第11話 沼の底
ルルカールはこう思う。
「目や耳に代表される感覚器官は外部と通じている。けれど、見ているもの・聞いているもの全てを把握することはできない。これには焦点という考え方があるからだ。」
「物理の偉大な実験から言えば、見ていないものは存在しないらしい。」
「さておき、結論としてはどこを焦点(目標の点)とするかによって、私たち生物全体としての動き方は変わると思う。」
「それはこと『時間』も外部の一つであるから。」
「少し先の将来を見ている者もいれば、若くしても死に際を見ている者もいる。」
「人間の世界では『産』という言葉は『生活に必要なもの』という意味を表すようです。
人間にとってお金は生活に必要だから『財産』」
「私に人間でいう『産』の考え方を当てはめれば、その日の食料か冬眠前の栄養補給としてひと季節先ほどを見越して貯める食べものなのです。」
「人間には必要なものが多いな。」
暗くて静かでいろんな思考がいつもより早足で活発な、そんな沼の底。
それがルルカールの一つ目の旅先だった。
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