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映画「ソー:ラブ&サンダー」を見てきた。派手な色から、落ち着いた色へ。

昨日、映画「ソー:ラブ&サンダー」を見てきました。この映画のヴィラン(ゴア)誕生。ソーと、ガーディアン・ギャラクシーのメンバーとの交流。そして元恋人(ジェーン)ともに戦いへ、という話でした。前半、特に神様たちの星のところなんかは色彩豊かで見ているだけで楽しかったです。時々、笑いも入ってそこもよし。映画館では笑い声が聞こえてきました。楽しく見られました。特にソーの武器が、ソーが他の武器に興味を持つと嫉妬からか、変な動きを見せるのが面白かったです。

楽しくは見られたのですが、映像が見せるワクワク感と、時たまの笑いが楽しいのが主な作品でした(それが全てで良いとも思いますが)。ガーディアン・ギャラクシーのメンバーの別れから、元恋人との出会い、そしてラストの場面から(願いが叶うところ)「愛」がテーマなんでしょうけれど、そのテーマが話の中に上手いこと盛り込まれているかというと、そうは私は感じなかったです。

ソーは魔法を使います。なので、戦いで苦戦して緊張感を出すのが難しい。なんでもありなので。ゴアは神殺しの剣を持っているので、その武器で「ソーも殺されるのでは?」という緊張感はあったけれど。
ゴアとソーに因縁があるわけではないです。物語の構造的にはソーは戦いに巻き込まれた形です。ヴィランがソーを狙う理由も最初はわからなかったです(ゴアは神様を殺しまわっているので、その一環ではありますが)。どうやら願いを叶える場所に行くのにソーの武器が必要というのが終盤でわかります。ソーの武器がなぜ必要なのか、願いを叶う場所に行ってゴアが何がしたかったか、もっと早く教えてくれてもよかった。そうすればゴアを中心に作品見られたのに。
ソーは今の生活に寂しさを感じているとはいえ、彼のことはもう三作品で描かれています。主人公であるにはあるけれど、彼の変化を作中で描くのは難しかったのでしょう。ソーが何かに葛藤している場面はなかったです。
となると物語の主軸となる人物はジェーンかゴアになると思うのですが、満遍なく描いているせいなのかどちらも印象が薄くなっています。
ジェーンは癌であり、かつてソーの武器だった「ムジョルニア」の力によって癌を抑えています。そういう描写があるのですが、ムジョルニアの力をどう使って癌を抑えているのか、どう使わないと元気な体でなくなるのかの理由は説明されません。そこらへんの説明があれば、その部分で緊張感が出て楽しめたんじゃないかなとも思えます。
ゴアもジェーンも神の武器で命を長らえています。ゴアとの二回目くらいの戦いで思ったのですが、命を長らえたことで行なっていることは一方は復讐で、一方は仲間を守るための戦いです。そこら辺の対比を強調しても良かったんじゃないかな、とも思いました。最後に「愛」が強調されるので「愛」がテーマなのだと思いますが、私自身はこの二人の「死を近しいものとして感じた者が生きながらえた時、どう生きるか」これがテーマではないかなと思ってました。しかし、対比も私が感じた瞬間だけ描かれているだけのようでした。
ゴアの願いは「死んだ娘と会うこと」と最後にわかるわけですが(願いを叶うところで初めて気づいたようでした)、ゴア自身は気付いてないけど頭に娘がチラつくなどの演出を入れ(子供たちをさらったのは、そういうことの隠喩だったのだろうか? 正直なぜ子供を攫ったのか意味がわからない。ソーを誘き寄せるためなんだろうけど、戦いの時の人質にもなってなかったし)、癌をムジョルニアで回復したジェーンがニュー・アスガルドで一人の子供と出会い、そして交流を描くことによって「ひとつの愛の形」を見せ、その子を救うため(子どもをさらう展開は同じで)に戦いに行かせれば「愛」というテーマがより明確になったのではないかと思いました(書いてて思いましたが、ベタですね。今時古いかな。これはこれで「今時こんなこと描いているのか」と自分で文句言いそう)。ジェーンとソーの関係で愛を描けないかと考えましたが、思いつきませんでした。ジェーンがソーと別れなければ良かった、なんて思うはずもなく(それを見せるとキャラクターが変わる)、と言ってソーにジェーンの大切さに気づかせるとしたらジェーンは癌で病弱な存在として映画で描かないといけない部分もでてきてしまいますもんね。ジェーンには強い存在として活躍してほしい。でも、理想なのはジェーンとソーの関係の中で新たな愛を描いていくことによって「愛」というテーマを浮き彫りにすることだとは思いました。それは難しくて私には思いつかないけれど、それが描かれていたらすごく傑作になっていたかもしれないですね。

よく考えたら、ジェーンが命を長らえて何がしたいのかわからなかったですね(もしかしたら描かれていて、私が気づかなかっただけかもしれないけれど)。明確に生きて行ないことなくても、命を長らえたいという気持ちはあると思いますが、何がしたいのか、それが分かればより面白く見れたと思います。打ち込んでいら研究があるから、それを進めたいのか。それとも、自分の命を長らえさせてくれた「ムジョルニア」に感謝し、それを保管していたニュー・アスガルドのために行きたいと思ったのか。映画を見ている限りでは、ニュー・アスガルドを守りたく思っているようには見えましたが、それを命を長らえたことによる決意のためだと伝えてほしかった。ジェーンのニュー・アスガルドでの生活を見せてくれれば、説明でなく映像で伝わると思う。そういう描写がないから「まあ、そういうことで。ジェーンはニュー・アスガルドの子どもを助けたいのだろうな」と思うしかないんですよね。でも、それが正しいのか見ている方には断言ができないわけで、何のために戦っているのわからなくなるんですね。(「ムジョルニア」の力で生きながらえているとはいえ、体も悪いのに)。
ジェーンが何を求めているのかわからないので、人物性が立ち上がってないように思えました。
この映画で人物性が立ち上がっているのは、ソーくらいなんですよね。でも、この映画では傍若無人に暴れ回るような感じは前半だけで、後半はアスガルドのリーダーとして振る舞わないといけないから勝手なことができず「このキャラクターは面白いことしそう」という展開があまり期待できないところも、楽しませる要素が少なくなってますね。

前半は楽しく見ていたのですよ。ガーディアンズ・ギャラクシーのメンバーとの共闘や、ジェーンとの過去とかもあまり話大筋には関係ないけれど楽しく見ていて「物語の筋とは関係ないところや、過去回想も面白く見せてくれてすごいな」なんて思いながら見てました。違和感を感じたのは、神様が集まるところに助けを求めに行って、助けが得られないとわかると(相手から襲ってきたとはいえ)、ソーたちが戦闘を始めるところ。戦闘描写自体は楽しかったけれど、それはないだろと思いました。もう少し仕方ないから戦ってる感を出してくれればいいのに。

ゴアの神殺しの剣以外、見ている人にどんな困難があるか見せてくれないんですよね。ソーたちが早く行かないと、子供がどうなるのかとか明示してくれてもいいのに。神様たちの星に行く時、協力してくれないだろう予測を見せてくれてもいいのに。ゴアが操る影の敵の恐ろしさをもっと強調しても良いのに。ゴアの願い(子供と会いたいという本当の理由でなく、それを隠すための目的。人々に恐怖を与えるような)を描いても良いのに。

直接見せなくても良いけれどテーマを感じさせる演出(こういうことを伝える映画ですよ、という何となくなこと。それが本当のテーマでなくても良い)と、ソーたちの前にはだかる困難さを見せる演出が少なかったのが、あまり楽しめなかった理由だろうか。それを踏まえたうえで、ジェーンの長生きしたい目的があればよかった。
ソーがなんでもできちゃう存在じゃなければ「こんな困難どうやって乗り越えるんだ」とも思えたかもしれないけれど、いかんせん「神様の力でどうにかしちゃんだろ」とどうしても思っちゃうからね。それでもきちんと説明あるか、ゴアの存在を大きく見せていれば緊張感出るかもだけれど。神殺しの剣がない時の、ゴアの力がいまいち見えなかった。絶対強者に見えなかった。

前半の豊穣な色彩で描かれる映像は見ていて本当楽しかった。それを見せてからのほぼモノクロの映像も良かった。豊穣な色彩が前半にあったからこそ、その落差からより映像に注目した。冒頭にも書いたけど、ソーの現主要武器のストームブレイカーが、ソーが他の武器に興味をもつと嫉妬する場面が面白かった。ヤギも良かったね。戦闘場面はもちろん楽しかったけど、最後の戦いでソーが子供たちに力を授けて戦う場面は笑いつつ、楽しんだ(そんなのありなのか、幼い子どもも戦わせるのかと思ったけれど)。画像表面の動きは素晴らしいと思う。そこにもう一つ、人物や、人物の関係から見える動き。先を見せることによって想像させる、その想像が生み出す動きなどがあればすごい良かったです。

一番最後の場面でソーが、ゴア(ゴアの願いで甦った? そしてゴアは亡くなった?)の娘と一緒に暮らしいる場面は、びっくりではないけれど驚きました。「愛を見つけた」というようなことを言っていたので、ジェーンがガンを克服したのかと思いました。ソーとゴアの娘の関係性を次の作品で描くなら、とても楽しみですね。

文句が多いように見えますが、楽しみましたよ。


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