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Harpers Bizarre「Anything Goes」(1967)

私の大好きなハーパーズ・ビザール。殆どの方はこのバンドをご存知ないと思われますが、ドゥービー・ブラザーズやヴァン・へイレンのプロデューサーとして著名なテッド・テンプルマンが在籍していたバンド、と言えばピンと来られる方もいらっしゃるかもしれません。

といってもそのサウンドはアメリカン・ハードロック的なものでは全くなく、オールドポップスであり、非常にドリーミーなサウンドとなってます。
サードアルバムSecret Life of Harpers Bizarreの方が代表作かもしれませんね。

彼等のメジャーデビューは1966年。サイモン&ガーファンクルの楽曲として著名な「59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy)」がデビュー曲ですが、S&Gとは違うソフトロック的アプローチで、マニアの間ではかなり評判になりました。そして翌年発表されたセカンドアルバムが本作です。

このアルバムでは完全にバンドサウンドからは逸脱し、オーケストラをバックに繊細なヴォーカルとハーモニーを持ち味とするものに替わってます。この時点でのハーパーズのメンバーは5人ですが、個人的にはハーパーズとはバーバンク(彼等のレコード会社、ワーナーの所在地)サウンドの実験的な場、つまりメンバーのテッドとディック・スコパートーン、プロデューサーのレニー・ワロンカー、アレンジャーのペリー・ボトキン・Jrニック・デ・カロ等のアイデアを具現化するためのバンドと言ってしまっては言いすぎでしょうか?

そもそも①「(Intro) This Is Only the Beginning」からして30、40年代のラジオから流れてくるナレーションで、このアルバムが只者ではなく、何かが始まることを連想させます。
そして案の定、コール・ポーター作の②「Anything Goes」は決してバンドサウンドのようなものではなく、ディキシースタイルをベースとした40年代の音といった感じです。ハーパーズらしい線の細いヴォーカルがのどかな感じを醸し出します。
アップした映像、TVショーからのものですが、若かりし頃のテッド(フロントのブロンドマン)、愛らしい(笑)。

④「The Biggest Night of Her Life」は当時は無名だったランディ・ニューマンの作品。アレンジはニック・デカロ。これも管弦楽器をうまく使ったアレンジが光ります。

1961年の映画「ポケット一杯の幸福」の主題歌である⑤「Pocketful of Miracles」、タイトルがいいですね。また楽曲もこのタイトル通り、非常にドリーミーなポップスとなってます。ハーパーズのオリジナルではないものの、彼等の最良の部分が引き出された楽曲だと思います。

⑦「Chattanooga Choo Choo」はグレンミラー・オーケストラのヴァージョンが有名ですね。アルバムジャケットにはこの楽曲のタイトルが表記されているので、この曲、シングルカットされたのでしょうか?
確かに軽快なポップスで、機関車を思わせるアレンジ等、素敵な魅力が詰まった1曲です。
アップした音源はどうもシングル仕様のようですね。アコギがかなり目立って聴こえますが、アルバムヴァージョンではあまりギター音は聴こえません。

このアルバムには2曲、メンバーのペンによるオリジナル曲が収録されてます。その内の1曲が⑧「Hey, You in the Crowd」。テッドとディックの共作。
このバンド(?)がカバーバンドでないことは、この曲を聴いてもらえれば分かると思います。優れたソフトロック的作品です。
そしてもうひとつのオリジナル曲、⑪「Virginia City」はバンジョーが高らかに鳴り響くカントリーソング。カントリーというよりブルーグラスでしょうか。こんな曲までやってしまうハーパーズ、奥が深いです。

ちょっとエキゾチックな旋律を持つ⑬「You Need a Change」は当時無名だったデヴィッド・ブルーの作品。後にデヴィッド・ブルーはアサイラムレーベルからデビューすることになります。

エンディングはヴァン・ダイン・パークスのドリーミーな作品、⑭「High Coin」。優しいコーラスが美しい1曲。

ハーパーズは計4枚のアルバムを発表してますが、本作とサードアルバムがコンセプトアルバムで、完成度の高い出来となってます。両アルバムともバーバンク・サウンドの極みですね。

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