無責任に人の死を面白がれるのが映画の良いところ

ザ・スーサイド・スクワットを見た。最初のスーサイドスクワットはマーゴット・ロビーのハーレイクイン以外見るところがない駄作と言われていて、確かに見ても何もわからなかったのだけどハーレイクインはかわいいなって感じだった。

有識者から「そっちはダメ!サメの出る方を見て下さい!」と言われて見てみたんだけど、こっちはなぜかとてもよかった。

キャラクターが与えられている、つまり主要キャラになりそうな登場人物が最初からすがすがしいくらい次々死んでいく。
もう始まってすぐ死ぬ。時短。
まぬけな感じで笑えるのと、彼らを使い捨て感覚な感じがとてもよく伝わってきて、スピーディーなゴア表現とポップな演出に音楽で、人間の命の軽さが見えて気分が軽くなる。
映画だからこその、他人の痛みに無責任になれる解放感みたいなのがある。

どうせ悪い事やってきたやつらなんだから死んでもしょうがないか、みたいなことを思わせる導入も見事だなと思うし、暴力表現に罪悪感を持たせない展開に作り手の優しさを感じる。
「楽しんでね!」みたいな。

さらに、信頼と友情、裏切り、社会への関わり方等、いろんな立場でいろいろ出てきて、仲間のようなそうでないような、友達という存在の心安らぐ感じとそれが通用しないサイコパスたちのスリリングさなどでヒューマンドラマに展開していくかに見えて、ゾンビ映画を経由しての怪獣映画に突入していくところも一粒で二度三度おいしい。

圧倒的な敵に向かって、全員が個人的な欲望や憎しみで戦いを挑んでいくところも良かった。「僕を苦しめたママ!」「うまうま」※見ればわかる
こういう時に正義を持ちだすのはやっぱり弱いんだよね、というリアリティがある。最もリアリティのない設定にリアリティが生まれた時、フィクションって動くよなーって。

しかし今回もハーレイクインはとてもよかった。
初登場の時のブルー&ピンクに対して、今回はレッド&ブラック。
「私悪い男に引っかかりやすいから、次に男が地雷踏んだなって思った時は迷わず撃つことにしたの」と言ってたシーンはとっても良かった。
「子供を殺すなんて、よくないよね」
そこはとっても常識的かつ倫理観強め。
成人武装者はきれいにミンチにしていくのに。
ジョーカーという男を通して自己実現しようとして道を踏み外した女という設定が、ちゃくちゃくと成長していくつよキャラになっていくのに面白いくらいリアリティを与えるマーゴット・ロビーすごい。

アメリカンなキャラに肉体を与えるのがうまいマーゴット・ロビーがバービー人形を実写化するというので、映画のバービーはちょっと楽しみにしていた。まだ観てない。

SNSで原爆イジリをしたまぬけっぷりは興ざめだけど、それよりフェミニズム映画でがっかりしたという感想ツイートが出てきて、ちょっとびっくりした。内容が「男を必要としない女(はキャラクターとして魅力がない・意訳)」みたいな文脈だったんだけど、それをツイートした有名漫画家さんは漫画家という立場で魅力的な女性キャラというのに執心があることを差し引いても、「自分に直接関係が生じることが100%ない映画の話であっても、男を必要としない女の存在は、自分の存在を否定されるような気がしちゃうってコト!?」とちいかわのようにびっくりしてしまった。

自分の存在を否定されるように思ったかどうかはわからないのだけど、とにかく嫌な感覚になったというのは伝わってくる感想だった。

男を必要としない女がいたとしても、それが自分の生活にまったく関わりのない人間なら何の問題もない気がしない?
知らない家で家庭内暴力がひどくてヤバい、というなら、そういう暴力をふるう人間ならどこかでエンカウントした時にそういう被害がこっちに来るのかもというのは想像するけれど、「必要としない」というだけではそこまでビビる必要はないように思うのだけど、男を必要としない女は魅力がないどころか脅威として映るのだろうか。

逆に「女を必要としない男」は、どうなの?

ちなみに、私が大好きな鬼平犯科帳は有害な男性性の結晶みたいな話なので、だからみんな好きなのかなとも思う。
剣客商売の主人公の設定も「超一流の剣客だが引退して周りは先生先生と慕ってくれて、10代のギャルと毎日いちゃいちゃして、妻は美しい思い出だけを残してすでに他界済み、息子は真面目で手がかからずトップアスリートとして成績を上げつつあり、なんやかんやで時の権力者と茶飲み友達でいっちょ噛みする癖に責任は負わなくてもいい立場」というおっさんの夢の具現化極まれりという感じです。

スーサイドスクワットが軽やかに人間を撃ち殺していくのと同じくらい、都合のいい設定。

バービーも見に行きたいんだけど、どのタイミングでいくかなって思っているところ。「君たちはどう生きるか」も見ておらん。

スーサイドスクワット(一作目)は、マーゴット・ロビーの可愛さを見るためならぜひ見るといい。ストーリーはよくわからん。
ザ・スーサイド・スクワット(二作目、サメのいるほう)は、軽やかな暴力行為とポップなゴア表現がさわやか。
人質を取って脅すシーンで「少しでも違う事をしたら殺す」「逃げようとしたら殺す」等次々要求を突き付ける時に、ハーレイクインだけが「そうよ、黒の着こなしを間違えたら殺す」とか言ってて、吹き替えで見ちゃったけど字幕で見ればよかったなって思った。なんて言ってたのかな。
拷問を受けたのに割と平気、すごいラブな感じだったのに地雷踏んだら即××。重いブーツを最初に履いて、足元を固めてから銃を乱射していくところとかとてもキュート。

なのでバービー人形に肉体を与えた時にどうなるのか、とってもみたいなという気持ちです。

つよく生きていきたい。