所澤ユタカ

趣味は野球観戦、映画鑑賞、音楽鑑賞、ゲーム、ゲーム実況鑑賞、バラエティ番組鑑賞、動物動…

所澤ユタカ

趣味は野球観戦、映画鑑賞、音楽鑑賞、ゲーム、ゲーム実況鑑賞、バラエティ番組鑑賞、動物動画鑑賞 以前は違う名前でネット小説を投稿していたので、再開するか考え中 noteで記事を書くことにより執筆のリハビリになればと思っています

最近の記事

Night Walker・エピローグ

 私は、踏切の前でたたずんでいた。  踏切には、1つだけ花がお供えられている。  健兄がお供えした花だけ。  その健兄は、仕事を休み家に引きこもっている。これが長く続くと参ってしまうが、今日だけなら、いいや、一週間ぐらいなら仕方ないだろう。  あいつは外に交友関係がなかった。交友関係の深さや浅さは、死んだ時にはっきりと数字で表れてしまう。  悠希さんは来てくれていない。  あいつの死を知っていて来ていないのか、ただ知らないだけなのか、私は電話で確認する勇気がなかっ

    • Night Walker・24話・7月31日【望田雫】日中

       私は、屋上の金網にもたれる形で座り、目を瞑っていた。  目を瞑っても、昨晩の事故は鮮明に思い出せない。  事故が起きた瞬間、私はパニック状態になり、記憶が曖昧なものになっていた。  目を瞑り鮮明に思い出されるのは、事故の瞬間ではなく、事故の寸前。日野君が思い切り車椅子を走らせ、遮断機をかいくぐりながら踏み切りに突っ込んでくる姿。  そして、最後に見せた愁いの表情。  日野君は、最後に私の存在をはっきりと確認し、私を見つめた。  踏切の前で辺りを見渡した時、日野君

      • Night Walker・23話・7月30日【幸介】日中

         憂鬱な朝の始まりだった。  僕の気持ちが曇っているのと反比例するように、母さんの機嫌が良い。今にも鼻歌が出てきそうだ。  今日も、朝食が出る気配がない。昨日の言い方から考えると、母さんが食事を出さないのは折檻ではなく、修行の一環なのだろう。  母さんは、悪い事をしている感覚がなく、寧ろ、僕の為にと食事を出さないでいるのだ。これでご飯が食べたいと訴えたら、母さんに怒られ、失望されるだけ。何も良い事はない。  午後に、教祖と会う約束になっている。  教祖と会って、何が

        • Night Walker・22話・7月30日【望田雫】日中

           今日も、昨日と同じ一日だった。  電話でやり取りして、お昼ご飯を渡すだけの一日。  ユウは、悪くなってないなら良いじゃんと、私を励ますように笑った。  ユウは妹だけれど大人の子だ、幸助が軟禁されている現状に対し、私が罪の意識を抱えていると察しているから、前向きに笑って見せているのだろう。  私もユウに無駄な心配をかけるほど子供じゃない。ユウの優しさを受け止め『そうだね』と笑って見せるが、一人になるとどうしても罪の意識がのしかかってくる。  私は、多くを望まない。も

        Night Walker・エピローグ

          Night Walker・21話・7月30日【日野和三】日中

           目を覚ましたら、すでに兄さんは仕事へ出ていた。  それはいつもと変わらぬ流れのはずだが、今日は違う。  なんでも良いから酔っていない兄さんと話がしたくて、いつもより早くに僕は起きたのだ。  時刻は午前五時。仕事に行くにしろ家を出るのに早すぎる。  家から駅までは割りと近く、兄さんの足なら七分とかからない。そう計算すると、始発が出る時間より前に駅に着いてしまう。  兄さんはきっと避けているのだ。  気まずい空気になってしまった咲を? それとも、うっすらと残る記憶の

          Night Walker・21話・7月30日【日野和三】日中

          Night Walker・20話・7月29日【幸介】夕方

           夕方、僕は食べ終えたお弁当箱をベランダに設置し、屋上の雫に引き上げてもらった。  今日も、一番心が癒える時間が終わってしまう。  引き上げられるお弁当箱を見つめる僕の心を、憂鬱な感情が支配する。  人間とは、わがままな生き物だ。  すぐに更なる欲を欲してしまう。  昨日は、母さんの許しが出て、屋上に行ける日まで雫に会えないと思っていて、意外な展開から雫と話が出来るようになり素直に嬉しかった。  嬉しくて、喜びの感情で一杯だったのに、今日になると電話や遠い距離から

          Night Walker・20話・7月29日【幸介】夕方

          Night Walker・19話・7月29日【望田雫】日中

          「浮気物」  昼食を食べ終えたユウが、冗談半分に私を揶揄した。 「だから、そんなんじゃないって。ただ、せっかく知り合ったんだから、交友を切らしたくないと思っただけ」  昨夜の散歩では、日野君に出会えなかった。会って話したい事があるわけではないが、せっかく知り合ったのだ、一日でも接触を切ってしまったら、二度と会えなくなってしまうのではと思い、日野君と出合いやすい地点をうろついていたのだけれど、昨夜は出会えなかった。 「心配して、損した。お姉ちゃんは家に引きこもって、殻に

          Night Walker・19話・7月29日【望田雫】日中

          Night Walker・18話・7月29日【日野和三】日中

           昨日、兄さんは家に帰ってこなかった。  それは初めての事で、連絡さえ入らなかった。  連絡が入ったのは、今朝方の事で、昨晩は同僚と飲みに行き、つい寝過ごしてしまったので、そのまま会社に行くという連絡だった。 「なんか、タイミングがおかしいと思わない? タイミングが良すぎるというか、悪すぎるというか…はまりすぎてる」  リビングで、咲が僕の顔を凝視している。  射るような視線を避けながら、僕は応えた。 「何が?」 「悠希さんが初めて家に来て、たぶんあまり良い印象

          Night Walker・18話・7月29日【日野和三】日中

          Night Walker・17話・7月29日【幸介】日中

           屋上は、僕にとって牢獄のようなものだった。  牢獄のようなものであり、牢獄ではなかった。  雫がいたから。  牢獄のようなものであり、牢獄ではなかった屋上が、昨日、牢獄のようなものでもなくなり、自由に行き来できる普通の場所。つまり、ただの屋上になった。  それは僕にとって大きくプラスな出来事だったのだが、ひとつのミスから、僕は今、正真正銘の牢獄に入れられている。  我が家という牢獄に。  縦に移動する分には、屋上から出てもばれない。その考えは間違っていなかったが

          Night Walker・17話・7月29日【幸介】日中

          Night Walker・16話・7月29日【望田雫】日中

          「姉さん、朝だよ」  私は、まだ開き切っていない目でユウを確認し、しばらくボッーとする。  部屋に鍵をかけているので、ユウはドアの向こうからノックをしながら起こす。  ユウが私を起こしに来るのは珍しかった。今まで気をつかっていたのかもしれないが、昨日の一件で距離を縮めて大丈夫だとユウの中で結論づいたのかもしれない。 「一緒に、朝ごはんを食べようよ」 「私、寝起きですぐに食べるのはきつい」 「そうなんだ…じゃあ、待ってる。学校も用事もないし」  本当は諦めてほしか

          Night Walker・16話・7月29日【望田雫】日中

          Night Walker・15話・7月28日【望田雫】夜

           私は、スケッチブックを片手に、いつもより少し早く夜の散歩に出かけた。  学生時代、落書き程度に絵を描いていた。リアルな絵ではなく漫画絵だけれど、誰に見せるでもないので暇潰しに描いていた。  昨日、日野君の絵を見て触発されたのだから、私も単純だ。  何を描くかは既に決めてある。  踏切である。  電車や線路ではなく、踏み切り。  何故と聞かれると明白な答えはない。踏切が大好きなわけでもない。ただ、何を描くか考えた時、最初に浮かんだのが踏み切りだっただけ。  今回

          Night Walker・15話・7月28日【望田雫】夜

          Night Walker・14話・7月28日【日野和三】日中

          「和三、悪い。起きてくれ」  兄さんに起こされ、目が覚めた。 「どうしたの?」  僕がいつも起きる時間は、兄さんが家を出た後だ。こうやって兄さんが僕を起こすのは初めてである。 「話したい事があって」 「昨日の事?」 「昨日の事も含めて、今後の事だ」 「少し待ってくれるかな。まだ頭が起き切ってないから」 「和三のタイミングでかまわないよ」  なんて目覚めの悪い朝なのだろう。昨日の話となると楽しい話のはずがない。体もあちこちが痛むし、最悪の朝だ。  僕は、いつ

          Night Walker・14話・7月28日【日野和三】日中

          Night Walker・13話・7月28日【日野咲】日中

           夏休みの朝なのに、珍しく早くに目が覚めた。  時刻は六時。健兄がまだ家を出ていない時間だ。  目が覚めたが、気力が沸かないのでそのままベッドに転がり、ボッーとしておく。  そうしていると、昨日の事がVTRの様によみがえる。  昨日は、私の描いた通りにシナリオが動いてくれた。  男なんて単純で扱いやすい。特に長年一緒に暮らしてきたあいつと健兄だ。行動は容易に想像できる。  でも、健兄はさすがだ。もっと慌てると思ったのに落ち着きを崩さない。  私の予定では、アイツ

          Night Walker・13話・7月28日【日野咲】日中

          恋をすることを封印していた過去と、恋をしなくなった今、夢に向い再び歩き出した話

           昔の私は、恋をするのを自ら封印していた。  その理由は大きくわけて二つ。  家の生活を支えていたので恋愛をする余裕が無いのと、自分自身のコンプレックスから。  小学一年から不登校になり、その後に職に就いたのは自分より三十歳以上の人達しかいない職場。  次の職場は同年代か少し年上、少し年下の人男性しかいなかった。  女性と免疫がないまま三十を過ぎた時に、職場に自分より年下の女性が入るようになった。  その女性と少しいい感じの関係になりそうだったが、女性に免疫や経験

          恋をすることを封印していた過去と、恋をしなくなった今、夢に向い再び歩き出した話

          Night Walker・12話・7月28日【望田雫】日中

           モヤモヤした気持ちのまま、十二時を迎えてしまった。  まだ、何も結論をつけていないのに、タイムリミットは刻々と迫ってくる。  昨日のやり取りで、私に非がある部分は何もないと思う。幸介が突然機嫌を悪くし、キレただけ。  私が謝り仲直りするのは、甘やかしすぎなのではないか。  何より、納得がいかない。  でも、日野君は仲直りできるうちにしておかないと、取り返しがつかなくなると言っていた。  確かに、時間を置けば置くほど顔を合わせづらくなっていき、仲直りするタイミング

          Night Walker・12話・7月28日【望田雫】日中

          Night Walker・11話・7月28日【幸介】日中

           空は晴れ渡り、清々しい風が吹いているが、気分は優れなかった。  汗で湿った肌と服のように、心はジメジメしている。  今日は、いつにも増して時間が経つのが長く感じた。  いつもは雫が来るのを待ち望み、時間が長く感じるのだが、今日は少し違う。  雫が来るかどうか不安で、時間の進みが遅く感じるのだ。  僕には経験がないけれど、高校の合格発表とかを待っている心境に近いのだろう。  会いたい。  自分で来るなと言っておきながら自分勝手だけど、雫に会いたかった。  散歩

          Night Walker・11話・7月28日【幸介】日中