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強化部は「トランスファーマルクト」をどう利用しているのか ~その特性を踏まえた利用方法のすゝめ~

サッカーファンの皆様は、選手情報を仕入れたい時、どのようなデータソースにあたりますか? おそらく、まずは選手名鑑やWikipedia(日/英)を流し見し、さらに興味があれば、Transfermarkt(以下、tm)などの選手データベース(DB)を参照するのではないでしょうか。

強化部の一員である私も、取っ掛かりとしては上記に同じです。ただし、ポルトガルにいた頃から利用しているzerozeroの使い勝手が個人的にはお気に入りなので、tmと併せて2つのDBを併用している形です。

他サッカークラブ強化部の皆様も、tmには大いに助けられているのではないでしょうか。tmは、それほどに有用なデータソースであることは間違いありません。

しかし一方で、tmの利用には注意が必要な部分もあります。当然、全ての情報を100%精緻に取りまとめられているわけではなく、中には正確ではない情報もあります。特に、Jリーグクラブに所属する選手個々の「契約期間」は、あくまで参考情報と捉えるのが良いでしょう。

tmが掲載するJリーグ所属選手の契約期間は、(私が想像するに下記のような)一定のロジックに則って、機械的に算出しているように見受けられます。

①多くの選手が基本的には単年契約
②高卒新人選手は3年契約
③期限付き移籍選手は単年契約

私のチームの場合、実際に契約期間が合致していた選手の割合、つまり正答率は39%でした。

ただし、正答していたケースの大部分は、①のロジックに基づいて多くの選手が単年契約で掲載されている中で、実際の契約満了のタイミングがたまたま合致しただけのものです。おそらく意図した正答ではありません。もしくは、期限付き移籍の多くは実際に単年契約であるため、③のロジックに基づき合致したものも含まれます。ちなみに、期限付き移籍を正答率の算出対象から除くと、当該パーセンテージは33%まで下がりました。

(したがって、tmをご覧になった上で、Jクラブに対して「ほとんどの選手が単年契約じゃないか!」とのお叱りの声はどうかご遠慮ください... 実際に複数年契約を締結している選手は多くいます)

しかし、これはtmの精度自体を批判するものではありません。日本では、多くのクラブがシーズン当初に、複数年契約が残っている選手であろうと、実際に契約満了から更新した選手であろうと、まとめて「契約更新のお知らせ」という趣旨のリリースを出す慣習から、tmはそれに従って①のロジックを組んでいるものと推察します。欧州と比較しても、日本では契約内容の詳細が表に出づらい傾向にあるため、各選手の契約期間を知っているのは、選手本人、代理人、クラブとごく少数に限られます。そのような状況で、100%精緻な契約期間をtmに求めるのは、無理難題と言えるでしょう。

改めての言及になりますが、強化部の人間もtmには大いに助けられています。特に、世界中のどんな無名選手でも、名前を入力すると即座に、生年月日、身長、利き足、国籍、所属履歴などの基本情報が仕入れられるのは、まさにサッカー界のブレイクスルーと言っても過言ではないとさえ思います。

結びがtmの宣伝みたくなってしまいましたが、読者の皆様が引き続き正しくtmを利用できるように、その特性を知る上での一助になれたのであれば幸いです。

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