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コーポレートVCから出資を受けるメリットと注意点

FogHornのファンドはリードVCを除いては、主にコーポレートVC(以下CVC)から出資を受けている。

今回はCVCから出資を受けるメリットと注意点について少し書いてみる。

良かった点としては、協業する上で一歩進んだ深い協業が可能になる点。通常よくあるPartnership契約とは違い、1段上の価値や可能性がそこにはある。言い方を変えると企業側の本気の証しがお金に現れている。(お金と言う名の血液をスタートアップに入れる感覚)
また、その企業の取引先も潜在的な顧客として紹介してもらえたりすることもあるので、スタートアップとしてはとてもありがたい存在。投資に対する回収期間も通常のFinancial VCと比べ長期的視点で捉えるので、安定的な経営が可能になり事業に集中できる。(CVCの投資目的がキャピタルゲイン目的ではなく、強固なパートナーシップを目的とした投資のケースが多い)

注意点としては、本来のVCの機能(資本を入れるのはVCの機能の一部で、本質は様々なリソースをつなげ成長を促す点にある)としては脆弱のため余り頼りにならない。言い方を変えるとスタートアップとの付き合い方を知らない人が企業内に多数いるため、スタートアップ側がしっかりしないと大企業の論理(大企業病)に振り回されて、結果双方の時間とリソースだけが浪費してしまうケースが散見される。
典型的なケースとして、企業のCVCチームやコーポレート部門の人はスタートアップのことを理解しているが、実際の協業を行うその企業の事業部門等は全く理解しておらず(もしくは快く思っておらず)、早晩企業の社内政治へと発展し協業が頓挫することがある。実際にそういうケースを幾度も見てきた。

そうなってしまった場合どうしたらよいか?こればかりはケースバイケースで対応するしかないが、相手が資本を入れてくれている企業でも、問題点をあぶり出し遠慮せず何がうまく行っていないかを明確に伝えること。そして必要であれば先方の社長からトップダウンで上意下達してもらう、ぐらいの図太さがないと大企業は動かないし、先方も動けないことが多い。(各事業部も既存ビジネスをディスラプトして、もし失敗したら誰が責任を取るんだ、という問題に発展するのを恐れリスクヘッジ(やらない、もしくは少量の予算しかつけない)をしてしまい、結果誰も決められず議論ばかりになり前に進まない。)

スタートアップは時間が命。ぐずぐずしている間も、ランウェイはどんどん短くなっていく。そのひりひり感とお金が溶けていく緊張感は、大企業の中の人は理解できない。


あと1点、これはスタートアップ側のポリシーや事業ドメイン等により差があるが、通常CVCはリードインベスターの立場を取りたがらない。そのため、スタートアップのファンドの組成としては、リードインベスターをFinancial VCとして組成をする場合がシリコンバレーでは多い。なのでそのリードインベスターがしっかりしていて、board of directorの一人として参画しCVCとうまく付き合えれば、より確かな会社運営が可能になる。(1つの例としては、CVCをboard of directorではなく、board of observerとして参画してもらう等の資本政策を行う)

リードインベスターのミッションは、経営に参加しFounderと二人三脚で会社を大きくしていくことにある。こう言うと響きは良いが、会社がうまくいかなくなると、Founder vs リードインベスターの構図になることがままある。
得てしてFounderはオリジナルのアイデアや人に固執してしまいがちのため、行き詰まったときにうまくピボットができないことが多い。そこでリードインベスターが大鉈を振るってレイオフを敢行したり、必要ならば経営陣を挿げ替えたりする。
なので" Investor cannot be your friend."とfounderはよく言われる。

これはどちらが良い悪いという類の二元論ではなく、どれだけ意気投合し仲良くなったとしても、インベスターはあくまでもBusiness Partnerであることを意識しないと駄目で、会社を守り成長させるという点において何事もバランスが大切であるということの所作にほかならない。

1つ確かなことは、リードインベスターがしょぼくスタートアップのビジョンに心から共感できていないと、スタートアップが振り回され早晩潰れるケースがあるということ。


資本調達とは、外部から多様性と同質性を企業のDNAに取り込み成長させるための手段であり、目的ではない。


“…particular investors who are going to be on the board for the company, are just as important as who you get married to.”
“It’s often said, raising money is not actually a success, it’s not actually a milestone for a company and I think that’s true”
- Marc Andreessen


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