大会に挑戦する人のためのスタンダードガイド:バントヨーリオン解説

今週末にはMTGアリーナでMythic Qualifierが開催される。
ハイレベルの大会かつ本戦の賞金も高額なため、目標にしている方も多いだろう。
また同日には大規模なオンライン大会であるRed Bull Untapped 2020も開催される。幸いにも私はMTG Rivals Leagueの特権で本戦の権利を有しており、Mythic Qualifierには不参加。4000人規模の大会であるRed Bull Untappedには参加する予定だ。

今回は、大会で勝ちたいプレイヤーの為に今のスタンダードでどのデッキを選択すべきかの思考を伝えていく。大会で勝ち残るためのメタゲームを考える記事だ。

各デッキの基本的な動きの紹介ではなく、ある程度スタンダードの知識がある読者層を想定している。デッキ紹介は私のカードラッシュでの記事を参考にして欲しい。

■スタンダードパワーランキング

私が強いと思っている順にデッキを挙げて行く。
それぞれの長所と短所を考えて行こう。

①バントヨーリオン

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→長所
《海の神のお告げ/Omen of the Sea》《成長のらせん/Growth Spiral》《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》で2マナ域が最も強く、後半引いても嬉しい。
スタンダードで特に強いカードを全て使う事が出来て、相手によってカードの強さがブレにくい。《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》《空の粉砕/Shatter the Sky》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》。
デッキに入っているどれもが後半引いても活きるカードであり、全てのシチュエーションに対して回答がある。
《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》の常在型能力による抑止力。どちらもティムール再生とボロスサイクリングに強い。


→短所
プレイ難易度が非常に高く、常に打ち消しと展開のタイミングを見極める必要がある。
ヨーリオンの明滅する対象が少なく、《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》経由でないとヨーリオンの強さを最大限発揮できない。
早いターンの《魔女のかまど/Witch's Oven》《幸運のクローバー/Lucky Clover》に対して回答が無くペースを握られる。


②ジェスカイルーカ

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→長所
《創案の火/Fires of Invention》からの《銅纏いののけ者、ルーカ/Lukka, Coppercoat Outcast》→《裏切りの工作員/Agent of Treachery》→ヨーリオンは圧倒的で、全てを乗り越えるブン回り。
コンボパーツの《メレティス誕生/The Birth of Meletis》《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》により自然とアグロデッキ耐性がある。
《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》の常在型能力による抑止力。どちらもティムール再生とボロスサイクリングに強い。


→短所
《創案の火/Fires of Invention》は後半になるほど弱くなる。2つしか呪文を唱えられず、相手のターンに行動できない。トップデッキしても弱い。
対ヨーリオンと対ティムールでは《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》《荒野の再生/Wilderness Reclamation》を打ち消せるかが焦点になる。メインデッキに打ち消しが0枚なので、相手の打ち消しでいいようにされる事が多い。
そういったマッチではサイド後に《創案の火/Fires of Invention》を抜いて打ち消しベースのデッキになる事は出来るものの、メインに打ち消しがないのはデメリット。

各種ヨーリオンやティムール再生と比較して、マナブーストができない。土地の枚数でしか行動できないため2ターン目の《成長のらせん/Growth Spiral》で合計7-8マナ以上の差がつくことになる。
《銅纏いののけ者、ルーカ/Lukka, Coppercoat Outcast》の為に入っている《メレティス誕生/The Birth of Meletis》《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》は対ヨーリオンや対ティムール再生では物足りない性能。この2つは後半トップデッキして弱いため、ロングゲーム対決は青緑ベースのデッキに劣る。
マナフラッドしたときのマナの使い道が少ない。


③ボロスサイクリング

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→長所
1マナからの圧倒的なブン回りがある。メイン戦で先攻ならほとんどのマッチに勝てる。単体除去の少ない相手には特に強い。
ジェスカイ型は土地ダメージが増える上に《ラウグリンのトライオーム/Raugrin Triome》はタップインもサイクリングもする暇がなく、《型破りな協力/Improbable Alliance》によるメリットよりも土地のデメリットが大きいためボロス型を推奨。

→短所
土地18枚、特定のキーカードに頼ることによるマリガン率の高さ。マナベースも不安定で白白が足りないことが起こる。
少ない土地でキープして2枚ストップするとそのまま負けやすい。
後手だと相手の《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》にハマりやすい。


④ティムール再生

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→長所
打ち消しが多く採用出来てインスタントタイミングで動き続けるため、相手の4-5マナのカードに対して強い。
《荒野の再生/Wilderness Reclamation》により10マナ以上生まれるためリソース差をつけやすく、中速デッキ対決では特に優位がある。
《サメ台風/Shark Typhoon》複数採用により、サイド後の打ち消しを構え合うゲーム展開が最も得意。


→短所
相棒を使えない。
除去が少ない為、特にメイン戦でアグロデッキに弱い。
《荒野の再生/Wilderness Reclamation》は《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》に弱く、《発展+発破/Expansion+Explosion》は《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》に弱い。
アドバンテージ獲得を《発展+発破/Expansion+Explosion》に頼っているためここを打ち消されると止まりやすい。特に《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》に対する回答が無い。
マナフラッドしたときのマナの使い道が少ない。


⑤赤単オボシュ

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→長所
1マナからの圧倒的なブン回りがある。メイン戦で先攻ならほとんどのマッチに勝てる。単体除去の少ない相手には特に強い。

→短所
全体除去に耐性のあるのが《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》《灰のフェニックス/Phoenix of Ash》のみで、《空の粉砕/Shatter the Sky》があるかがそのまま勝敗の結果になりやすい。
タフネス1が多い為《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》が苦手。
黒いデッキが増えて《肉儀場の叫び/Cry of the Carnarium》《絶滅の契機/Extinction Event》が増えるとピンチ。オボシュデッキは全部奇数なので《絶滅の契機/Extinction Event》に非常に弱い。


その他
⑥ジェスカイケルーガファイアーズ
⑦ティムールエレメンタル
⑧ジェスカイウィノータ
⑨ラクドスサクリファイス
⑩スゥルタイヨーリオン

ブン回りする短期決戦デッキなら「ジェスカイルーカ」「ボロスサイクリング」「赤単オボシュ」が秀でており、長期戦するなら「バントヨーリオン」「ティムール再生」。
6-10のデッキは短期決戦も長期戦もトップ5のデッキに劣る。
スゥルタイヨーリオンは自身で使って好成績ではあったが、構成的に5-6マナが中心で相手の打ち消しを受けやすく、ティムール再生にどうやっても不利なため諦めた。

その他4色デッキや5色《ニヴ=ミゼット再誕/Niv-Mizzet Reborn》などもあるが、ギルドランド増加によるダメージとトライオーム過多によるタップインによる序盤の遅れがアグロへの敗因となるため、3色デッキより秀でている点は無いと判断。

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スタンダードの中心になる3枚。

《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《創案の火/Fires of Invention》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》はスタンダードでゲームの中心になるカードで、これが場に何ターン残るかが試合展開のカギだ。
これらの4-5マナ域を対処するためにも、打ち消し呪文は是非ともメインデッキに入れたい。
打ち消し呪文があれば、相手の4-5マナの必殺技を無効化しつつ返しのターンで自分は4-5マナ必殺技を使う事が出来る。逆に打ち消しがないと相手のプレイに裏目を作る事が出来ない。
そして打ち消しを巡る展開において《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》が輝くので、青白ベースのデッキを選びたい。ジェスカイルーカorバントヨーリオンが候補になる。

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ティムール再生に対する大きな抑止力。

ジェスカイルーカの調整にも多くの時間を割いた。《創案の火/Fires of Invention》を抜いて打ち消しを入れたりもしたが、シミックと違ってマナブーストできない欠点を《創案の火/Fires of Invention》による疑似マナ加速が補っているため、《創案の火/Fires of Invention》はメインのプランにすべきだ。
しかし《創案の火/Fires of Invention》の欠点としてメインに打ち消しを入れにくく、ジェスカイルーカは2マナ域が弱い。

バントヨーリオンは《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》と個々のカードが単体で強く、全てのシチュエーションに対して回答がある。
打ち消し呪文と、マナブーストが使える点も合わせて、バントヨーリオンがベストなデッキだと考える。ではどんなバントヨーリオンを使うか考えよう。


■デッキリスト:バントヨーリオン

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4《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》
4《発現する浅瀬/Risen Reef》
3《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》
2《裏切りの工作員/Agent of Treachery》

4《成長のらせん/Growth Spiral》
4《海の神のお告げ/Omen of the Sea》
2《霊気の疾風/Aether Gust》
2《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》
4《神秘の論争/Mystical Dispute》
4《空の粉砕/Shatter the Sky》
4《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》
4《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》
2《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》

4《繁殖池/Breeding Pool》
4《神聖なる泉/Hallowed Fountain》
4《寺院の庭/Temple Garden》
4《神秘の神殿/Temple of Mystery》
4《啓蒙の神殿/Temple of Enlightenment》
4《豊潤の神殿/Temple of Plenty》
4《寓話の小道/Fabled Passage》
2《平地/Plains》
2《島/Island》
5《森/Forest》

サイドボード
1《霊気の疾風/Aether Gust》
2《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》
4《ガラスの棺/Glass Casket》
4《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》
3《サメ台風/Shark Typhoon》
1《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》

Paulo Vitorのリストからは大きく異なるが、その理由も述べて行こう。

■個別カード解説

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「ボロスサイクリング」「赤単オボシュ」とアグロデッキが活躍しており、アグロへのプランは《空の粉砕/Shatter the Sky》+《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》だ。
特に1ゲーム目は「この2枚を揃えられないと負け」となりやすいため、アグロへのメインの勝率を担保するためにどちらも4枚。
ただし《空の粉砕/Shatter the Sky》はヨーリオンやティムール再生には弱くサイドアウト候補筆頭でもある。

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マナブーストしつつ手札を供給するこれらのエレメンタルはヨーリオンと非常に相性が良い。相手の行動を制限する《中和/Neutralize》を多く入れるよりもマナブーストで自分の行動回数を増やすことを優先した。
《発現する浅瀬/Risen Reef》はドローでは無いので相手の《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》に引っかからず、複数引くと爆発的なアドバンテージに繋がる。

《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》は5/6でアグロ耐性を持ちつつ、墓地が貯まるため《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》との相互作用が強力。
しかし《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》は《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》に対して弱く、複数引くと重すぎて打ち消し合戦に負けるカードなため3枚。

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場に残ることでヨーリオンの価値が急上昇するため、相手の視点からすると除去しないと圧倒的に不利になるカード。
強いパーマネントを奪ったうえで除去を強要するため、一旦場に出るとゲームが一気に傾く。しかし7マナと重く《神秘の論争/Mystical Dispute》を合わせられたら逆に敗北に繋がるため、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》で通る状況を作りたい。事故原因にもなり複数引きたいカードではないため2枚。

《裏切りの工作員/Agent of Treachery》を入れるなら2枚が望ましい。1枚目で相手の《銅纏いののけ者、ルーカ/Lukka, Coppercoat Outcast》を奪ってから[-2]能力で《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》を追放することで《裏切りの工作員/Agent of Treachery》の2枚目が場に出る。
《発現する浅瀬/Risen Reef》をルーカで[-2]すると《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》に変わる。ときどき起こるので覚えておきたい相互作用だ。

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どちらも初手をキープする理由になるカードであり序盤を支えてくれる上、後半引いても無駄になりにくい。
またインスタントタイミングで動くため、相手の《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《創案の火/Fires of Invention》《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》に対して打ち消しのマナを構えつつ行動が出来る。
2マナ域で序盤も後半も強くインスタントタイミングで動ける、この2枚こそがデッキの基盤を支えている。

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相手の呪文と自分の打ち消し呪文のマナ差があるほど、その打ち消しは価値の高いものになる。
今はヨーリオン中心のメタゲームであり、特に後攻時には相手の《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》を効率よく打ち消せる《神秘の論争/Mystical Dispute》はゲーム中に必ず引きたいカードだ。
3マナの《マナ漏出/Mana Leak》としても及第点の働きをするため、メインに4枚採用。

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選択枠。
繰り返しになるが、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《創案の火/Fires of Invention》《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》に対して打ち消しのマナを構えつつ行動が出来るのが大事。
そのためには《神秘の論争/Mystical Dispute》に追加で打ち消し呪文が必要で、《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》なら相手の《神秘の論争/Mystical Dispute》を無視できるため4-5マナを巡るゲームで輝く。
ただ《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》をメイン4枚にするとアグロデッキに敗因になるため、アグロへの使い道がありつつ《創案の火/Fires of Invention》《荒野の再生/Wilderness Reclamation》に触れる《霊気の疾風/Aether Gust》も少量採用して役割を分けた。
《霊気の疾風/Aether Gust》が無いと各種《創案の火/Fires of Invention》デッキやティムールエレメンタル、《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》にいいようにやられる。クリーチャーにも撃てる点がサイド後の《義賊/Robber of the Rich》《軍勢の戦親分/Legion Warboss》にも対抗できる。

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スタンダードでバントが強い理由のカード。相手の脅威を排除しつつ自身のプレインズウォーカーや《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》を戻せる。
2章効果の抑圧が強く、相手の呪文を2マナ増やしながら《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》で再利用すると概ねゲームに勝つ。
既存のバントでは墓地が十分に貯まらず3章効果を上手く使えないタイミングもあったため、《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》を強く使うためにも《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》を採用。

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3マナでありながらパーマネントを一時的に対処して、相手からのインスタントタイミングでの行動を制限する。
ボロスサイクリングに対しても、先攻なら《繁栄の狐/Flourishing Fox》《雄々しい救出者/Valiant Rescuer》に間に合う。ボロスサイクリングは出し直す時の2マナの価値が重いデッキなので、テフェリーで実質ターンを得るような動きになる。
弱いマッチが無く、3マナでありながら相手に与えるプレッシャーは非常に大きい。明らかにスタンダード環境のベストカード。

ヨーリオン対決やティムール再生には打ち消しを構え合う展開が多く、これが通るかがゲームの焦点になる。
6マナで《神秘の論争/Mystical Dispute》をケアしながら1枚目をプレイするのが基本的な動きだが、《神秘の論争/Mystical Dispute》された上で相手の返しの4-5マナに対して回答を持った手札で行動したい。
良く《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》と交換になる。

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《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》デッキの共通点として、除去されたヨーリオンを回収できる仕組みは欲しい。
[+1]能力は12枚入った占術土地と相性が良く、また《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》が破壊されたあとには確定で当たる。
何も無い状況で良く宣言するのは《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》、次に《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《空の粉砕/Shatter the Sky》を指定することが多い。
タミヨウが少量入っていることで、デッキ全体の出来る範囲が広がるので2枚。
しかし盤面に触る能力が無いのでアグロに対しては弱くサイドアウトする事も多い。

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80枚デッキになると、60枚デッキよりも確率の分散は増える。
そのためヨーリオンデッキにおいては、序盤の土地枚数を安定させて2色出る占術土地の価値は高い。12枚フルで採用。
ただその分タップインによる遅れも起こる。5ターン目までには2回のタップイン程度に抑えたいため、その他は全てアンタップインの土地にした。
青マナの不足が気になるようであれば《森/Forest》を《ゼイゴスのトライオーム/Zagoth Triome》に変える事を検討する。


■サイドボード

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アグロデッキ相手には2マナの除去が初手キープ基準になるので4枚。
ボロスサイクリングが台頭したため白いクリーチャーに対する2マナ除去が必要で、《敬虔な命令/Devout Decree》は以前ほど頼れる2マナでは無くなった。
ヨーリオンの効果で対象を選びなおせるのも重要。序盤は《焦がし吐き/Scorch Spitter》を追放して、中盤には《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》に移し替えることも多い。

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もともとはジェスカイルーカで採用されているカードだが、アグロへの耐性を大きく高めてくれるためサイドボードに採用。
赤単は1/1が多く、《熱烈な勇者/Fervent Champion》でもダブルブロックで倒せる。トランプル持ちはほとんど居ないためこれ1枚で6点以上のダメージを軽減してくれる。
ボロスサイクリングには《雄々しい救出者/Valiant Rescuer》のアタックを咎めることが出来るし、《繁栄の狐/Flourishing Fox》を2ターン止める。
そして最重要なのがヨーリオンで再利用が出来る点だ。3マナで実質4点回復+トークン4体のカードとなるので、アグロに対して「壁」「ライフ回復」の両方の役割を果たしている。
ラクドスサクリファイスに対してもトークンの横展開により《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》の生贄効果も弱く出来る。アタックしてきた1/2をダブルブロックすることも多い。
このカードを序盤に引けるかがアグロへの勝敗を分けると考えるため、4枚フル採用した。

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メインデッキに入っていないことを不思議に思うかも知れない。
《サメ台風/Shark Typhoon》は基本的にはマナ効率の悪いカードだ。3/3以上でないと盤面への影響は少なく、アグロデッキに対して何もしないことが多い。
《銅纏いののけ者、ルーカ/Lukka, Coppercoat Outcast》のようにトークンを出すことに意義があるデッキなら採用すべきだが、バントの場合はヨーリオンとのシナジーもなくメインの強さを下げるカードだと感じた。
《サメ台風/Shark Typhoon》が輝くのは、ヨーリオンやティムール再生に対して打ち消しを構え合う展開になった場合だ。特にサイドボード後はお互いが打ち消し呪文を増量するのでドローゴーの展開になりやすく、その展開では《サメ台風/Shark Typhoon》は必須とも言える。
通ってしまった《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》に対しての回答でもあるため、《サメ台風/Shark Typhoon》が合計0枚だと不利になる。しかし打ち消しの少ないメイン戦ではそこまで重要では無いと判断。

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デッキの根幹。
5マナ4/5飛行にアドバンテージが3つ以上付いてくるのは破格で、スタンダードでは最高の相棒だと考える。
このカードの登場により、役割の似た《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》は過去のものになったと考えている。ヨーリオンは常に手札にある《ハイドロイド混成体/Hydroid Krasis》だ。

■採用しなかったカード

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一番の問題はマナベースだ。
3ターン目に青ダブルシンボルを揃えるマナベースが意外と難しく、《島/Island》4-5枚かつ青いタップイン土地の追加採用をしないとプレイできない。
5-6ターン目に《中和/Neutralize》を構えながら《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》となると青青青青が必要になり、なかなか実現が難しい。
また《神秘の論争/Mystical Dispute》が良く使われる状況では《中和/Neutralize》は良い的で、打ち消し呪文としては《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》の方が信頼できるのでそちらを優先したい。
《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》の方がマナベースへの負担も少ない。

《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》はアグロデッキに対して盤面干渉せず、パスに近い状況になる。
同じ3マナ域を複数引いたときや、マナブーストによりヨーリオンの最大値が上がる事を考えると《発現する浅瀬/Risen Reef》の方が優先だと考えた。

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ボロスサイクリングに対しては心強いカードではあるが、他のアグロデッキにサイドインできない。
アグロデッキ対策枠を統一してサイドボードの枠を節約するためにも、赤単オボシュとボロスサイクリング、ラクドスサクリファイス全てにサイドインできる《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》を優先した。

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アグロデッキ耐性を考えたとき、《紋章旗/Heraldic Banner》《鍛冶で鍛えられしアナックス/Anax, Hardened in the Forge》《魔女のかまど/Witch's Oven》を破壊する役割がある。
メタゲーム上少数ではあるが、ティムール出来事の《幸運のクローバー/Lucky Clover》に対処できるカードでもある。
《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》と悩む枠だったが、2/1+4点回復と1/1トークン2体+2点回復だと、後者の方がヨーリオンで再利用できる分優れる。
《秋の騎士/Knight of Autumn》だとボロスサイクリングに対してあまり強くない事から今回は不採用。
しかし《秋の騎士/Knight of Autumn》は最後まで悩むサイドボード候補でもある。

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お互いに打ち消し呪文を構え合う展開では強い事もあるが、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》に対して致命的に弱い。
また中盤はお互いのカードパワーのぶつけ合いになってメイン行動するためトークンが出ない事も多く、これを引いて嬉しいターンが4-6ターン目に限られるため、他のカードよりも優先度は下がる。

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《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》の誘発型能力を打ち消せれば追放したパーマネントが戻らないため、最大値は高い。
しかし《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《創案の火/Fires of Invention》に対して無力なカードであり、サイドインできる幅の広さを考えると他の《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》《神秘の論争/Mystical Dispute》《霊気の疾風/Aether Gust》を優先したい。


■サイドボードガイド

・バントヨーリオン

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マナが伸びない序盤に先に仕掛けると、《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》→打ち消し→返し相手のテフェリーで即敗北となるのでリスクをケアした方が良い。
6マナまではお互いに土地を揃えて、相手のエンド時にドローや《サメ台風/Shark Typhoon》をサイクリングするゲームになる。
相手のサメを自分のサメでブロックして《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》を守る展開が頻発するので、サメで攻撃する前に呪文をプレイして通るかどうかを見てから攻撃を判断しよう。

6マナ目以降は常に《サメ台風/Shark Typhoon》を意識すべき。
打ち消しのためにただマナを構え続けるのではなく、相手に大きな値で《サメ台風/Shark Typhoon》をサイクリングさせないためにもメインで動きべき瞬間がある。
《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》さえあれば相手の大技は返せるので、5マナで《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》or《発現する浅瀬/Risen Reef》、7マナで《茨の騎兵/Cavalier of Thorns》が基本となる。

全て打ち消すのは不可能なので、何かが通っても有利を維持できる場を作りたい。理想は《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》が通っても返しの攻撃で倒せるような場だ。
《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》は実は2ドロー程度なので、無理して《神秘の論争/Mystical Dispute》で消す必要は無い。


・ジェスカイルーカ

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バント同様打ち消しを構え合う展開になるが、バント側の方がマナブーストにより行動回数に差を付けやすい。
相手の《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》との相討ちを目的にこちらも《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》を少しサイドイン。
《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》は忠誠度1で場に残ることが多いのでそれに対する牽制にもなる。
ただロングゲームでは弱く、単体でアドバンテージを得ないのでサイドインしすぎないように2枚。


・ボロスサイクリング

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メイン戦は負けやすく、大きくサイドを入れ替える相手だ。
いかに序盤を耐え凌ぐかがが重要なので、2-3マナが弱い手札なら強めにマリガンしよう。
ゲームの方向はシンプルで、《空の粉砕/Shatter the Sky》を撃ってライフを高水準に保つこと。
《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》《自然の怒りのタイタン、ウーロ/Uro, Titan of Nature's Wrath》でライフを維持していれば《天頂の閃光/Zenith Flare》1発は耐えられる。
2発目は《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》を合わせよう。
対象が《天頂の閃光/Zenith Flare》のみに対して《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》4枚は多すぎると感じるかも知れないが、相手は《一心同体/Fight as One》をサイドインする事が多く、6マナで《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》構えの《空の粉砕/Shatter the Sky》も多い為4枚で問題ない。

・ティムール再生

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バントやジェスカイルーカ同様、打ち消しを構え合う展開になる。
ティムール再生にはカウンターを恐れず自分からしかけた方が良い。ティムール再生の方がドローゴーに最適化されたデッキであり、ターンが経つほど相手にマナブーストとドローで完璧な手札を作る余裕を与えてしまうからだ。
特に《サメ台風/Shark Typhoon》でプレインズウォーカーを攻撃で対処されるのが最悪のケースなので、5マナで《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》構えで3マナアクションを取りたい。。
《神秘の論争/Mystical Dispute》ケアで6マナから《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》したとしても、《神秘の論争/Mystical Dispute》で3マナ払って更なる打ち消し→返しに《荒野の再生/Wilderness Reclamation》《発展+発破/Expansion+Explosion》で負けることもある。

《荒野の再生/Wilderness Reclamation》は通っても《エルズペス、死に打ち勝つ/Elspeth Conquers Death》《時を解す者、テフェリー/Teferi, Time Raveler》で対処できる。
本当に打ち消すべきなのは大量アドバンテージ獲得の《発展+発破/Expansion+Explosion》で、ここだけは絶対に打ち消す展開を考えよう。


・赤単オボシュ

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ボロスサイクリング同様、2-3マナが弱い手札なら強めにマリガンしよう。
方向性も同じく《空の粉砕/Shatter the Sky》を撃ってライフを高水準に保つことだ。《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》が最も良く効く相手だ。
《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》はゲーム中1枚だけ引けると役立つので2枚残し。


・ジェスカイケルーガファイアーズ

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相手はサイド後《軍勢の戦親分/Legion Warboss》フル投入なので、こちらも《空の粉砕/Shatter the Sky》はフルで残す。
マナブーストによる行動回数差をつければのちの打ち消しの構えやすさが変わるので、序盤は相手への妨害よりもマナブーストを優先したい。


・ティムールエレメンタル

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《霊気の疾風/Aether Gust》は何ターン目でも強く、実質相手の1ターンを無効化してくれるので大事に使おう。
相手のマナブーストに追いつくため自身もマナブースト行い、5-7マナのターンに《霊気の疾風/Aether Gust》《神秘の論争/Mystical Dispute》を構えるのが理想的な展開だ。
《発生の根本原理/Genesis Ultimatum》のために少しだけ《ドビンの拒否権/Dovin's Veto》を残すが、後手では相手の《発現する浅瀬/Risen Reef》除去のために《空の粉砕/Shatter the Sky》4枚フルの方が良いだろう。

・ジェスカイウィノータ

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人間でないクリーチャーをいかに《空の粉砕/Shatter the Sky》で流すかのゲームになる。
小粒クリーチャーが多い為破壊されやすい《伝承の収集者、タミヨウ/Tamiyo, Collector of Tales》はサイドアウト。
クリーチャーが横並びしているなら4ターンの《軍団のまとめ役、ウィノータ/Winota, Joiner of Forces》には《霊気の疾風/Aether Gust》《神秘の論争/Mystical Dispute》を構える必要がある。
《霊気の疾風/Aether Gust》《神秘の論争/Mystical Dispute》《空の粉砕/Shatter the Sky》を序盤に撃てないとそのまま《裏切りの工作員/Agent of Treachery》で負けるので強めにマリガンした方が良い。


・ラクドスサクリファイス

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2/1や1/2サイズのクリーチャーが多い為、《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》を引けるかがとても重要だ。1/2をダブルブロックすることが多いし、《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》をブロックして食物トークンを消費させよう。
《忘れられた神々の僧侶/Priest of Forgotten Gods》の生贄能力も《太陽の神のお告げ/Omen of the Sun》で弱く出来る。


■おわりに

この記事がトーナメントで勝ちたい真剣なプレイヤーたちの手助けになればと思う。
重要な点は網羅したつもりだが、質問がある場合はNote経由で気軽に聞いてくれれば不足点を補うつもりだ。

それではまた。大会での幸運を祈る!




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