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Donald Byrd「Street Lady」(1973)

3連休最終日、まったりしたい方のために、今回は洒落たジャズをご紹介します。ジャズは聴かないんだよね~って方でも、とっつきやすい1枚だと思います(これをジャズと呼ぶにはどうかと思うのですが)。

ドナルド・バード…。ハード・バップと呼ばれるジャズの巨匠ですが、70年代のドナルド・バードはかなりクロスオーバー・ミュージックをやってます。特に今回ご紹介する作品の前に発表した「Black Byrd」は、フュージョンの先駆けと呼ばれている作品。そして、その次に発表されたのが本作であって、ファンク・ジャズ、レア・グルーヴの名盤と思います。

いや~、ジャケからしてかなり怪しい(笑)。70年代ブラック・ミュージック特有の芳醇な香りがします。プロデュースはラリー・マイゼル。ラリーはエンジニア系の方で、その兄フォンスは、モータウン所属のライターグループ「The Corporation」の一員として、ジャクソン5をブレイクさせた方。
そのマイゼル兄弟が立ち上げたプロダクションがSky High Productionsで、ソウルフィーリングをベースに豪華なオーケストラを載せたり、コーラスを入れたりするサウンドは、クロスオーバーミュージックって呼ばれる先駆けとなりました。

スカイ・ハイの演奏メンバーはだいたい固定化されてまして、ドラムがハーヴィー・メイソン、ベースがチャック・レイニー、ギターはデヴィッド・T・ウォーカー。こんな豪華なメンバーで素敵なサウンドを奏でるんです。
ちなみにドナルド・バードとマイゼル兄弟との関係ですが、ドナルドは1971年にコロンビア教育大学で博士号を取得した後、1973年にハワード大学で音楽主任教授に就任。そしてフォンスはそのハワード大学で音楽の学位を取得しております。つまり師弟関係なんですね。弟子が先生の別の一面を引き出した…ということなんです。

本来は1曲目からご紹介すべきですが、まずはまったりした小春日和に聴きたい⑥「Woman of the World」からどうぞ。
恐らくゴリゴリのジャズを想像して聴くと、肩透かしを喰らうと思います。ここでのドナルドのトランペット、実に心地いい~。そしてバックのデヴィッド・Tのしなやかなギターワーク、ロジャー・グレンの爽やかなフルート、いいですね~。あ、決して上手いとは言えないけど味のあるマイゼル兄弟のコーラスもGOOD!

華麗なデヴィッド・T・ウォーカーのギターとオーケストラ、ハーヴィー・メイソンとチャック・レイニーのグルーヴィーなリズム隊、これらがスカイ・ハイの特徴ですので、このアルバムの主役はドナルド・バードというより、マイゼル兄弟…(苦笑)。

アルバム・トップの①「Lansana's Priestess」なんかは典型的なスカイ・ハイ・サウンドで、単純なメロディの繰り返しなんですが、各プレイヤーの演奏が素晴らしく、全く飽きさせません。チャック・レイニーのベースはカッチリしていて気持ちいいし、ジェリー・ピータースのピアノも素晴らしい。もちろん主役はドナルド・バードですが、それぞれのプレイヤーの名演が堪能出来ます。

タイトルトラックの④「Street Lady」はファンキージャズですね。ハードバップのドナルドの本領発揮といったところでしょうか。ただしリズム隊が実にソウルフルな演奏を聴かせてくれます。ソウルジャズっていうんでしょうか。マーヴィン・ゲイやダニ―・ハザウェイなんかが切り開いたニューソウルとクロスオーバーしますね。

どうでしょう。あまりジャズっていう感じがしないんじゃないでしょうか。まだフュージョンって言葉がない時代。時代の先を行くようなサウンド。今、聴いても色褪せない、カッコいいフュージョンだと思います。

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