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かつて高校生だった私へ 何者でもない私より

晴天に恵まれながらも寒さは容赦なくやってきたその日、私はまた一つ未来に足を踏み入れた。

桜はまだ咲かない。北風がセットした前髪をかき混ぜて走り抜けていく。数ヶ月ぶりに顔を合わせた友達ときゃあきゃあ騒いで写真を撮り、実感ないねーなんて中身のない話に興じる。


あの小さな世界から自分の居場所がなくなって から、早くも5年半が過ぎていた。かつての私は生きるモチベーションなど持ち合わせていなくて、明日の朝が来ませんようにという絶望を煮詰めたような祈りだけがそこにあった。
ただ日々をやり過ごすことさえも限りなく不可能に近かった。新しい一日が始まるたびに苦しくて、消えてしまいたかった。


進学も就職も卒業も遥か遠くにあったあの頃。
毎日を精一杯繋ぎ止めていた高校生活。
人に話すと涙が止まらなくなる過去。
本当に、ほんとうに辛かった。辛くて苦しくて、もがきながら生きていた。



ねえ、あのさ。
私、生きててよかったよ。
何度も死のうとしたね。カッターナイフの冷たさも首を絞める息苦しさも怖かったね。頑張りたいのに頑張れなくてやり切れなかったね。
あなたは死ねない自分のことが情けなくて泣いていたけど、今になって死ななくてよかったって思うんだ。

今もあなたの隣にはずっと親友がいて、嬉しいことも辛いことも全部一緒に背負って歩いてくれてるよ。

空っぽのあなたの手を握って、そのままの君でいいよって言ってくれる大好きな人に出会えるよ。

高い壁の前で「一緒に頑張ろう、私たちなら大丈夫」って励ましてくれる大事な友達に恵まれるよ。

変わりたい私の背中を押してくれる仲間に巡り合うよ。

あなたが思うほどあなたはダメじゃないし、あなたが思うほど世界は怖くないよ。


私は変われたのかな。あの時は敵だった大人と違う大人になれたかな。

結局私は死ねなかったよ。割と最近まで死にたかったけど。でも行動するところまで行かなくて、死にたい気持ちを背負って歩いてた。あなたが見たら何て言うだろうな。それなりに生きてるつもりだから怒らないで。

きっと私はこれからも死ねないし死なないと思う。生きて、自分の未来を見て、大切な人たちと歩んでいくんだと思う。それでいいって思えるくらいには変わったよ。多分あなたにとっては“良くない”変化なんだろうけど。でも私はそれでよかったと思ってる。

ありがとう、生きていてくれて。
ありがとう、夢を捨てないでいてくれて。
あなたがあなたでいてくれて、本当にありがとう。

じゃあね。またどこかで。おやすみ。

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