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リモートワークという働き方の「不完全さ」と組織を成立させる「仕組み」について考えてみた

株式会社wibという会社を2018年に立ち上げ、ベンチャー・スタートアップ向けの「ハンズオン支援サービス」を提供している。事業開発・組織づくり・マーケティングなどを中心にこれまで20社以上の企業をサポートしてきた。

当社は「フルリモート組織」として運営されている。メンバーは東京、茨城、埼玉、名古屋、沖縄と全国におり、一度も会ったことない人が半分だ。

「今っぽいですね」とか「自由でいいですね」というコメントをよくいただく一方で、当の私たちからしてみると「リモートで組織運営するのって難しいなぁ」と感じることがとても多い。

最近では大企業や官公庁でもリモートワークが促進され、起業家も固定費を下げる目的でリモートスタートするケースが増えている。私たちの支援先でもあるキャスター・中川さんも似たようなことを書いていた。


そして、まだ小さな私たちのチームにも「どうやってリモート組織を成立させれば良いか?」という相談を多くいただくようになってきた。

そこで今回のnoteでは、私たちが考える「リモートワークの不完全さ」と「組織を成立させる仕組み」について書くことにする。リモートを制度導入しようとしている会社や、これからリモートでの組織立ち上げを考えているリーダーに届いてほしい。


リモート組織が孕む最大のリスクは何だろう

「リモート組織を率いる上での最大のリスクはなんですか?」という問いに対する答えはなんだろう。

「サボっていないか心配になること」
「飲みニケーションが取れないこと」
「業務の進捗が見えないこと」
「気軽に相談ができないこと」

色々あると思うが、私の考える最大のリスクは「ヘイト(不満・不信・敵対心)」が生まれやすい」という点に尽きる。

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組織運営における「ヘイト」は極めて重大なリスクだ。普段は表に見えないながらも、ゆっくりと確実にチームを破滅させる。

あなたの会社でも、喫煙所における愚痴、飲み会での上司への不満を聞くことはゼロではないだろう。特にリモート組織の場合「ヘイトの発生源があまりに多く、それらを吸い上げ、解消できる機会があまりに少ない」ということを認識しなければいけない。

リモート組織というものは、不完全なのだ。


リスクを解消するために取りうる2つの選択肢

上述したリスク=ヘイトを解消するために、リーダーのあなたが取れる選択肢は大きく2つだ。

1.結果を出している人やヘイトを溜めにくいトップ人材だけでチームを構成する
2.メンバーのヘイトを増長させず、解消できる「仕組み」を構築する

「1.」は組織を作って行く上での一つの完成形であると思う。成果報酬を前提とし信頼しあえるプロフェッショナルだけのチームを作ることができれば(さらに、それをスケールさせることができれば)リスクは限りなくゼロに近づく。マネジメントコストも限りなくゼロになり、最高の状態と言えるだろう。

ただ当社ではあえて「2.」をベースに組織を構築している。具体的な方法は記事の後半で解説するが、あえて手間のかかる選択をしていることにはそれなりの理由がある。


「普通の人」が「普通にがんばる」ことで、大きな成果が出るチームが、最強。

↑これがハンズオン支援を事業化・法人化すると決めたときの、組織づくりに対する私の思想だ。

当たり前のように映るかもしれないが、世の中の企業は「スーパーマンが集まっている」ことを前提に工数計算がされていたり、「普通の人に過重労働を強いる」ことを前提に目標を設計されているものが実はすごく多い。

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私の出発点はあくまで「人の能力や努力量に依存しにくい仕組みを作ろう」というところからで、最初から「リモートの会社をつくろう」と考えていたわけではない。

「どうせ仕組みを作るなら、リモートでも成立させられるものを作り込む方が価値が高いものになりそうだな」という気持ちで、前項にあげた「2.」のアプローチからリモート組織を作ることに決めたわけだ。


リモート組織を成立させるための5つの仕組み

そんな経緯から法人登記から1年以上が経ち、試行錯誤を重ねながらも事業・組織を伸ばしてきた。ここからは、私たちのチームが実践し、効果を感じている具体的な「仕組み」を紹介する。まだ6人程の小さなチームで未完成な部分も多いが、それでも上述の課題感や思想に基づき、ここまで作り上げてきた。

※同じような規模感で組織づくりに取り組んでいる方や、労働集約のビジネスをやっている方、ここまでの内容に共感いただける方に向けた内容なので当てはまらないケースもある

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▼仕組み1:「プロセス」は本人に任せつつ、「優先度」はリーダーがコントロールする

作業の途中で休憩を挟もうが、散歩しようが、家族と遊ぼうが自由。私たちのチームにおいて「プロセス」はすべて本人の自由としている。ただし「業務の優先度」については、リーダーが(わりと細かく)コントロールすることにしている。

スーパーマンではなく普通の人たちが集まっているからこそ、数多く抱える業務の優先度をミスることは起こり得る。これをある程度許容しつつ、リーダーが責任を持ってコントロールすることが重要だ。

具体的な手段として、私たちはzoomを使い、毎朝15分の「朝礼」を実施している。

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※全員参加の朝礼の様子。がスッピンNGの人はカメラオフでも可としている(笑)

朝礼ではその日のスケジュールを確認するとともにメンバーが優先的に取り組むべきタスクをTrelloで1つ1つ棚卸ししている。

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※Trelloのリスト。「将来やりたいこと=ToDo」にひとまずタスクを溜めておき、朝礼の場で「今日やること」にカードを移動する運用にしている。これにより業務の全体像とメンバーの逼迫状況を把握しながら優先度を判断している。


▼仕組み2:相手の時間を奪うことを厭わない

リモート組織では、飲み会はおろか毎日のランチや雑談の時間もない。出勤型に比べると誰かに時間を奪われることは極端に少ないかわりに、自分の中に課題を抱え込みやすい状態と言える。

だからこそ、相手の時間を奪うことを厭わないことをルールにしている。「せめて資料を30%まで仕上げてから相談しよう」ということではなく、たとえ1%しか進められていなくても、どんどん相談してOK。結果的にアウトプットの品質向上や期待値調整に大きく役立っている。

加えて、メンバーとの1on1も毎週開催している。実務の話もさることながら、どちらかというとメンバー全員の精神衛生状態を確認する目的だ。1on1の手法についてはSmartHR・宮田さんのブログがすごく参考になるのでここに残しておく。
https://blog.shojimiyata.com/entry/2019/10/09/184029

天気
・この2ヶ月、SmartHRで働いてみた感じを天気で言い表すと、晴れ or 雨 or 曇 のどれですか?
・降水確率でいうと何%くらいですか?
その理由
・その天気の理由はなんですか?
・降水確率が○%の理由はなんですか?
※上記リンクより抜粋引用


▼仕組み3:「言語化」にとことんこだわる

リモートでのコミュニケーションにおいて、発言の「行間」を読むことは極めて難しい。というか、ほぼ不可能に近い。
アウトプットがイマイチなとき。相手の指示がいまひとつ理解できないとき。業務への納得感が足りないとき。

そのときに「なぜ、自分がそのように感じたのか」を言語化することが重要だ。

タスク1

「言語化力」は一朝一夕に身につけられるものではない。私たちのチームではネット記事をチームにシェアする際に、上のシートを用いて「自分が読んだ記事がなぜ良かったか、なぜシェアしたいと感じたか」を言語化することを「言語化の訓練」として取り組んでいる。

発言者と受け手の双方が解像度の高いコミュニケーションを意識することで、チーム内だけでなくクライアントとのコミュニケーションもスムーズになる。


▼仕組み4:感謝の言葉を何度も伝える

このnoteをここまで読んでくれたあなたにとって、仕事というものはそもそも「やって当たり前のもの」かもしれない。いちいち感謝されなくても何も感じないかもしれない。

しかし「普通の人」が集まるチームにそれを求めると、かなりの確率でメンバーは疲弊する。

裏を返せば「ありがとう」の一言だけで報われるメンバーはいるし、次のミッションに向かうエネルギーが生まれることもある。先に触れた「ヘイト」を溜めないために、チープだが極めて効果的な仕組みだと考えている。

そしてもう1つ、感謝の言葉を伝えるタイミングは「かなり限られている」ことを忘れてはいけない。
家族の間でもそうだが、日常生活において「ありがとう」と伝えられる機会はそんなに多くない。私たちのチームでは、【隙あらば伝える】くらいの気持ちでいてほしいと何度も話している。


▼仕組み5:言いにくいことは、(画面越しでも)顔を見ながら

メンバーのパフォーマンスが物足りないことや、なかなか仕事が前に進まないストレスを感じることは、どこのチームでもあるだろう。

そんな時、チャットを中心としたコミュニケーションの場合どれだけ言葉を選んでもキツく感じられるし角が立ってしまうし、オブラートに包みすぎると真意が伝わらない。

逆に指摘される方も、自分の事情や意見についてわざわざ長文チャットを返す時間が取れないことも多いだろう。「すみません、わかりました」の一言が積み上がった結果、適切なコミュニケーションが取れなくなってしまった企業からの相談は、私たちにも度々寄せられる。

メンバーに指摘や改善要望を伝える際は(リモートであればzoomをつないでカメラをオンにし、)面と向かってストレートに伝えることを強くおすすめしたい。


5つの仕組みは、リモート組織に限った話ではない

ここまで紹介してきた「5つの仕組み」を再掲する。

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リモート組織を前提に書いてきたが、これらの仕組みの出発点はあくまで「人の能力や努力量に依存しにくい仕組みを作ろう」という私の思想を出発点にしている。

会社のフェーズや業態による差異はあれど、似たような思想で取り組むリーダーの参考になれば嬉しいし、私たちもこれらのルールを一層浸透・実行していくことで大きな成果を届けられるチームでありたい。

以上

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毎月1社ずつくらいは新しくご支援先を広げているので、もし興味ある方は気軽にDMください。リモート組織の作り方について聞いてみたい方もどうぞ〜


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