本来の場所とかなたの岸
グノーシス主義は霊肉二元論で、物質世界を否定し、あるべき居場所へ帰ろうとします。ニーチェは苦悩も罪も悪も全てを肯定し、この肉体、この大地、この世界を愛します。
グノーシス主義はデミウルゴスに悪の起源を背負わせているだけで、物質よりも霊、此岸よりも彼岸を愛するという思考回路はキリスト教と変わりません。そのためニーチェからしてみればキリスト教同様にグノーシス主義も絶滅させるべき対象です。
しかし、グノーシス主義とニーチェには共通する部分もあります。グノーシス主義は「本来の場所」を目指していますが、ニーチェも「かなたの岸」を目指しています。
その目指す目的地は真逆の方向ではありますが、目指すべき場所があるところは共通しています。
人間即神也と超人思想
またグノーシス主義の人間即神也という思想とニーチェの超人思想も親和性があります。
ニーチェは神を殺害しましたが、超人思想によって新しい神(超人)を生みました。その神は「汝なすべし」と天から命令する超越者ではなく、肉体と大地を愛し、善悪の彼岸にいる無邪気な踊る神(超人)です。
新しい神話の創造
グノーシス主義とニーチェ哲学は水と油のような関係ですが、共通する部分や親和性のある部分であれば無理矢理ですが融合させることはできます。そして覚醒の道具として利用することができます。
古今東西の宗教や思想は覚醒の道具として存在するのです。宗教を信じたりただの研究者になってはいけません。覚りを開き、新しい神話、物語、世界観を生み出すのです。それが人生の目的です。