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喪字男句集『モジオロジー』を読む

あまり公言しないが、ぼくにはひそかに信頼している俳人がいる。「喪字男」もそのうちの一人だ。初めて彼の名を目にしたのは北大路翼率いる初期屍派の

 寒泳の目つきがまるで人ごろし  喪字男

を目にしてからだ。以来、屍派初期メンとして、そして里俳句会の古株として辛気臭さとは無縁の句を作り続けている彼を常に意識し続けている。そんな彼の句集『モジオロジー』が上梓されたというから、早速注文したのだった。

『モジオロジー』とはいわば「喪字男学」と云うべきだろうか。巻頭に書く「この本を誰にも捧げません」の文字こそが芯を食った俳人らしく、おもわず頬が弛む。

 風船は昨日の妻の息で満つ
 万引きの老人とゐる春の暮
 生で観るどつき漫才敗戦日
 ふるさとは素足の母のゐるところ
 もつたいないほどの勃起や夏の雲

自在な視線の高さと融通無碍な修辞は彼が一級の俳人である事を証明しており、初期北大路翼の句勢を彷彿とさせるその句景は読む者の目を釘付けにする。この句集は多くの人に読まれるべき一冊なんだから、みんなも手に取って読みましょう。

写真もやる喪字男。まだ会った事がない彼といつか話し込んでみたいものだ。以下のサイトで購入出来ます。

https://bccks.jp/bcck/178906/info

里俳句会・塵風・屍派 叶裕


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