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Numberのインタビュー記事にて水戸ホーリーホックGMのコメントを読んで感じた違和感

今回はサッカーをテーマにします。

タイトル通りで、先日Numberにて水戸ホーリーホックの西村GMのインタビュー記事を読んだのですが、いくつか個人的に違和感を感じたのでまとめてみます。

①Jクラブの地域貢献活動がいわば"押し付け"になっていないか

これは水戸に限らず多くのクラブにも言えるのですが、Jリーグは地域密着・地域貢献を長い間テーマとして活動していますが、それが現状クラブ側からの"押し付け"になっていないか?という疑問点です。

この記事の中でサッカークラブ(ホーリーホック)を交流拠点として様々なサービスであったりノウハウを提供していくことの重要性を挙げていますが、そもそも本当に地域社会の中Jクラブが多くの人間に求められているか、という疑問や現状を感じずにはいられないのです。

今回はホーリーホックですが、こういったサッカー外の取り組みや地域貢献活動を積極的に行うのはJ2の地方クラブが中心に多く見られるのですが、そういったクラブの観客動員であったり、情報発信力やマンパワーといった点を見ても地域社会の中でいわばアイコン的存在にはなれていない現実をJリーグの各関係者は認識していないのではないでしょうか。

特にJ2やJ3のクラブは地域貢献を積極的に活動した実績であったり、Jリーグのポテンシャルの大きさをPRした上で行政への支援を要請するケースが過去から現在に至るまで定着していますが、水戸も含め小さな地方クラブがそのサポートに見合うような成果・結果を出しているようなクラブは皆無という実情もあります。

かつて地方クラブのロールモデルとして挙げられた新潟にしても観客動員数の右肩下がりは止まらなかったですし、J1に定着しながらも守備的なサッカーを貫いた結果観客動員がいまいち伸びなかった甲府にしてもマンネリ感は否めなかったです。

またJ2の平均観客動員が7000人超えしたというニュースは主にJリーグのサポーターからポジティブなニュースであるという声も大きく聞かれましたが、ホーム試合の開催数が少ないという性質をもつサッカーという競技でこの数字はそこまでの評価度を持てるのか、という疑念を感じました。

「月に2~3試合しか開催されず7000人程度しか集まらないコンテンツを地域のアピール材料にするには物足りない」という疑念

が否めないのです。

②サッカー選手といっても皆が皆同じ目標は持っていないし、誰もが成功したキャリアは掴めないという現実

西村氏は記事の中でアマチュアクラブのBONDS市原時代に経験した出来事からフィードバックを得て、水戸で更に活かそうという取り組みをしています。選手の研修活動やクラブスタッフを介した対話・ミーティングも個人的には面白い取り組みではあります。

しかし、サッカー選手皆が皆成功したキャリアは掴めないし、選手一人一人の中でも持っている目標や将来的なキャリア設計・ビジョンはバラバラであるという点がどうにも理解できてないという疑問を感じました。これは西村氏に限らず多くのJクラブや日本のサッカー関係者にも言えることです。

例えば昨年大分から神戸へと移籍した藤本憲明(私は彼が佐川印刷にいた時のプレーを現地で何度も見ました)が4カテゴリー(JFL→J3→J2→J1)を経験してのステップアップという稀有例として大きく取り上げられましたが、このようなケースは例外中の例外で、まず起きることはないです。

VONDS市原にしても、水戸にしても、そのクラブからステップアップして成功していくのはほんの一握りですし、そういうほんの一握りしかない成功したキャリアを誰もが掴めないです。また選手の中では極論ですが「サッカーだけやってればいい」「自分を極限状態にまで追い込んで上を目指すまでの意識は持っていない」というような意識のズレもクラブに約30人程度いる選手の中でもバラバラに分かれていると思います。

中にはこういった対話や記事の最後に出てくるMake Value Projectといった取り組みに関して押し付けがましく感じたりする選手もいるのではないか、という疑念もあります。水戸というクラブの立ち位置を考えても、2~3年程度しか在籍しない選手が多い中でこのような取り組みに対して意義を持てるのか?という疑念です。

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(様々なカテゴリーを経てトップリーグにたどり着いた藤本憲明だが彼のようなケースは例外中の例外だ)

③サッカーやJリーグの情報発信力や人気度を過大評価しすぎている

特に水戸は同じ茨城県内にある鹿島アントラーズや茨城ロボッツなどとの対比・比較をされがちですが、クラブとしての立ち位置はあくまで"J2の中堅でレンタル移籍や若手選手のステップアップとなる踏み台的クラブ"といった認識を特にホーリーホックの関係者は現実的にもっと捉えるべきだと思います。

2008年に平均観客動員数が3000人だった水戸も2019年にはその倍となる6000人超えを達成していますが、10年以上という長い年月を費やしても倍以上までしか増やせていないという結果が全てを物語っています。

10年間もあればサッカーだけでなく世間の流れや社会の変化も大きく起きますし、月に2~3試合しかホーム開催できないサッカーの興行の仕組み上を見ても、6000人程度の平均観客動員で地域貢献やクラブからの発信力・ポテンシャルやクラブが持つ可能性などを訴えるのは動機付けとしてはあまりにも乏しすぎます。

また茨城は県域民間放送局がない日本唯一の県で、その中で情報発信力やクラブのPR活動をしてもなかなか伝わらないという現実・問題点もあります。ましてやサッカー自体に興味を持っていない県民も多いのではないでしょううか。

④サッカー選手の"寿命の短さ"と水戸というクラブの立ち位置

西村GMはチーム強化をする上でクラブの底上げを重要視していますが、J2の地方クラブから"個人昇格"する例として多く見られるのが、「2~3年程度J2でプレーした上で上のカテゴリーへとステップアップ」というケースです。

いわば水戸もこういった例の"踏み台"的立ち位置をであるのですが、サッカー選手という限られた選手寿命の中で上のカテゴリーを目指すのは当然ですし、そういったクラブから声がかかればまず移籍するでしょう。

またJリーグは極めて国内での移籍金が低く抑えらているリーグでもあり、なかなか「売って育てる」というような図式が成立していない現状もあります。

そういった形態を持つJリーグの中でそこからクラブとしての価値を上げ、悲願のJ1昇格→J1定着といった流れを持つのは極めて不可能であるという点が西村GM含めて認識として抜けているのではないでしょう。

特にJリーグのサポーターや関係者は地方クラブからのステップアップを夢物語として絵に描こうとしますが、その為には

既存のJ1クラブの立ち位置を奪わなければならない

J2よりも遥かに予算規模で恵まれたJ1クラブも毎年成長している

といった認識や現実問題が全くと行って理解できておらず、どのチームも揃って成長・進化できるという盲信を抱え込んでいるという点です。



結論・まとめ

つまり私が言いたいのは、もっとJ2の地方クラブは現実的な立ち位置を認識した上でのクラブ戦略を採っていくべきということです。

昇降格のあるピラミッド式のサッカーのシステムにおいて、上を目指すのは極めて困難だという現実を踏まえた上で、ならばその地方クラブの立ち位置を理解し身の丈にあった堅実な経営戦略であったり、クラブ運営が大事になるということですね。

水戸では昨年も長らく職員の残業代未払いというスキャンダルが発生しましたが、クラブスタッフやサポーター、スポンサー、ボランティアといった支援者にとって応援のし甲斐があるクラブを目指していくことが重要視されるべきではないかとも感じます。

身の丈に合わないような風呂敷を広げるよりも、既存の立ち位置を受け止めながら、魅力的なチーム作りをした上で、J2というリーグの価値向上の形成の一端を担うようなクラブ・・・

そういった目標を地方のスモールクラブに対して私は求めたいです。



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