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3月

【音楽】
Nia Archives 『Sunrise Bang Ur Head Against Tha Wall-EP』

ジャングル、ドラムンベースのリバイバルを牽引するNia ArchivesのNew EP。アフロミュージックも取り入れた正統のジャングルでめちゃくちゃかっこいい。

Yves Tumor 『Praise A Lord Who Chews But Which Does Not Consume; (Or Simply, Hot Between Worlds)』

ロックスターはもうYves Tumorしか居なくなってしまったのだろうか。孤高の輝きを放つアンニュイな存在感はPrinceをトレースする。

Lana Del Rey 『Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd』

彼女らしいノスタルジアやシニカルなユーモアと批評性に溢れたリリックが相変わらず最高。

JPEGMAFIA & Danny Brown 『SCARING THE HOES』

敢えてBandcampのジャケットで(笑)。攻めすぎなジャケット同様、内容も攻めているというか遊び心満載。Peggyの類い稀なるサンプリングスキル×Danny Brownのファニーなリリック、粘着質なフロウは相性抜群。

Black Country, New Road 『Live at Bush Hall』

Isaacが抜けた後、新たに羽ばたこうとしているその瞬間をいま目撃しているようで感慨深い。リリックやサウンドも今までの自分たち、Isaacと皆で創り上げた過去を肯定しながら別れを告げ新たな門出を祝うような祝祭感。来日公演がなおさら見逃せない。

Liturgy 『93696』

どこかハリボテのようなニセモノのような深淵さ。嘘のようで神秘的なものに導かれて安らぎの虚無へ向かう。

Depeche Mode 『Memento Mori』

現役すぎる。日本来てね

Navy Blue 『Ways of Knowing』

彼自身の想い出や郷愁を紡いだリリック、レゲエも取り入れたブーンバップ。トライバルな趣きもある今年リリースでもかなり完成度の高い1作。

Varnish La Piscine 『THIS LAKE IS SUCCESFUL』

Hit-Boy 『SURF OR DROWN』

特にThe Alchemistとの共作M8は必聴。お互いのビートでそれぞれがラップしていて、ラップもちゃんと上手くて才能にびっくり。

boygenius 『the record』

B. Cool-Aid, Pink Siifu & Ahwlee 『Leather Blvd.』

Larry June & The Alchemist 『The Great Escape』

Softcult 『See You In The Dark-EP』

Tyler, the Creator 『CMIYGL: The Estate Sale』

アウトテイクとは思えない完成度。タイラーの全盛期はまだまだ続く。

Mantra 『Damaged-EP』

【ライブ】
Arctic Monkeys 『Asia Tour '23』

中学生の時から聴き続けているバンドであまり実感が湧かなかったが確実にそこにいた。圧倒的なパフォーマンス。シックで落ち着いた演奏を予想したが、二曲目でBrianstormをいきなり演ってぶち上がり。完璧で洗練されながらも、かつての勢いも内包した最強のバンドになっていると感じた。マジで最高のライブでした。

【映画】
Everything Everywhere All At Once

マルチバースとは言うものの、どちらかと言うとメタバース的な有象無象が繰り広げられていた印象だった。理想的な別の世界線に生きる自分/何もかも上手くいかない自分という対比構造はまさしくメタバースにおけるそれ。ジャンプの発動条件が変な事をするっていうのは面白いけど、若干スベってる所もあるし下ネタばっかり笑。でもここにこの映画の本質があると思ってて、兎に角くだらない。A24だからちょっと高尚なのかと思ってたけど、『スイスアーミーマン』系のやつ。コメディ映画としては全然面白い。
テーマが個人的にはあんまりだった。こんな時代だからこそ逃避のためのマルチバースであって欲しかったけど、現実と向き合って大事な人を愛せ!って感じのメッセージ性はnot for meだったなぁ。アルファバースでのエブリンとジョブの関係性って過度な期待による重圧っていう母娘関係において割と重要視されてるテーマだと思ってて、そのジョブは一貫して気だるくて虚無の中しょうがなく生きてる感じでZ世代だなって感じで共感もできたんだけど、それも最終的に家族愛!!!って感じで半ば強引に家族である事を強制されてる感じがあって🤔。ただ、エヴリンがウェイモンドの大切さを再確認するパートナーの描写はめちゃくちゃ良かったと思う。
期待値高いだけに若干微妙に感じるところはあるけど、基本的には面白い映画だった。Son Luxの手掛けるスコアもとても良かったし。それに加えて挑戦的な映像表現は見ていてずっと楽しかった。アクションはちょっとスロー多用しすぎなのが不満かも。

追記
監督やっぱり『スイスアーミーマン』の人達だったんだ笑

The Fabelmans

現存する最も偉大な映画監督といえるスピルバーグの自伝的な映画という事で感動作になるかと思ったらそこの予想は裏切ってきた。映画に救われる映画だと思っていたら、映画に呪われる映画だったという。。
幼少期の日々を描いた前半は、スピルバーグの映画との出会いであったり古き良きアメリカという『ニューシネマパラダイス』を思わせるようなタッチで、そこはそこでめちゃくちゃ感動したんだけど、中盤からそんな和やかな話から急展して家族間の不和や学校でのイジメが始まる。ただ、そこでスピルバーグはその状況を俯瞰しているような趣がある。それは、スピルバーグがカメラ(映画)に取り憑かれてしまったから。
キャンプの映画ではレンズを通して知る残酷な事実を、プロムの映画ではレンズを通す事による現実の可変性を知るシーンは見事としか言いようがない。
そしてリンチすぎるジョン・フォードもサプライズでめちゃ良かった。急にリンチワールドになって呆気に取られていると、その台詞を回収する遊び心あるラストで映画が終わる。
良い意味で集大成感が無くて、これからも映画を作り続けるという映画に囚われた自由な囚人スピルバーグの果てしない創作意欲を感じて嬉しかった。これからもまだまだ馬鹿みたいに映画を撮って欲しい。

【本】
チャック・パラニューク 『インヴェンション・オブ・サウンズ』

陰謀なのか世界なのか、ここに居る私以外の全てが私を飲み込むさまを鋭利な文章で紡いだパラニュークの最新刊。映画の音響、それも悲鳴に焦点を当てた辺り、パラニュークの映画への思いが見て取れる。ミッツィの追求する全世界の人々が同時に発する悲鳴/大脳辺縁系共鳴が示す現代社会における集団心理の危うさ。そしてそれが主題に回収されるプロットも巧い。カットバックされて進行する二人の物語はすらすら読める。こんなに集中して一気に読めた本は久しぶりかもしれない。

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