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広島旅行ノート:太陽の破片

12月初旬の昼過ぎ、はじめて広島の地を踏む。新幹線を降り、意外にモダンな路面電車(イスタンブルみたいだ)に乗って、市街地へ。お好み焼きで腹を満たし、ホテルにチェックインしたら、とりあえず原爆ドームに向かう。

河沿いの一角、にぎわうショッピングモールの周縁に、そこだけローマ遺跡みたいな佇まいで、それは立っていた。茨の冠をかぶったドーム、太い柱、巨人に引きちぎられたような壁。

河を渡って隣接した平和記念公園をぶらつき、資料館を覗いてみる。原子爆弾のコードネームは「リトルボーイ」。その名の通り全長はたった3.12m、このちいさい奴一発で20万人(正確な人数は未だ定かでない)の命を奪った。

B-29から投下されたリトルボーイは広島上空600mで臨界に達すると "小型の太陽のような" 火球となって地上を2000〜3000℃の熱で灼き尽くし、爆風であらゆる建物を吹き飛ばし、ガラスの欠片を散乱させた。大量の粉塵で真っ暗闇となった街に火災が襲い、黒い雨が降った。AKIRAでもエヴァでもない本物の地獄が、70年前ここに実在したんだね。人が作った地獄が。

人を殺すことが罪なら、リトルボーイは人類史上最大級の罪を負うべきだろう。でも誰を責めればいいんだろうか。エノラゲイの搭乗員?  オッペンハイマー博士? 彼らはプロとして任務を遂行しただけだろう。ルーズベルトやトルーマン? しかし彼らには建前があった。「この戦争を早く終わらせる」という、誰にも反対できない建前が。

慰霊碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれているけれど、過ちを繰り返さないためには、その原因と対策を明確にしなければならない。はたしてわれわれに、それができているだろうか? 個人的に思いつく対策といえば、こんなところか。

1. 誰も反論できないような建前を旗印にする奴は、信頼するな(「景気回復 この道しかない」とか「国民の生活が一番」とか言う輩は、その実行方法をチェックすべし)

2.  自分の仕事の影で被害を被っている人がいないか、想像すべし。もしそういう人たちがいるとわかれば、速やかにその仕事を改めるべし

いまの広島は、地方都市として十分に住みやすそうだ。マツダをはじめとした製造業も活況だろうし、飯もうまい。廃墟からいまの街をつくりあげた広島の人たち、その不屈の精神に敬礼

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