場当たりは場当たり的ではない

めちゃくちゃ久しぶりにnoteを書きます。
もうすぐ私の生業である舞台が本番を迎えます。今日は「場当たり」という作業に一日かけます。日常では場当たりという言葉よりも場当たり的という言葉のほうが使われます。
場当たり的の元になっている「場当たり」は舞台用語、いわば業界用語なので使用頻度が逆転しちゃってるんですね。

日常でよく使われる場当たり的、の意味は以下のようなものです。

場当たり的(ばあたりてき)
ーー物事に直面したとき、そのときの思いつきで対応すること。 事前に準備したり計画を立てたりしていないこと。
※出典 weblio辞書

この場当たり的、という言葉がなぜこんな意味になったのかとても不思議なのですが、本来の舞台用語「場当たり」ほど綿密に準備されているものはない、といっても過言ではありません。

そもそも場当たりとは、舞台芸術(演劇、ミュージカルなど)で稽古場での稽古を全て終えて、劇場に入り、大道具などの舞台セット、照明や音響のセッティングを終えた上で、音楽や照明のきっかけ、役者の着替えや出ハケを実際の劇場で本番と全く同じ条件でやって問題が生じないかチェックしていく作業です。いわゆる「きっかけ稽古」というものです。

この場当たりは概ね本番のお芝居の長さの約3倍ほどの時間をかけて行います。(2時間のお芝居なら6時間)
この場当たりをどう進めるのかスケジュールの段階から考え、場当たり当日も進行係をするのが「舞台監督」という職業です。

今回私が出演する舞台の舞台監督は劇団の同期なのですが、彼がよく職業に関して勘違いされる、と言っていました。
監督、とついているので映画監督の舞台バージョンだと思われるらしく「今度俺も舞台出してよー」などと言われる、と困っていました。

彼の困惑はもっともで、舞台監督には舞台のキャスティング権はありません。
舞台監督の仕事を一言で説明するのは難しいのですが、演出家が外からお芝居を見てどこをどうするか調整するのが仕事だとすれば、舞台監督は舞台の中のことを取り仕切ります。

演出家や役者が「あんなこと、こんなことやってみたい」と言ったことに対して舞台監督はそれを技術的に可能にしたり、難しければ代案を出したり、安全性を考慮したり、各セクションとの調整を図ったり、そんなお仕事と思ってもらえれば間違ってはいないと思います。

さて話を元に戻しますが、そんな舞台監督が進行する場当たり、ぶっちゃけ数分刻みのスケジュールで決められています。
エラー、修正が発生しやすい箇所はあらかじめ時間を多くとる、など何パターンものシミュレーションを経た上で場当たり当日を迎えるので、

場当たりは全くもって場当たり的ではない

ということが分かって頂ければと思います。

場当たりが無事終了すればそのあとはゲネ(本場と同じ条件でやる本番前最後の稽古)を経て無事初日を迎えます。

私が出演する舞台、黄色い封筒は舞台装置を見て頂ければ舞台監督の苦労が見て取れると思います(笑)

是非観に来てくれたら嬉しいです。

【黄色い封筒】

作=イ・ヤング(李羊九)
翻訳・ドラマトゥルク=石川樹里
演出=須藤黄英
日程:2023年7月5日(水)~7月10日(月)
会場:吉祥寺シアター

ビョンノ=久留飛雄己
ジホ=小豆畑雅一
アジン=世奈
ヨンヒ=小林さやか
ガンホ=賀久泰嗣
スビン=酒井美来
イ・ゴ=綱島郷太郎


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