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ニーチェ「ツァラトゥストラと森の聖者」

ツァラトゥストラも森の聖者と同じように、歌を歌い、笑い、泣き、呟きますが、森の聖者と決定的に違うところがあります。それは、森の聖者は神を讃美していましたが、ツァラトゥストラは神を否定しました。森の聖者は神に依存していましたが、ツァラトゥストラは完全に自立していました。同じ孤独な人生でも、依存している人と自立している人の思考や行動は全く異なる方向に発展していきます。
ツァラトゥストラは依存的な人間を嫌悪していたので、すぐにその場を立ち去りました。

では、聖者は森の中で何をしているのですか」とツァラトゥストラは尋ねた。  
聖者は答えた。「私は、歌を作っては歌う。歌を作るとき、私は笑い、泣き、呟く。そんなふうにして、私は神を讃えるのだ。歌い、泣き、笑い、呟くことで、私は神を讃える。私の神を、だ。それにしても、あなたはわれわれにどんな贈り物をしてくれるのかね」。
森一郎訳「ツァラトゥストラの序説」

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