最終話 はなむけ

第1話「01 鍵」

前話「29 地下一階」


 光がするりととけた。暗闇が覆う。
 それは悼みであり、痛みであった。

 けれどもあなたはあなたの意志で、すでに踏み出していた。あなたが思う、あなたにとっての前へ。
 あなたはおそれながらも歩みを止めないだろう。あなたは知っているから。

 それは水がめぐるように。ただひとつの命。たからもの。

 歩き続けるあなたの頬に、やがて苹果りんごに似た色の光が寄り添う。
 光が満ちていく。洗われた、まっしろな光。響く音は、さざなみの音。

 仄青い花びらが、海風に舞っていった。

 あなたの表情は見えない。
 ひとひら、ひとひら、あなたの手から、おくられていく。
 やがて、あなたのてのひらはからっぽになった。

 ――さあ、いずれまた、逢いましょう。

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