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2017 CL Final ユベントス VS レアル・マドリード Preview

CLの熱狂というものは、人を普段とは違う行動に導くのかもしれません。プレビューは得意としている訳ではありませんし、リーグ戦のレアル・マドリードは2016/2017シーズンの観戦回数が少ないのですが、簡易的なプレビューを書いてみました。

ドイツのフットボール戦術サイト、Spielverlagerung.comは本職の指揮官も認めるほどの「若者たち」が集まった「戦術議論を生む場所」として注目を浴びています。(月刊フットボリスタ 2016年の記事でも紹介しました)

そんなWEBサイトが「サイトを代表するフットボールアナリスト」Adin Osmanbašićを含む数人のメンバーで、CL決勝について議論を重ねておりましたので、それを参考にしながら今回はプレビューを書いていきます。

●レアル・マドリード

ロナウドは、ベンゼマの背後でセカンドストライカーとしてプレーしながら、基本的には全体が守備時を意識したポジションを取ります。トランジション・フットボールにおいて、「守備」の意識を捨てないのがレアル・マドリードの特徴です。

カゼミーロの起用によって「中盤のバランス」を改善したジネディーヌ・ジダンは、カルロ・アンチェロッティの血脈を継ぐ現実主義者。クロード・マケレレと同じチームでプレーしていたことも影響しているかもしれませんが、中盤の守備意識を重要視するのが彼の特徴と言えるでしょう。

Spielverlagerung.comの識者達は、「サイドバックとボランチ間の循環によって安全にボールを進め、モドリッチとクロースの質的優位によってボールを前へ運んでいく」と表現しています。リスクを避けながら相手のプレッシャーをサイドへと誘い込み、ロナウドとベンゼマによって中央を攻略。

「サイドでのボール循環を完璧にこなせるチーム」は、前線の圧倒的な個人能力を武器にする為に「相手を誘い込む」戦術を選んでいます。

鍵になるのは、イスコの起用。レアルが起用した天才肌のMFは、CL準決勝ではアトレティコ・マドリードが誇るゾーンディフェンスを苦しめました。特筆すべきは、静止するスキル。相手の背後に入り込み、静止することでパスコースを生み出し、モドリッチとクロースをサポートします。

ハーフスペースへの侵入、サイドでの数的有利を生み出す、ボール循環のサポートを得意とする彼の起用は、ユベントスの中盤が仕掛けるプレッシングを警戒してのものであると同時に、中央の枚数を増やすことで支配率を高めるものになるでしょう。ジダンの切り札は、堅守を誇るチームを苦しめることが出来るでしょうか。

ラファエル・ヴァランは「冷静にプレーすること。それだけが、我々がするべきことだ」とコメントしていますが、それこそが彼らのスタイルになりつつあるのかもしれません。

●ユベントス

マンジュキッチのロングボールを使ったプレス回避、中盤で躍動しながらキラーパスを送り込むピアニッチ、状況を見て試合をコントロールするケディラ。中盤のセントラル2枚が「攻撃的」なプレーをこなすことを躊躇しないユベントスFCは、戦術家アッレグリによって数年で大きく変貌したチームでもあります。

バルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニによって構成される守備組織「BBC」の背後にジャンルイジ・ブッフォンが控える守備陣は、熟成されたワインのように相手の攻撃を封じ込めることが可能ですが、4バックの採用によってバルザーリは右サイドへ。

ダニ・アウベスが下がって守れば、バルザーリが右CBになることも出来る「可変4バック」は「相手の攻撃に合わせて、組織を変更する」という1つの理想形を体現。単純に守備だけを見ても、彼らの柔軟性は数年前とは一変しています。アッレグリの「バルザーリをSBにしたのではなく、少し右に動いてもらっただけ」というコメントは、彼らの「フォーメーションに対する理解」が現代的なものであることを象徴しています。

攻撃面で、核となるのは右サイド。ダニ・アウベスはハーフスペースへの侵入に加えて、ファーサイドのマンジュキッチへのクロス配球を担当。更に、「メッシの盟友」だった男が得意とするのはコンビネーションプレー。アルゼンチンの至宝としてリオネル・メッシの次世代を担うであろうパウロ・ディバラは右サイドのハーフスペースへの侵入からのシュートを得意としており、そのスペースはレアル・マドリードにとっても「泣き所」になりかねません。

速攻になれば、元レアル・マドリードのゴンサロ・イグアインがDFラインの背後を狙うことになるでしょう。Spielverlagerung.comの議論では「現在、世界で最も完璧なチーム」と絶賛されたイタリアの貴婦人は、戴冠へと邁進します。

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