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「夫婦に必要なもの」を確かめ合った夜

おはようございます、ゆのまると申します。

昨日12月17日は、我々夫婦の結婚記念日。早いもので、入籍してから丸3年を迎えました。

事あるごとに感謝の気持ちは伝え合っているものの、せっかくだから落ち着いたレストランででもお祝いしようか。そんな話になりました。

イタリアンがいいかな、それともお寿司と日本酒で優勝もいいな。あれこれ悩みながら、最終的に決まったのは熟成肉が自慢というお店。夫は以前に行ったことがあるようで、お店の前を通るたびに「ここ、美味しいよ」と聞かされていたので気になっていたのでした。

「熟成牛のステーキ」をメインにした、計7品のコースを予約。なんだかんだ週に一度は外食をしている我々ですが、予約をするのは久しぶりで前日から楽しみにしていました。


そして昨日。予約の時間に合わせてお店に向かいます。前を通ったことは何度もあるものの、中に入るのは初めて。狭い階段を上って店内に入ると、……最初にあったのはかすかな違和感でした。

店内にはボックス席が4つと、少し離れてテーブル席が2つ。都内の雑居ビルの中ですから広さは期待していませんでしたが、それでもかなり「密」な印象を覚えました。

「なんだか今時珍しいな……」そう感じたのは、奥のボックス席が盛り上がっていて、会話まで筒抜けだったからかもしれません。

それでも気を取り直して、早速乾杯のスパークリングワインを注文。予約したコースの確認などがなく、通常の注文かのような雰囲気があったので思わずこちらから聞いてしまいました。

もしや予約が通っていないのではと焦りましたが、そんなことはなく一安心。気だるげな女子大生風のバイトちゃんだったので、あまり深く考えないことにしました。

飲み物がやってきて、「今までありがとう、これからもよろしく」と契約更改をお祝いします。もう10年くらい一緒にいるみたいだ、そんな話題に花を咲かせました。

予約したコースは一品目にアミューズとの記載が。ところが待てど暮らせど最初の一皿が運ばれてきません。

お腹空いたねぇ、となんとなく不安になりながら話していると、スパークリングワインが空になる頃になってようやく、綺麗に盛り付けられたサラダが運ばれてきました。

……うーん、メニューには二品目に「スモークサーモンと能登野菜のサラダ」とあるけど。サーモン、乗ってないな。

しかしドレッシングは美味しいし、普段野菜不足な生活を送っているので嬉しい一品です。なんとなく夫の表情も曇ってきたように感じながらも、美味しいワインも手伝って会話は尽きません。

しばらく経って、次に運ばれてきたのはオードブルとガーリックトースト。

牛タン、ローストビーフなどどれも美味しく、赤ワインが進みます。飲んでいたのは先日別のお店でも飲んだサンジョヴェーゼでしたが、こちらの方が落ち着いた風味で飲みやすい口当たりでした。

この時点で、入店してから1時間が経過。次に頼むワインのこともあるし、つい別の店員さんをつかまえて「このコースってどこまで進んでますか?」などと聞いてしまいました。

人の良さそうな店員さんは、「少しメニューが変わっておりまして」としどろもどろ。……なるほど、じゃあ大丈夫です。ところで食べ終わったお皿下げてもらって、あとついでにさっき頼んだお冷ももらえますか?


結局、二人して居心地が悪くなってきてしまい、ステーキとパスタが出てきた頃には逆に面白くなってくる始末でした。

肝心のお肉も、美味しかったんですよ?でも写真に撮る余裕もないくらい、「とりあえずおうちに帰ろう」、その一心でした。味は悪くなくても、お店の良さって、それ以外にもいろいろありますよねぇ……。

夫と一緒になって呆れて笑いながら頭の片隅に浮かんでいたのは、「こういう時に怒り出す人じゃなくてよかった」という切実な思いでした。

たとえば頼んだ料理がなかなか来ない。そんな時実家の父や兄は、絶対に機嫌が悪くなり、あまつさえ店員さんに直接文句を言うようなタイプです。

無論正当な文句であれば伝えることは悪くないと思うのですが、私はそうして楽しい空気が壊れるのが本当に嫌で。家族で外食をする機会があると、何か父や兄の機嫌を損ねることが起きたらと考え怯えていました。

その一方で夫は、機嫌の悪さが態度に出るということがほとんどありません。

その達観した態度があまりに不思議で、何度か「どうして怒らないの?」と聞いたことがあります。いわく、「怒っても何も変わらないし」とのこと。文句を言って改善する事柄なのかどうか、夫はその点においてとても冷静な判断ができる人なんです。

夫婦で過ごした時間の長さでいえばまだまだ先輩方には敵いませんが、それでもうっすらとわかってきたことがあります。

楽しい、いいことは大体の人と共有できるけれど、パートナーに求められるのはしょうもないことを笑い話にできるかどうか、ということです。よっぽど危険な場合でなければ、険悪な雰囲気になったり、一方が落ち込んだりすることなく身に降りかかってきた災難をやり過ごせか。夫婦円満の秘訣はそこにあるのではないかと感じています。

今のところは夫の器の大きさに助けられることが多い私ですが、少しずつ、その大らかさを見習っていきたいなと思っています。


よくわからないディナーを終えて、冷たい雨に打たれながらの帰り道。

自分で予約した手前若干の気まずさを感じつつも、私はこう切り出しました。

「日を改めてお祝いの仕切り直し、しない?」

お店の用意した自慢の料理とお酒を、変に気遣うことなくゆったりと楽しみたい。予約した時から抱いていたワクワク感は、十分に満たされたとはいえません。

「いいね、僕もそう思ってた」

言葉で表現するのは難しい、こうした価値観の一致。それができる相手であることに改めて感謝しつつ、今度は安心と信頼のおけるお店をしっかり選ぼう、そう決意した私なのでした。おしまい。



この口コミをもっと真剣に読んでいれば……。


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