毎日400字小説「再会」

「でも、先輩彼女いるし」「でも、それと茉由が好きなのとは、関係なくない?」「えーそうかな」「絶対、気持ち伝えたほうがいいって」
 女友達とそんなやり取りをした末、渡り廊下に呼び出し、「彼女いるのわかってるけど好きってことは知ってほしくて」大人になった今考えるとイカれてるとしか思えない女子高生の理屈で告白した。けれど先輩を追っかけてた一年間は今の十年分よりも濃くて長くて、必死だったなあたしと、ほろ苦く振り返る分にはもってこいだった。偶像化し、都合のいいことだけ集めてしまってた。あんなふうに人を好きになることは、もうない。美しく、いい思い出だった。青春だった。相手に、二度と会うことがない限りは。
 うち来いよ、と、その先輩が自信満々に誘ってくる。モテから随分遠ざかったビジュアルの上、ねちっこい。あたしは、自分の見る目のなさを棚に上げ、なんであのとき止めてくれなかった、友よ、と怒っていた。

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