『氷焔3』
通り過ぎる匂いに、不意に心が立ち止まる。何の匂いだったか咄嗟にはわからないのに、自分がその匂いを知っている事、だけは憶えているのだ。
纏う人の全て──不思議なことに、直接的、つまりは物理的なもの──ばかりが薄れ、触れることなど叶わない匂いの方が己に刻み込まれている。

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