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わたしが旅にでる理由

小沢健二さんの「ぼくらが旅にでる理由」という歌がある。わたしが旅に出る理由は、まさにこの歌の中にある。というか、そのものであるような、そんな歌である。と、書いてしまうと、この文章はこれで終わりになってしまってずいぶん野暮な自己紹介になってしまうので、今日はまず最初の記事として、わたしがなぜ旅を愛しているのか、旅にでるのか、ということを書いておこうと思う。自分への備忘録でもある。

旅というものを意識するようになったきっかけは、高校生の頃、修学旅行で沖縄へ訪れたときの民泊体験にある。あの日、わたしは、はじめましてのおうちにお世話になった。お父さんとお母さん。ふたり暮らしにしては広くて、1階にはお母さんが営む美容室がある戸建てのおうち。お父さんとお母さんは、初めての修学旅行生の受け入れだったらしく、緊張していた。スケジュールを念入りに組んで、わたしたちを迎えてくれた。なんて呼んでほしいか、と聞くので、わたしはすぐに下の名前で、とお願いした。”ユーリ”と優しく呼んでくれたふたりの顔を時々ふと思い出す。行った場所、食べたもの、話したこと、そのひとつ、ひとつ、の出来事をわたしは今でも鮮明に覚えている。なにより、あの晩の布団の温かさが、ずっとわたしを包み込んでいる。あれがきっと、わたしの旅のはじまりだ。

日が沈んでいく穏やかな海。大皿に盛られたゴーヤチャンプルー。夜な夜なつくったムーチー。お父さんがたくさん写真を撮ってくれた中城公園。三線を弾いてくれたこと。揚げたてをほおばったサーターアンダギー。お礼にいきものがかりの「ありがとう」をみんなで歌ったこと。初めてかじったサトウキビ。パパイヤのはいった人参しりしり。畳の部屋でみんなで寝たこと。数えきれないほどの記憶が脳裏によみがえる。

お別れの時にはわたしたちはみんな泣いていた。ただの一晩で、こんなにも誰かの想いを受け取ることは初めての体験だったし、ただの一晩で、こんなにも土地や人を愛したのは初めての気持ちだった。

そのときにわたしは、初めて「旅っていいな。」と思った。小さい頃から家族旅行には毎年出かけていたけれど、そのときにはない感覚だった。家族と過ごす時間は安心感があってホッとするけれど、この旅にはもっとドキドキするものがあったように思う。

高校2年生の、まだ未来の自分なんて想像もできなかったあの頃から、わたしは「旅」をし続ける人生にしよう、と心のどこかで決めていたような気がする。旅をして、たくさんの人に出会おう。たくさんの気持ちを知ろう。あの民泊の夜のような、あったかい気持ちを何度も味わいたい。あれからずっとそう思って、わたしは旅をしている。

これが、わたしが旅にでる理由。旅を続ける理由。そして、星野リゾートで働いている理由なのだと思う。この世界から、旅がなくならないであろうことは、もうずっと前からなんとなく分かっていたような気がする。

旅をすると、自分の中に”好き”という気持ちが積もっていく。土地、食べ物、人。好きだと思うたびに、自分の人生をまだまだ愛せる気がした。わたしにとって、旅をすることは勇気を得るための最高の手段なのだ。

これからは、旅のことを中心に、自分の好きなこと、暮らし、感じることをありのままに綴っていきたい。旅と同じくらい、言葉も好きだから。散文が多いかもしれないけれど、読んでもらえたらとても嬉しい。

それから、せっかく働いているので、私の考える星野リゾート施設の楽しみ方とか、体験記とか、働いている側の視点で、そういうことも発信していきたい。自分の仕事や、好きな施設はまた次回!


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