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ホドロフスキーと千葉真一。

9月の連休。休み中の予定は京都でのライブが2本(と墓参り)だけだったので、家で結構映画を観た。奥さんは西成に出張中だしね。
思えば10代後半から20代前半までは割と映画少年で、銀座の並木座やら池袋の文芸坐やら浅草東宝やら、あちこちの名画座に通ったものだが、最近はDVDやらオンデマンドばかり。でも、映画は映画なんだよなあ。配信で聴いても音楽は音楽なのと同じで、物足りなくなったらレコードに戻ったりしつつ、バランスを取りながら暮らしている。

さて、9月後半に観た映画はこんな感じ。

1.エンドレス・ポエトリー(アレハンドロ・ホドロフスキー監督/2016年)
2.ホドロフスキーのサイコマジック(アレハンドロ・ホドロフスキー監督/2019年)
3.狂った野獣(中島貞夫監督/1976年)
4.ボディガード牙(鷹森立一監督/1973年)
5.ボディガード牙 必殺三角飛び(鷹森立一監督/1973年)
6.激突! 殺人拳(小沢茂弘監督/1974年)
7.殺人拳2(小沢茂弘監督/1974年)

1は、文句なしの傑作。ホドロフスキーとレオス・カラックスは、僕が映画少年だったころ、同時代でもっとも衝撃を受けた監督かもしれない。当時は好きな映画を聞かれたら、結構な確率で『サンタ・サングレ』と答えたりもしていたし。でも、『エンドレス・ポエトリー』は、過去の作品を軽く超越している感じがする。激しくてあたたかくて爽やかさも感じる。未見の方は前作『リアリティのダンス』とあわせて、ぜひ。

2は、そんなホドロフスキーが考案した「サイコマジック」という心理療法についてのドキュメンタリー(?)。「?」をつけたのは、どこまでがドキュメンタリーなのか、不可解な点があったから。でも、映画はすごくよかった。「サイコマジック」療法はダンスセラピーにも通じるところがあるけど、なんというかホドロフスキーならではのイマジネーション全開で「徹底的にやる」感じが凄まじくも素晴らしい。

3は、『暴走パニック 大激突』(1976年/深作欣二監督)と並ぶ「東映2大カーアクション映画」だが、僕にとってはどちらも「渡瀬恒彦映画」である。若い頃の渡瀬恒彦は、クールな野獣のようでカッコよくて、しかし『仁義なき戦い 代理戦争』みたいな、哀愁ある情けなさもあって大好きなのだが、『狂った野獣』では「スタントを使わない」渡瀬恒彦の身体能力と度胸が堪能できる映画。内容はカーアクションというより、密室型サスペンス。面白かった。舞台が京都なのもよかった。

さて、ここから4本はすべて千葉真一主演映画。『直撃!地獄拳 大逆転』(1974年/石井輝男監督)は、(良い意味で)「バカ映画の大傑作」だと思っているのだが、『ボディガード牙』や『殺人拳』シリーズは未見だった。まあ、どれをとっても、千葉真一が凄い。渡瀬恒彦の身体能力も凄いが、この頃の千葉ちゃんは超人である。特に『激突! 殺人拳』での志穂美悦子と千葉治郎(実弟)との対決シーン。顔芸と独特の動きが凄すぎて、観ている者の思考を停止させるレベル。あと、デビューしたばかりの志穂美悦子がすごく可憐で輝いているのだが、いきなり目を潰されたり(『ボディガード牙 必殺三角飛び』)、香港に娼婦として売りとばされたり(『激突! 殺人拳』)と、その扱いはかなりひどい。

僕が愛をこめて「バカ映画」というとき、その絶対条件として「とにかく面白いこと」があげられる。そういう意味で上記4本の千葉真一映画はどれも素晴らしき「バカ映画」である。千葉真一映画は、内臓をつかみだしたり目玉が飛び出したりと、僕の苦手なグロ描写が結構出てくるのだが、その「作り物っぽさ」でギリギリ見られる、かな。その辺はホドロフスキーも一緒かも。いや、一緒にしたらいけないか。

しかし、ホドロフスキーは現在93歳。『リアリティのダンス』に始まる3部作の最終作は、なんとか完成させてほしいなあ。


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