父からの挑戦状 file1「2023年開成中学入試問題 大問5」
中学受験を経験し、70以上の偏差値も取ったことがある私には、定期的に父からネットや動画で見かけた数多ある問題を挑戦状と称して投げつけられる。
今日もまた、家庭教師から帰宅した私に父から挑戦状が投げられた。
父「今年の開成中学の入試問題で算数の大問5の(4)が難しかったらしいから解いてみろ〜」
話を聞くと、どうやら件の問題を出来るかできないかで合否が分かれたらしい。
そんなに難しい問題ならば俄然やる気が出るというもの、私は意気揚々とPCとにらめっこをすることにしたのだ。
私の最初の印象は、ぱっと見普通の受験問題に見えたということだ。こんな問題が難しいのだろうか?と首を傾げながら問題を説いていった。
結果、私はものの数分で解き終わり、大問5で埋めるべき(ア)〜(キ)の全問をノーミスで解くことができた。
正直この程度の問題すらできない受験生がいるのかと呆れてしまったが、この問題を解いている中で気付いたこともいくつかあった。
ここからは、問題を解説したのち、どうして大問5の(4)で合否が分かれるに至ったのかを考察していこうと思う。
大問5の解説
(1)の解説
(1)の問題は、1の位、10の位でそれぞれどの組み合わせがあるのかが説明文に記載されている。あとはそのまま計算をするだけ答えが出る。
5×6=30
(ア)の答えは30になる。
(2)の解説
(2)の問題は、(1)が理解できたことを前提として解けるように作られている。
先ほど足すと96になる組み合わせが30通りある、ということが分かったと思うが、それは位が一つ上に上がっても変わらないということに気付けるかが(イ)を正答するポイントになる。
そこから、1の位の計算が11になる組み合わせの4通りと掛け合わせることで971になる数字の組み合わせが何通りかが分かり(ウ)の正答を導き出せる。
30×4=120
よって答えは(イ)30 (ウ)120 となる。
(3)の解説
(3)の問題はこれまでの問題の答えを参考に解答を導き出していくことになる。
1の位を足した数の組み合わせが2と12の2つのパターンがあり、それぞれで10の位より上の数字の組み合わせが変わっていく。
・12のパターンの場合、AとBの1の位の数字の組み合わせは表を見ると3通りあることが分かる。残りの数は960であり、AとBの組み合わせは(2)の問題を解いたことで30通りあることが分かっている。それにより
3×30=90
このパターンでは90通りあることがわかる。
よって答えは(エ)90 となる。
・2のパターンの場合、AとBの1の位の数字はそれぞれ1の組み合わせしかないため、残りの数字970の組み合わせを考えればそのままその数がこのパターンの組み合わせの総数となる。
まず10の位が7になる組み合わせは
1と6
2と5
3と4
4と3
5と2
6と1
の6通りとなることが分かる。
さらに100の位が9になる組み合わせは
2と7
3と6
4と5
5と4
6と3
7と2
の6通りになる。
つまり970になる組み合わせは
6×6=36
となり、足して972になる組み合わせは36通りとなる。
よって答えは(オ)36 となる。
最終的な合計は
90+36=126
となるため、すべてのパターンの合計は126通りとなる。
よって答えは(カ)126 となる。
多分ここまでは時間をかければ誰でも簡単にわかる問題だと思う。
この後の問題が合否を分ける問題なわけだが、まずは解答の解説からしていこうと思う。
(4)の解説
(4)は、いままでの問題をしっかり理解していれば自ずと答えが出るように作られている。
まず、足すと9723になる組み合わせを考えていく。
1の位は繰り上がりがあるパターンの13、繰り上がりがないパターンの3という2つの組み合わせが存在する。
・1の位が3の場合
10の位は繰り上がりのある12,繰り上がりのない2の2つのパターンがある。
さらにそこから、12の場合は100、1000の位が96。2の場合は97という風に組み合わせが分かる。
よってこのパターンでは
1の位 3 10の位 12 残りの位 96 ・・・①
と
1の位 3 10の位 2 残りの位 97 ・・・②
という2つのパターンが存在する。
・1の位が13の場合
この場合、10の位は1と11の2つのパターンがある。だが、ここで思い出してほしいのは8,9,0を使う数字はA、Bには該当しないということだ。
よって1と0、0と1の組み合わせになる1は除外され、11のみを考えることになる。
10の位が11の場合、残りの位の数字は96になるため、最終的な組み合わせは
1の位 3 10の位 11 残りの位 96 ・・・③
というパターンになる。
あとはそれぞれのパターンの組み合わせがいくつあるかを確認し、全てかけていけばそれぞれ何通りあるのかを計算することができる。
①のパターン
2×3×30=180
②のパターン
2×1×36=72
③のパターン
2×4×30=240
これらの合計が、(4)の解答となる。
180+72+240=492
492通りとなるため、答えは(カ)492 となる。
なぜこの問題が合否を分けると言われたのか
これらを解いた際、私はこの問題の性質をしっかり把握していれば間違いなく解けるはずという印象を受けた。
だが実際はこの問題が合否を分けるとまで言われている。
それはなぜか。
私はそれを点数的な要因、学校の求める生徒像による要因のふたつの原因があると考えている。
①点数的な要因
まず点数的な要因だが、これはこの大問5の問題の前提として、「8,9,0を使う数字はAとBに該当しない」という条件にあると考えた。
この問題は、問題文を正しく理解し、表から必要な情報を抜き出すことさえできていれば(1)から(3)まではつつがなく解答を勧めることができる。
しかしだからこそ、すべて一人でやらなければならない(4)では、そもそもの条件である「8,9,0を使う数字はAとBに該当しない」というルールを忘れがちなのではないだろうか。
実際、私もそれを失念していたため、(4)で1の位が13だった場合に10の位が1のパターンだと残りの組み合わせはどうなるかまで考えてしまっていた。
勿論私は途中でその事実に気付き、このパターンを考える必要はないという結論を出して計算を勧めたのだが、本来これは受験で解く問題。受験という緊張が極限状態になっている環境で、問題をちゃんと読みなおし、そこからこのパターンは必要ではないという冷静な判断をできるだろうかというところが、この問題の肝なのだと私は思っている。
また、この問題の性質は、ちゃんとすべてを理解していれば最終的に少し頭を使う問題でも問題なく解けるという性質になっている。
つまり、前の問題で何かしらのミスをしていた場合、その後の問題はすべて芋づる式に間違えていくということだ。計算ミスをしていたら全てがくるってしまうだろう。
さらに言えば、今までの問題が最後の(4)を解くカギになっていることに気付けなければ、どう解けばいいかわからずあたふたとすることだろう。
問題同士の関係性に気付けるかどうかもまた、合否を分ける点になっていたと私は考える。
②学校の求める生徒像による要因
今までは点数的な要因だったが、私はこの問題の性質から学校の求める生徒像が垣間見えると考えている。
先ほども述べたように、この問題は前の問題を理解していれば必ず解けるという性質を持っている。つまり、公式や解答の丸暗記など必要ない問題だということだ。
解き方は問題の中に書かれており、その関係性を理解さえできれば誰でも解くことができる。逆に言えば、ただ公式を丸ごと覚えてきただけでその成り立ちを理解していない生徒は、この問題で使われている解き方の法則を見つけづらいのではないだろうか。
そこから、学校側は自ら考え、答えを導けるような生徒を求めていたのではないかと考えている。
自分で考え、今までの問題から一番解きやすい方法を導き出して計算する。これからは、そういった点と点をつなげる想像力と連想力が必要になってくるのではないだろうか。
解いてみた感想
わかってしまえば簡単な問題ではあったが、芋づる式の問題は、一つのミスが命取りになる。そういった点ではとてもスリルがあって面白い問題だったと思う。
(4)では、いかに早く、間違いにくい解き方を自ら導き出すかといった思考力が問われる点も、この問題を楽しめる一つになっていた。
こういった問題を試験であっても楽しく解けるような生徒は、開成でも楽しく勉学に励んでいってほしいと思う。
まあ何はともあれ、父からの挑戦状は果たされたのでこれからのんびりしたいと思う。
もしほかの学校の過去問も解説してほしい、という要望があったら解説をするかもしれないので気軽にコメントしてほしい。
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