような居酒屋は、私にはかなり苦痛なのだが、あれは普通の人は全く気にならないのだろうか…?私が変なところで敏感すぎるのだろうか。同じような悩みを抱えている人は案外多いような気がするが、私たちは「声が小さい」が故に、その他の「大きな声」にかき消されているのかもしれない。


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