さよなら

きつい、イライラした、けわしいかお
じぶんが嫌いで、気高くて
つめたくて、ひとをよせつけない
とび色のおおきなひとみ

とげとげしい言葉ばかり口をつく

でも話しているうちすこしやわらかくなる
きっかけはさもない仕草から
糸口をすこしほどくと
きみはあふれるように喋り出した

泣きながら、あふれながら
ぼくも泣きながらきみの糸をどんどんほどいて
それをぼくの手にたぐる
なかなかなみだがとまらないね

うつくしいよこがお

なみだでゆがんで
きみは自分を責めることをやめない
ほどいて、ほどいて
なにもなくなるほどほどき尽くして

そこにはだかの小さなきみが
ぶるぶると震えて、いた
ごめんよ、さむいだろ
ごめんよ、心細いだろ

でも、ひとりじゃなくなったよ

この手に巻きとった糸の束を
あきれたようにながめるきみ
ほら、ほどけたじゃないか
もうひとりじゃないんだよ

ぼくは止まり木なんだ
こんやだけ止まっていけよ
えがおになったら
また美しく飛んで行け

もう戻らなくてもかまわないんだよ
いつだって
いつまでだって
ここにいるから

ぼくはこんなとき、発作が出る
もうすっかりひとでなしなんだ
だから平気さ
へいきなんだよ

ぼくは自分の意味をみつけた
だからきみにありがとう
生きていてよかった。
ほんとうにありがとう。

だから

もう

さよなら

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